赴任者のための現地(中国人)社員のマネジメント(その2)
-労務管理・リスクマネジメント-④
キックバックの対応は慎重に
今回は、従業員(中国人、日本人)の行動に関するリスクについて、書くことにします。
ひとつ目は、従業員の不正・横領・盗難です。中国工場では常にこのリスクは存在すると考えておいた方がよいでしょう。不正が起きないような仕組みや制度にすることが大事です。換金できるものは何でも横領や盗難の対象になりますが、やはり材料関係がターゲットになることが多いですから、十分注意してください。
ある日系の工場では、こんな横流し事件が起きました。樹脂のシート材料が巧妙に倉庫から持ち出されていたのです。ひょんなことから発覚したのですが、とても大がかりなもので、倉庫、生産管理、現場の人間が手を組んで架空の伝票を発行するなどしてやっていたのです。管理はしっかりできていると思っていた日本人総経理は、大変なショックを受けたようでした。
他には、購買担当者が業者からキックバックを取ることも起きます。中国ではそれが当たり前と考えているところもあります。日本の感覚からいえば、許してはいけないことですが、これに関する対応は、会社ごと置かれた状況や考え方で大きく違っています。
キックバックを一切認めない方針としている会社では、次のような対応をしているケースもあります。購買責任者である購買科長は期間を決めてローテーションする。こうすることで、業者と癒着をさせない、そして、それを認めないという強い意志を示しています。
逆に、厳しく管理できないと判断した会社では、そうした行為に目をつぶっているケースもあります。ただし、それによって購入価格が高くなるなど会社に不利益にならないことだけはチェックしているようです。
ふたつ目のリスクとして忘れてはいけないのが、日本人駐在員が引き起こすトラブルです。多いのは女性問題です。
ある日系工場では、駐在員がいい仲になった女性を自分の秘書として雇ったという事例もありました。こうなると周りの中国人スタッフに示しがつかず、駐在員としての役割を果たすことはできなくなってしまいます。
日本人駐在員には、節度ある行動が求められていますので自覚してください。
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◆根本隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など