【2019年 年頭所感】日本半導体製造装置協会、迷うことが無い道しるべを

日本半導体製造装置協会 会長 辻村 学

あけましておめでとうございます。旧年中は当協会の活動に多大なご協力を戴き、心から感謝申し上げます。

一昨年・昨年と未曽有の好況で半導体及びFPD製造装置の市場は歴代最高を更新してきました。ですが、山は登れば、必ず降りる時が来ます。少し降りるのか、休むのか、それとも崖から落ちるのか、この先の状態を見極める必要があります。当協会では、協会正会員による「短観」を毎月集計していますが、これは現在・半年先・一年後の景況感を、直観で大きく俯瞰できる非常に便利なツールです。

またこの業界では「終焉論」が必ず出てきます。数年前から「ムーアの法則終焉論」、最近では「スーパーサイクル終焉論」です。私たちはこの「終焉論」に惑わされず、しっかりと技術面と市場面で5年、10年、そして100年先を大きく俯瞰していきたいと思います。

半導体市場はこれまでシングルドライバー、つまりパソコンや携帯電話だけで引っ張っていた時代から、牽引者にIoTやAIなどが加わりマルチドライバーになっています。つまり、技術的に言えば、かつての微細化一辺倒から、多彩なアプリへと応用を考える時代に広がってきたということです。これを称して「マルチドライバーはICAC5(IoT、Cloud、AI、Car、5Gであいかっくふぁいぶ)」とわかりやすいスローガンを作って業界で宣伝しています。

ICAC5そのものにそれほどの深い意味はありません(笑)。大事なのは経営者が創造する景況感です。周りの意見に惑わされず、技術をしっかり見据えて、自分たちで業界の景況感を正しい方向に導くことです。そのために経営者にわかりやすいスローガンを作りました。

とは言え、景気の良いことばかりを無責任に言うわけにはまいりません。山は登っているときにこそ安全に下山することも考えておくべきです。下山には下山のルールがあります。昨年は米中貿易(含む半導体)戦争に見舞われました。30年前の日米半導体戦争とは背景も規模も大きく異なり、対応に正解が見つかりません。

昨年、VUCA時代に突入したと言いました。Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)、つまり社会情勢はきわめて予測困難、めちゃくちゃな時代に突入したと説明しました。そして、それでも「不確実」だということだけは「確実」ですから、そう思って対応しましょうと申し上げました。

今年再度このことを下山ルールとして申し上げておきたいと思います。この先の天候も道も不明です。まだまだ上るのか、ここで休むのか、ゆっくり降りるのか、一気に下山するのか、会員の皆さんが迷うことが無い(少ない)ような道しるべをお届けできるよう誠心誠意努力致します。

最後に、今年もまた「学(まなぶ)の法則」を高らかに宣言したいと思います。

半導体は人間の欲求ある限り永遠に不滅です!
そして、それを支える半導体製造装置協会も不滅です!
ICAC5!

これをもって、皆様のますますのご発展とご活躍を祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

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