NTT東日本 工場向けIoTサービスに参入、IT担当者不在でも安心

効率アップ、異常時対応も簡単

NTT東日本は、簡単にIoTを始められる「おてがるIoTシリーズ」として、機械の稼働監視を通じて製造現場を見える化し、効率化や異常時対応のスピードアップに役立つ「工場向けIoTパッケージ」を11月21日からサービス開始した。

IoTに必要なすべてをセットにし、加えて導入から運用までのITサポートもパッケージに含んだ形で提供し、IT担当者が不足している中小企業でも安心して導入・活用できるのが大きなメリットだ。

 

中小でIoTが進まない原因

製造業の国内工場は37万カ所あるが、そのうち36万カ所が中小工場。このほとんどでIoTが進んでおらず、同社の調査によると取り組みを開始している企業はわずか8%。検討している(14%)、情報収集をしている(34%)は多いにも関わらず、導入が進んでいない理由として、同社は「運用のしやすさ」と「導入後の保守サポートへの不安」に着目。

それを解決することが地域企業のIoT導入の速度を上げるとして今回のサービスを立ち上げた。

 

IoTに必要なすべてワンセット

同パッケージは、センサとネットワークカメラなどIoTデバイスと、そのデータを伝送するためのWiFiのIoTゲートウェイ、データとネットワークを保護するセキュリティ、データを蓄積して見える化するIoTクラウドまで、工場でIoTを使うために必要なワンセットがそろっている。さらに利用後の運用サポートまで含んでいるのが特徴だ。

センサからクラウドまで一貫して提供する似たようなサービスは市場にいくつも出ている。設置して電源を入れるだけで簡単に導入できるものや、導入時サポートをうたうものもある。しかし同サービスは、導入時だけでなく、実際の利用後のサポートも含んでいることが他とは大きく異なる。

運用サポートは、365日(9時-21時)無休で対応し、IoTデバイスの初期設定から利用方法の問い合わせ、設定変更、機器やネットワークのトラブル時の故障診断や駆けつけ保守等に加え、クラウドからCSVデータを抽出してビジュアル化したレポート提供も行ってくれる。通常は自社のIT担当者が行う業務をNTT東日本が代行してサポートすることで、中小企業でIT担当者がいない、雇用できないという場合でも安心して使うことができる。

 

機械の稼働監視と異常通知

サービスで提供するのは、稼働状況のリアルタイム可視化と異常時の通知のシステム。

機械に外付けでセンサを取り付け、稼働・停止データをクラウドに送信。クラウドでそれを蓄積しながらモニタに表示し、異常時にはパソコンと携帯電話へ異常を知らせるメールが届く。同時にネットワークカメラで機械の状況を常時撮影しており、停止などイベント発生の前後5分程度をデータとして保存する。いわゆる「見える化」で、IoTのファーストステップだ。

これまで機械が停止した際は、機械の様子や信号灯の赤ランプを見て気づいていたが、携帯電話やパソコンにメールが届くことで発見から現場に行くまでのタイムロスが大きく削減。また復旧作業についても、従来はイチから原因を探していたのが、カメラでトラブル時の状況が確認できるので、どこで何が起きたかがすぐ分かり、原因究明と復旧作業の時間と手間が大きく短縮できる。

 

1年で稼働率4% 年120万円の利益効果

1年前から現場での実証実験に協力した板金加工のトーメックス(埼玉県川口市)では、打ち抜き工程の自動加工機械1台に機器を設置して稼働状況を見える化した。その結果、稼働率が4%改善し、年間120万円の利益効果が出たという。

これまでは機械が停止しても気づかないことが多く、それを防ぐために定期的な巡回監視を行っていた。同システムの導入により、機械の異常停止の早期発見と早期復旧による「機械の稼働時間の長時間化」、稼働状況の巡回監視をなくしたことによる「作業者の時間の有効活用」、画像を見ながら皆でワイガヤしながら異常の原因究明を行ったことによる「知識とノウハウ継承」などの成果につながった。

トーメックス 常務執行役員 浅子英一氏は「こまめに加工機の状態を見に行く手間と、止まった時になぜだろう?と考える時間が減り、復旧や段取り替えが効率的にできるようになり、現場でも好評だ」とし、現場では1時間かかっていた復旧作業が30分でできるようになったという。

 

信号灯付き機械ならほぼIoT化可能

特徴のもうひとつが「センサ」。稼働状況の監視には積層信号灯とネットワークカメラを利用するのだが、積層信号灯へのセンサはパトライトのIoTデバイス「AirGRID」を採用したこと。

AirGRIDは積層信号灯に後付けで取り付けられる、センサと通信機能を搭載したIoTデバイス。これにより機械内部をいじることなく、安価に稼働時間と異常停止時間、生産数などを自動収集することが可能になる。

さらにパトライトは積層信号灯で国内70%のシェアを持っており、メーカーと機械の種類・別を問わず、同社製の積層信号灯が付いている機械であればどんな機械でも稼働データを収集できる。極論すれば、国内にあるほぼすべての機械に対応できるようになる。

 

パトライト吉坂悟志執行役員 パトライトカンパニー長兼営業本部長は「工場にある機械の100%に信号灯がついており、その7割が当社の製品。これまで当社もIoTの提案を行ってきたが、そのほとんどが大企業。

今回、NTT東日本と連携することによって、日本にある37万の工場すべてに提案でき、貢献できるチャンスが広がった」と話している。

 

約130万円強の費用は高いか否か?

導入にかかるコストについて、1台の機械でセンサ一式とネットワークカメラ1台で監視するシステムのモデル価格は、初期費用で132万円、月々の利用料金で2万9900円。

提案する対象は、国内37万の工場を持っている企業すべて。とは言え、メインとなるのは地域経済を支える地場の企業。IT人材が不足するなか、「IT人材はいない、雇用できない、でもIoTをやりたい」という意思がある企業が中心となる。

130万円超プラス月額費用は、中小企業にとって決して小さい投資ではないが、イチから必要な装置やシステム、ネットワークをそろえて構築するコストや運用後の保守サポートまで入っていることや、何より1年で120万円の効果が出ていること、うまくやれば1年超で投資回収できることを考えると、無理な金額ではない。

 

また、効率化によって人員配置が柔軟にできるようになり、人不足への解決策の一つになるという意味でも無視はできない。トーメックスでもこの効果を見て、作業員は1人1台担当だったものを複数台担当させ、より効率が上げられるかもしれないという手応えを感じているという。

NTT東日本経営企画部営業戦略推進室 酒井大雅担当部長は「1年かけてトライアルを行い、地域の工場に使ってもらって成果が出たものを反映させてサービス化した。このサービスによって地域経済を支える企業の生産性向上とIoT活用の裾野を広げていきたい」と話している。

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