品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか-(その1)
中国工場の問題点を生産の3要素で捉える②
激しい作業者の入れ替わり
今回は、ある日系中国工場で取り組んだ事例を紹介します。この日系工場では、従来型の作業からの転換を目指しました。
従来型の作業と目指した形の違いを表に示します。
従来型作業というのは、前回書いたような「単純化・標準化、マニュアル通り、熟練不要」のことです。目指した形というのは、作業を「複数化・組合せ」するセル生産型の作業になります。そのためには作業者のスキルアップと熟練が必要になり、熟練が達成できれば、そこにはノウハウが蓄積され会社の財産になると考えた訳です。
一方で次のような側面も持っています。従来型の作業であれば、作業者の入替は問題なくできます。つまり、単純な作業なので作業者が辞めても別の人を連れてくれば代わりはすぐ務まるということです。しかし、セル生産型の作業では、作業者の入替は簡単にはできません。熟練した作業者なので、誰でも代わりが務まるということにはなりません。
さてこの日系工場が目指した結果ですが、実は志半ばで挫折してしまいました。理由は、これを進めていた途中に起きたリーマンショックを境に作業者の定着率が急激に悪化したためです。セル生産型作業は定着が前提となるのですが、その前提が崩れてしまった訳です。もともと中国は日本に比べ定着率は悪いのですが、この日系工場では従来程度の定着率があれば「できる」と考え始めたのです。
筆者は、この日系工場が目指したセル生産型作業は間違っていないと思います。しかし、中国工場の作業者や工程のすべてをセル生産型作業にするのは無理があります。従来型作業と区分して、うまくバランスを取って進めることが大事だと考えています。
ここで頭に入れておくべきことは、中国では、日本に比べ作業者の入れ替わりは激しいですが、全員が入れ替わる訳ではないということ。定着してくれている人もいるはずなので、そういう人たちをコアにしてスキルの向上を図ることです。
次回は、作業者を定着させるためには何が必要かについて考えます。
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◆根本隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など