ハノーバメッセを主催するドイツメッセと日本能率協会ドイツメッセ日本代表部は13日、東京・ステーションコンファレンス東京でハノーバーメッセ2019に向けたカンファレンスを開催し、ハノーバーメッセ2019の見どころを紹介した。そのカンファレンスの様子をレポートする。
世界最大にして最重要の国際産業見本市・ハノーバーメッセ
2019年4/1〜4/5に開催 6500社出展・22万人来場予定
ハノーバーメッセは、毎年4月にドイツ・ハノーバー市のハノーバー国際見本市会場で行われる国際産業見本市。1947年に第1回が開催されて以来、70年以上の歴史を持つ。インダストリー4.0やデジタル化の最新トレンドと技術、製品がここから発表され、製造業をはじめ産業に携わる人間にとって欠かせない一大イベントとして世界中で認識されている。毎年、世界中から6000社以上が出展、20万人以上が来場し、名実ともに世界最大にして最重要の展示会として君臨している。
2019年のハノーバメッセは4月1日(月)から4月5日(金)までの5日間の会期で開催される。メインテーマは「Integrated Industry – Industrial Intelligence」(インテグレーテッドインダストリー−インダストリアルインテリジェンス)。「つながる、つなげる」からさらに一歩進んだ「統合化」と、AIなどを活用した「産業の知能化」の推進を掲げ、インダストリー4.0の進展した姿を提案し、世界中から6500社が参加し、80カ国から22万人が来場する見込み。
2019年のパートナーカントリーはスウェーデンに決定。スウェーデンは人口約1000万人の小国ながらトラックのスカニア、通信機器のエリクソンなど世界的な企業が多く、一方でスタートアップも盛ん。スウェーデンパビリオンでは、コラボレーションとイノベーションのラボを意味する「Co-Lab」をテーマに技術の紹介やマッチングなどを促進するとした。
ハノーバーメッセの見どころ、出展効果を紹介
カンファレンスでは、はじめに主催であるドイツメッセ株式会社ハノーバーメッセ 国際関係担当部長のマルコ・ジーベルト氏が、ハノーバーメッセの見どころを紹介。続いて2019年のパートナー国を務めるスウェーデンの取り組みについてスウェーデン大使館 商務・投資部 商務参事官 セシリア・レイラム氏が説明。その後、ハノーバーメッセに出展している日本企業を代表してCKD 営業本部 販売促進部 部長 水野純一氏が出展の成果について話し、最後にハノーバーメッセの日本窓口となる日本能率協会ドイツメッセ日本代表部から部長の竹生学史氏が話した。
「世界で最も大きな産業プラットフォーム。産業の未来を見ることができる場」
ドイツメッセ ハノーバーメッセ国際関係担当部長マルコ・ジーベルト氏は、はじめに産業とハノーバーメッセを取り巻く環境について、「発展が目覚ましく、変化に驚いている。近年はコボット(協働ロボット)やAI、スマート技術、Eモビリティなど、さまざまなテーマが取り上げられているが、未来の産業はネットワーク化であり、お互いがなくては発展ができなくなっている」とし、産業においては共創・コラボレーションが重要性を増していると指摘。その上でハノーバーメッセ2019のテーマを「Integrated Industry – Industrial Intelligence」(インテグレーテッドインダストリー インダストリアルインテリジェンス)と発表。ハノーバーメッセ2018では統合化や知能化がキーポイントになるとした。
続いて各分野におけるトピックを、前回2018年の目立った取り組みとともに紹介。
製造現場やフィールドでは「自動化」をポイントに挙げた。特に人とロボットが一緒に働く環境づくりに注目が集まるとし、昨年はFESTOがバイオニックワークプレイスという人とロボットが完全協調した作業セルのデモを紹介した。
工場全体を対象とするデジタルファクトリーについては、昨年は富士通が完全自動化の工場、機械と人、知能が協働した最適化の出展例を紹介し、今後デジタル化の展示が増えることを示唆した。。
エネルギー分野では、「インテグレーテッドエナジー」としてエネルギーとEモビリティの分野で、エネルギーの効率利用が注目される。昨年、ABBが知能化した電気自動車の充電システムを展示した。未来のエネルギーをどう貯めるか、それを適切な形でどう供給していくかが展示されるだろうとした。
部品産業の「インダストリアルサプライ」については、部品産業では軽量化によって効率を高める取り組みが進んでおり、昨年はアディティブマニュファクチャリング(積層製造)によっていくつかの異なる素材を使ったソリの事例が脚光を浴びていたとした。
工場で欠かせない圧縮空気と真空技術である「ComVac」では、圧縮空気を安全かつ効率的に使う技術に着目。圧縮空気は空気が供給されている限り誰もそれを気にしないが、供給が止まると工場が止まり、そうして初めてその重要性に気づく。そうしたことをどう防ぐかの技術が出展されると見ている。
技術開発の分野では、ハノーバーメッセでもたくさんの大学や研究機関、団体が出展しており、彼らと産業界が蜜に連携していることが重要であるとした。
また近年はスタートアップも話題になっていて、小さなスタートアップに対して大企業が出資するようになってきている。ハノーバーメッセには世界中からたくさんの学生に加え、若いテック系のスタートアップもビジネスを求めて集うようになっているとし、そのためのエリアとして「Young Tech Enterprise」(ヤングテックエンタープライズ)というオープンなエリアも設けていることを紹介した。
またハノーバーメッセでは毎回、革新的な技術に対してHERMES AWARD(ヘルメスアワード)を授与している。世界でも高く評価されている技術表彰であり、ジーベルト氏は「ヘルメスアワードはビジネスプロモーションにも役立つ。ぜひ参加してほしい」と話した。
まとめとしてジーベルト氏は「ハノーバーメッセを一言で表すと、工場を稼動させるためのすべてを見つけることができる場、グローバルな共創が見える場、ソリューションを結びつけるショッピングモールである。ハノーバーメッセは世界で最も大きな産業プラットフォームであり、産業の未来を見ることができる場所である。ぜひ歩きやすい靴でハノーバーメッセを訪れ、これからのコラボレーションについて考える場になってほしい」と話した。
パートナーカントリーはスウェーデン Co-Labを提案
続いてスウェーデン大使館 商務・投資部 商務参事官 セシリア・レイラム氏がパートナーカントリーとしてのスウェーデンの魅力と強み、出展予定を紹介。コラボレーションを主要テーマとし、スウェーデンの得意領域であるコ・クリエーション(共創)とイノベーションのラボとして「Co-Lab」をメッセージとして伝えていきたいとした。
スウェーデンの産業の特徴について、セシリア氏は「スウェーデンは小さな国ですが、政府と産業界の強いチームワークで国を挙げてデジタルトランスフォーメーションの最前線に立っており、イノベーションのグローバルランキングでは常に上位に位置しています。またスウェーデン人はオープンな気質で、共創や知識共有には協力的で、ビジネスや組織、人や国同士で協力する文化があり、コラボレーションに優れています。さらにサステナビリティ(持続可能性)にも積極的でスマートインダストリーへのシフトをしています」と説明した。
スウェーデンはヨーロッパでもナンバーワンのテクノロジーハブであり、スタートアップが盛んだという。そこでハノーバーメッセ2019のスウェーデンパビリオンでは、イノベーションとコラボレーションをテーマとして、40社ものスタートアップが参加し、産業界とスタートアップのコラボレーションを生み出す展示を行うとした。またテーマ別展示やセミナー、ワークショップをはじめ、スウェーデンの文化イベントやパフォーマンスも予定している。音楽や食事、食べ物なども提供し、ぜひ足を運んでほしいとした。
ハノーバーメッセで世界ブランディングに成功(CKD)
続いて2017年から出展しているというCKD株式会社 営業本部 販売促進部 部長 水野純一氏が、ハノーバーメッセに出展した効果について紹介した。
同社は自働機や省力機器メーカーで、ヨーロッパ市場への足がかりとしてブランディング目的で、2017年から本格的にハノーバーメッセに出展を開始。まだ2年だが、これまで関係が薄かった自動車メーカーとの関係構築と関係強化ができ、着実にその成果が現れている。
2017年は右も左も分からず、とにかく自社の製品をたくさん持っていって展示。世界中から多くの名刺が獲得できたが、一方で手を広げすぎて自社がぼやけてしまったという。2018年はその反省から、ターゲットを部品、自動車、IoTに絞り、技術力を打ち出した展示と、じっくり話せるサロン式の商談スペースを設置。これにより技術を見て体験し、それをもってじっくり話すというサイクルが確立し、効果が向上。展示会前には地元のPR会社と組んでWEB広告やプレス発表などを実施。取材やメディアでも取り上げられ、ブランディング効果もあったという。
日本の展示会との違いについても言及し、日本の場合は来場者のほとんどが情報収集で、完成品を見てもらうパターンが多いとし、ヨーロッパは商談目的で事前に情報収集を済ませ、展示会では技術力を見せることが多いという。また日本の展示会は国内とアジア、ハノーバーメッセでは世界中から人が来る。
水野氏は「結果として2017年には44カ国、2018年には47カ国の人と名刺交換できた。ハノーバーメッセは経営トップなども多く訪れる。今年はASEANや中国、インドの拠点からも参加させ、世界中から顧客を呼ぶようなことも行っていきたい」とし、積極的に活用していく旨を示した。
ハノーバーメッセ2018 11月末まで出展申込み受付中
最後に日本能率協会ドイツメッセ日本代表部 部長 竹生学史氏が、出展申し込みについて解説。11月まで受け付けているという。
竹生氏は「世界の人々とネットワーキングする、それにふさわしい場がハノーバーメッセである。日本の企業や研究機関、大学には、ヨーロッパやドイツ、世界とコラボレーションするために是非出展してほしい。日本能率協会ドイツメッセ日本代表部ではロボット革命イニシアティブ協議会とジャパンパビリオンを構成する。デジタルファクトリーやオートメーションは世界的にも人気がある。11月末まで出展申し込みを受け付けている」と話した。