「変化のないところに成長はない」
自社の顧客の見直しから
言うまでもなく、日本は鉱物資源が少なく、加工貿易で財を確保して資本を形成してきた。戦後は資金不足で原料を輸入するのもままならなかった。そのため、日本の山々に少量ずつ眠っている様々な鉱物を、至る所で採掘していたほどである。その少ない鉱物を加工し、付加価値を付けて輸出し、資本をつくってきた。そのためには技術がいる。技術を一丸となって磨いてきたことが高度成長の要因となった。
当時は、世界の資本が現在ほど潤沢でなかった中で、かなりの速さで工業化を成し遂げることができたのは技術力のおかげだ。1964年の東京オリンピックの頃の付加価値の統計であるGDPは29兆円であり、その内の8.3%の2兆4000億円は輸出であった。
当時の人口は9700万人だったが、30年後の95年には人口1億2500万人となり、GDPは500兆円に達した。輸出額は44兆円に増えたが、輸出比率は8%台でそれほど変化はない。この頃までが日本の工業化社会だったようである。
その後は情報化と言われている社会に徐々に突入してきたようだ。現在のGDPは550兆円位であり、輸出額は70兆円だからその比率はグーッと増して14%位になる。
輸出比率の増大は為替の影響もあるだろうが、実際は国内需要が伸びないために、これまでの技術で培われた製造力の旺盛さが輸出へと向かわせてしまったようである。給与が伸びないから購買力が生まれない。それでデフレ脱出ができないと言われるが、それだけではない。成熟した社会人が買いたいモノが少ないという理由が大きい。多少ボーナスが上がっても、とりあえず貯金すると答える人が多かったのはその証である。
リーマンショックがあり、不運にも東日本大震災が起きてGDPは400兆円前半まで落ちていた。社会に緊張感が走り、それまで日本に流れていたゆるい意識が変化してきた。
昨年はインバウンド消費が好調で話題になった。また円安効果と言われて、従来から日本の強かった製品や部品の輸出が伸びたこともあって、日本のGDPは550兆円となった。
そのような数字を見ると、成長軌道に乗ってきたと思われるが、実際、人口減少傾向にある成熟社会では、新しい需要が生まれなければ本格的なデフレ脱出は困難である。しかし、ゆるい意識が変わったあたりから、成長の芽も見え出している。
一つ目は、中小メーカーの頑張りが目立つ製品である。数量こそ多くないが、新しい視点で作られている製品や、新しい技術が載っている製品が多数出始めた。
二つ目は、昨今、IoTという言葉が製造現場に飛び交っているように、製造現場では大幅な生産効率を上げるため、新しいICT技術を取り入れようとしてやる気が入ったことである。各種機器や部品の販売店は、このような気運を売り上げにする機会が到来しているのである。
販売店は、顧客が新しい製品の構想を持っている事をいち早くわからなければならないし、製造技術部ではIoTと称してデーター取りをやっているが、何のためにやっているのかを知らずにデーター取りに使われる機器類の打ち合わせに終始していては、その背後にある物件や案件を見逃すことになってしまう。
リーマンと東日本大震災のショックで、意識が変わって今までとは違うことをやる企業が増えているのは確かである。各企業が変わることと連動して、販売店は営業戦略を変えるところが出てくるべきだし、営業戦術を変えるところが出てきてもいいし、日々の営業のやり方を多少変えていくところが出てくるべきなのである。
いずれにしても、変化のないところに成長はないのであるから、ここ数年ほとんど変わっていない販売店は、自社の顧客をよく見直してみることから始めることが明日に繋がるのである。