労働災害は工場運営の基本であり、絶対に避けなければいけないリスクだが、発生件数はずっと横ばいが続く。生産設備の経年劣化と技術者の高年齢化が進み、事故リスクは高まっている。
最近はIoTやロボット活用による生産性向上に関心が向いているが、あらためて現場安全の重要性を考えなければならない。
そんななか2018年から厚生労働省による「第13次労働災害防止計画」がスタートしている。
17年労災死傷者数は12万人超
厚生労働省の調査によると、17年の労働災害の死傷者数は12万460人。前年より2550人増えた。
業界別では製造業が最も多い2万6674人で、前年より220人の増加。2番目が建設業の1万51129人、陸上貨物運送事業の1万4706人と続く。
原因は、つまずきなどによる「転倒」が2万8310人、高所からの「墜落・転落」が2万374人、腰痛などの「動作の反動・無理な動作」が1万6177人となっている。
製造業に焦点を絞ると、死傷者数2万6674人のうち、最も多かったのが「はさまれ・巻き込まれ」で7169人、続いて「転倒」が5088人、「墜落・転落」が2842人、「切れ・こすれ」が2523人、「動作の反復・無理な動作」が2433人だった。
事故の起因となったものについては「通路」が2461人でトップ。「金属材料」が1730人、「荷姿のもの」が1231人、「食品加工機械」が1118人と続く。
さらに多いものでは「はしご等」(882人)、作業床・歩み板(835人)、階段桟橋(834人)、人力運搬機(830人)、トラック(797人)、手工具(746人)、コンベア(651人)、フォークリフト(638人)、クレーン(559人)となっている。
第13次労働災害防止計画スタート
厚生労働省は5年周期で労働災害防止計画を策定・推進し、今年から第13次労働災害防止計画がスタートしている。
前回の第12次労働災害防止計画では、死亡災害・死傷災害ともに15%以上の減少を目指したが、未達に終わった。死亡災害は12年1093人から17年978人に減少したが、減少率は11%にとどまった。死傷災害も、12年11万9576人から17年12万460人で0.7%増となった。
製造業では機械設備の本質安全化(機械そのものを安全にすること)によるはさまれ・巻き込まれ災害を防止を重点施策として死亡災害5%を目指し、結果は199人(12年)から160人(17年)と19.6%と大きく減らすことができた。
これを受けて第13次労働災害防止計画では、18年から23年を計画期間として死亡災害15%以上減少、死傷災害5%以上減少を目指すとした。製造業では、施設や設備、機械等に起因する災害等の防止を重点施策とし、前回の機械設備による死亡災害を対象としたものからより範囲を広げた内容となっている。
具体的な安全対策として、危険性の高い機械に対しメーカーによるリスクアセスメントの実施と使用者への残留リスクの伝達と安全利用の徹底を促進する。また機能安全で安全確保を行っている信頼性の高い自動制御装置の活用を推進するため、安全柵の設置や点検・監視、有資格者の配置などで自動制御装置を利用した際の特例措置を検討する。
さらに、外国では信頼性の高い自動制御装置を使った場合、損害保険の保険料が減免されるインセンティブが用意されているケースがある。そうした好例の適用を検討していく。
他にも生産設備の経年劣化によるリスク増に対して点検・設備の基準検討、事故の多い食品製造業と食品加工機械の安全使用を促進するための職長への安全教育の実施などを行っていくとしている。
また技術革新への労働安全の対応について、協働ロボットの機能安全の基準や認証制度の検討、AIを搭載した自立制御するロボットの普及拡大に対する安全対策や基準、規格の検討、信頼性の高い自動制御装置の普及促進、人と機械の安全な協働に関する基準づくりを進めていくとしている。