赴任者のための現地(中国人)社員のマネジメント(その2)
-労務管理・リスクマネジメント-③
評価理由をしっかり説明
今回は人事制度と評価、リスク管理(ストライキ)に関して考えてみます。人事制度と従業員に対する評価も赴任者にとって難しいものです。これらに関して中国の場合、信賞必罰が有効だし必要です。よくやった人にはご褒美をあげ、よくなかった人には何らかの処置を取る。アメとムチですね。結果や理由が明確であれば、評価に差を付けることに問題はありません。
ただし、中国人は評価に対して非常に敏感ですから、自分の考えと違う評価だった場合、不満をぶつけてきたり、見直しを求めてくることは少なくありません。そんなときは、評価結果の理由をしっかり説明できるようにしておくことが大事です。そのためには評価の理由を明確にしておくことが必要です。
評価がよくなかったスタッフに対しては、今回はこういう理由でよい評価ではなかったが、今年は期待しているなどと期待していることを伝えるようにしたいですね。中国の人も心を持った人間ですから、こうした思いを伝えることは大事です。従業員の評価では、従業員と真剣に向き合うことが求められます。
ここからは注意すべきリスクマネジメントについて考えます。中国工場で起こり得るリスクを認識して未然に防止できるようにしたいものです。
今、中国工場では、ストライキと暴動、これが一番可能性の高い身近なリスクと言えます。
ストライキは労働者の権利意識が変わってきたことや物価の上昇などが大きく影響しています。賃金、労働条件(労働時間や労働環境)など待遇への不満が要因としてあります。日系企業の場合、ほとんどの企業で最低賃金を上回る額を出していますし、毎年見直しをしています。問題は、そうした対応が従業員にしっかり伝えられていないことです。対応しているのだから問題ないではダメで、従業員にそのことを周知して初めて対応していると言えるのです。
他にも、従業員に会社を誇りに感じてもらうことができれば、ストなどが起こる可能性は少なくなると言えます。例えば、CSRと呼ばれる社会貢献活動を会社として普段から取り組み、従業員にも会社のCSR活動を知ってもらうようにしている会社もあります。
この会社では、地元の恵まれない子供たちに奨学金を出すことを行っています。奨学金は会社だけが出すのではなく、従業員からも寄付を集め、その集まった額に応じて会社が寄付する金額を決めるという方法を取っています。そして寄付のセレモニーには、従業員の代表も参加させています。これなどは、従業員に社会貢献活動に参加している意識が芽生えるなどの効果があります。こうしたことをやることで会社としてのステータスが上がり、そこに勤務していることが従業員のステータスにつながります。
こうした地道な活動によって、ストライキや暴動などが発生するリスクを少しでも少なくなるようにしたいものです。
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◆根本隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など。