【潜入レポート】ダイドー東京ロボット館、国内最大級 40台のロボット設置

有力企業によるロボットショウルーム&テスト施設

メカトロニクス専門商社のダイドー(名古屋市中村区)は、産業用ロボットの年間販売台数で国内トップクラスの実績を誇る。産業用ロボット需要が高まるなか、今年6月に東京都江東区にロボット展示場と実験施設、教育施設を兼ねた「ダイドー東京ロボット館」をオープン。

開館から3カ月で来場者が1000人を超え、順調なスタートを切った。同館内部の様子と同社の取り組みについてレポートする。

 

都営新宿線瑞江駅から徒歩1分の好アクセス

ダイドー東京ロボット館(東京都江戸川区瑞江4-44-17)の最寄り駅は、都営新宿線瑞江駅。瑞江駅からは徒歩1分。駅前のドンキホーテの向かいに位置する絶好のロケーション。「産業界のコンダクター ダイドーロボット館」の大看板が目印となって来場者を出迎える。最寄り駅からもほぼ目の前というアクセスの良さが特長だ。

名古屋のダイドーロボット館も名古屋駅から徒歩7分の場所にあり、下浦徹也ロボット館副館長は「ロボット館のコンセプトは駅に近いこと。お客さまのために利便性を重要視している」という。

 

1・2階は実験工場。毎日行うデモやテスト、検証

ダイドー東京ロボット館の敷地面積は900㎡で、建屋は地上3階建ての床面積1560㎡。建物や設備の投資額は総額50億円。構内にはファナックや三菱電機、デンソーウェーブ、ヤマハ発動機、セイコーエプソンなど、メーカーの枠を超えて約40台のロボットが据え付けられ、毎日デモやテスト、検証を行っている。

1階は「ロボット実験工場」で、ファナックを中心としたロボットの実機を見ることができるほか、ユーザーの要望に応じてシステムを組み、テストを行う場所となっている。安全柵で囲われた10区画を超えるセル内にロボットシステムが組み込まれており、そこからアプリケーションやワークに応じてハンドの設計やティーチング、装置設計を行い、ユーザーと詳細を詰めていく。

見学当日は、パラレルリンクロボットを使って串に刺さった団子を3本ピッキングするデモ、プラスチック製の薬品容器のばら積みピッキングから整列までをアーム型とパラレルリンクロボットの2台を協調させて行うデモ、大きさの違う箱を隙間なく積んでいくパレタイジングデモ、アーム型ロボットのハンド部分にリング照明と画像検査装置を取り付け、液体容器の外観検査を全自動で行う検査デモ、2台のロボットをリンクさせて一つの動作を協調して行うデモ、パラレルリンクロボットによる高速ピッキングのデモなどを見せてもらった。

一部のエリアは目隠しのための青い布で覆われていて、来場者は中を見ることはできない。顧客のテストを行っている時はこうした措置を取り、秘密保持を徹底しているという。

 

2階は「展示スペース・ロボット実験室・ロボット学校」。アルミフレームで組んだ架台の上にロボットを据え付け、1つの装置として構成されたロボットシステムを数多く展示している。ここでは主要ロボットメーカー各社のロボットが並んでいるのが特長だ。

三菱電機コーナーは、e-F@ctoryのコンセプトムービーのほか、スカラロボットと直交ロボットを組み合わせた基盤実装デモ、ギヤの嵌合やならい動作など力覚センサの活用デモ、ねじ締めデモ装置を展示。ヤマハ発動機コーナーではリニアコンベアモジュール「LCM-X」を中心に、直交ロボットと作業台で組んだコンパクトな実装ラインを訴求。

FUJIはティーチングが不要の新型小型多関節ロボット「スマートウィング」を使った柔軟なピッキングデモ機を置いている。デンソーウェーブのコーナーは、発売したばかりの小型協働ロボット「COBOTTA(コボッタ)」と高速スカラロボット、セイコーエプソンは高速スカラロボットと、小型垂直多関節ロボットで構成されていた。

CKDの重量物搬送をアシストするパワフルアーム、日本電産シンポの追従運搬ロボットなども展示されている。

このほか妙徳とシュマルツの真空吸着機器、近藤製作所とビー・エル・オートテックのツールチェンジャー、パナソニックのレーザーマーカー、IDECのロボット向け安全機器、ミヤモリのロボットカバー、圧縮空気から窒素ガスが精製できるCKDのNSシリーズ、ナブテスコの減速機など、ロボット活用に有益な便利ツールなども紹介されている。

 

特別教育の研修施設も完備

また2階には、産業用ロボットを導入して現場で触る人は必ず受講しておかなければならない「ロボット特別教育」について、その授業を行うロボット学校のための施設も完備している。

下浦副館長によると、ロボット需要の急激な高まりによってロボットメーカーが行っているロボットの特別教育コースは連日予約で埋まっており、長い順番待ちが発生しているとのこと。

ダイドー東京ロボット館には現在4人のインストラクターが在籍し、近々1人増やす予定で、これから1講座あたり4人の少人数制で月1~2回ほど開催していきたいとしている。さらに同社の顧客に対しては、ロボットのさらに高度な使い方やアプリケーション別の活用法を学ぶことができるコースなども提供する計画だという。

3階は、来場者や顧客との打ち合わせを行うミーティングルームやセミナールームとなっている

 

オープン3か月で来場者数1000人突破

これまでの来館者は、同社の顧客だけでなく、展示会のチラシやインターネット、新聞、雑誌等で見たり、品川駅に出している大きな看板を見てWEBで申し込んで来た人など、これまでつながりのなかった新規客も多いという。1社につき3~4人で申し込むケースが多く、役職は経営者や現場の責任者や作業者までさまざま。ロボットの予備知識がなく、突然、自社のロボット化プロジェクトを任されたような人もいるという。

来場目標は厳密には設定していないが、月間20日の稼働でひと月あたりの来場者は300人~400人を見込んでおり、年間では4000人を目安としている。6月から8月の3カ月ですでに1000人を突破し、スタートはとても順調。今後はさらに伸びる見込みで、受け入れ体制の拡充に動いている。

「来館者は、いま工場が抱えている課題を解決したいという人よりも、労働人口が減り、人が採用できなくなるなかで、もう少し先の未来を見据えた自社の姿を考えたいという人がとても多い。特に食品産業では困っている企業が多く、今後ますます伸びていくだろう」(下浦副館長)。

 

30年の経験と実績。
あらゆる案件に対応できる地力

同社のロボット事業のスタンスは、あくまで商社。実際に行っているのは、ロボットを導入したいという企業に対し、ロボットシステムを提案し、必要な要件や要素を洗い出して整理する構想設計を行い、実機を使ったテストや検証までが主。そこにロボットを触るために必要な資格に対する講習や使いこなすための教育が加わる。

ユーザーの現場に合わせたシステム構築や据え付け、立ち上げは、同社のパートナーのシステムインテグレータが引き継ぎ、同社の技術者とともに進めていく仕組みだ。

同社の最大の強みは、一言で表現すると、ロボット事業で30年の歴史と、そこで培った技術と経験、ネットワークにある。

 

日本全国に40以上ある営業拠点から集まってきた多種多様なアプリケーション、大小さまざまな予算、複雑で難解な課題や高すぎる要求など、そうした案件をこなしてきた技術の蓄積と対応力の幅広さは他社の追随を許さない。自社には経験豊富で優秀な技術者がそろっており、商社でありながらFA・ロボットシステムインテグレーター協会にも入っている。

さらにはパートナーのシステムインテグレータも全国に数多くあり、得意分野もさまざまな企業がそろっている。多様なアプリケーションに対し、幅広く分厚いネットワークが整備されている。近年、さまざまな企業がロボット事業への参入や事業強化に取り組んでいるが、同社は容易に追いつくことのできない領域に到達している。

下浦副館長は「近い将来、どんな工場にもロボットが入る時代がやってくる。ロボット導入の仕方が分からない、ロボットを触れる人がいない、ロボットシステムが構築できない、ロボットのテストや実験ができる場所がないという声に対し、当館を使ってもらうことで解消していければと思っている」と話している。

 

ダイドー株式会社
名古屋市中村区名駅南4丁目12-19
http://www.daido-net.co.jp/

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