販売店は役割見直しを
顧客実体情報をメーカーに発信
電気部品や制御機器を扱う営業では、「源流企業」という言葉をかつてよく使ったことがあった。源流企業とは業界のトップクラスの企業のことを言った。
電気部品や制御機器の草創期から成長期にかけて、新商品創出に関する活動は工場の商品技術と販売員とで直接やっていた。成長期に入ると製造側に商品部ができて新商品創出の窓口の機能を果たした。この時に営業側にも営業企画部ができて、営業部と企画部に分かれていた。当初はマーケティング活動の中心は営業部であったから、新商品創出に関して営業部が直接、商品部と打ち合わせて実施した。
1980年代になると、日本の産業は工業化社会の最盛期を迎えた。この頃の営業企画部は販促活動だけでなく、新商品創出に絡むマーケティング活動に力を注ぐようになった。
その頃に営業企画部が言い出したのが「源流企業」という言葉であった。電気部品や制御機器はずいぶんと豊富になっていたが、機能的にはまだまだ伸びる余地を多く残していた。業界で影響力を持つ企業を源流企業に位置づけ、源流企業からの開発依頼やニーズに合わせた商品を企画部で精査し、製造側の商品部と計って新商品を開発、その商品を営業部が全国へ売りまくった。
ちょうど水が川上から川下へ流れるように、影響力のある源流企業が採用している新商品は後続して発展する一般企業が使うという考え方であり、強いて言えば源流企業マーケティングであった。
90年代に入ると超円高・海外生産加速で電気部品や制御機器の国内需要は安定的横ばいの傾向になって、競争が一段と激しくなった。販売では競合優位の新商品を要望した。その頃から源流企業マーケティングは消え、その代わりに機能的優位や機能的目新しさ、特殊な機能といった機能に特色を持たせる新商品創出が主流になった。このような新商品創出はマーケットと共に歩むマーケティングではなく、強いて言えばベンチマーク的新商品創出であったことになる。
世界が情報化時代・グローバル時代を迎えると、これまでの延長線ではマーケットを捉えきれなくなった。製造側の製造部と商品部、営業側の営業部と企画部の4者はそれぞれが専門性を高めざるを得なくなった。製造部は現場の効率化、グローバル化にまい進。商品部は新商品創出の担い手として自ら動き、営業企画部は販売促進活動で主導力を発揮し、営業部は競合に負けない営業力の強化にひたすら走った。
企業を元気にする源は、これぞという新商品である。4者がそれぞれの役割でマーケティング活動をすればシナジー効果をもたらして、素晴らしい新商品が生まれる。4者の壁が低いならシナジー効果が出て、マーケティング活動の健全性は保たれることになろう。
しかし4者の壁が高くなれば一瞬でもマーケットの実情を見失う恐れが出てくる。それが命取りとなる場合だってある。しかし専門性が強くなればなるほど、それぞれの壁は高くなるのが世の習いである。
そこで販売店の役割を見直す必要が出てくる。現在の販売店はあまりにもメーカー寄りで市場や顧客をメーカーと同じ目で見ている。本来、販売店は商品をつくっているわけではないから、もっと市場や顧客寄りになってメーカーを見る立場にある。
高度成長期に商品が顧客をつくった。その流れが販売店にメーカー的な目で市場を見る癖をつけている。市場が小さかった当時の販売店がやっていたように顧客の実体情報をメーカーに発信すれば、メーカーの部門間の壁は低くなるかもしれない。