品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか-(その1)
中国工場の問題点を生産の3要素で捉える③
作業者の定着は誇りと満足度
前回は、定着率が悪化したために従来型作業からの転換ができなかった日系工場の事例を紹介しました。
今回は、作業者を定着させるために何が必要かを考えます。
定着させる-そのために何が必要か
中国の人は会社への帰属意識が薄いと言われています。これはその通りでしょう。そんな中国の人に、少しでも自分の会社、自分の工場と思ってもらいたいものです。それが定着につながり品質にもよい影響を与えることになります。ここでは、作業者の定着に有効な二つの方法を紹介します。
①自分の仕事に誇りをもたせる(やりがいを持たせる)
香港・台湾・中国系の工場でこのようなことを見かけることがあります。どのようなことを見かけるかというと、作業者が自分は何をつくっているのかを知らない、自分のやっている作業がいったい何なのかわからないまま作業をしていることです。自分が何をやっているのかわからないのは、人間としてとても悲しいことですし、当然品質にも影響があります。
この対応としては、作業者に自分の作業の重要性を認識してもらうことが重要です。工場の作業にはひとつとしていい加減にやっていいものはなく、どれも品質を確保するために必要な作業であり、自分がやっている作業も重要であることをわかってもらうのです。そうすることで自分のやっている作業に責任を持ってもらう、それが仕事のやりがいにつながります。
②満足度を高める
従業員(作業者)の会社に対する満足度を高めることも必要です。満足度は、給料に加えて福利厚生を充実させることがポイントです。以前の中国では、作業者が求めていたのはお金(給料)でした。しかし、最近は給料が他社と同等以上なのは当たり前で、それに加えて福利厚生も充実させないと定着はおろか応募も来ないような状況です。
福利厚生の内容は、宿舎の設備、食事などです。会社で提供する食事は予算の制約があるのですが、可能な範囲でおいしいものを出すようにしたいものです。もうひとつ筆者お薦めの福利厚生があります。それは、学習の機会を与えることです。作業者の中にも向学心旺盛な人は少なくありません。そうした人たちに勉強する場を提供するのです。日系工場であれば、日本語教室が手軽で受けもよくお薦めです。
このようにがんばって定着を図るのですが、100%定着させるのは無理です。中国においては、一定の離職率があることを前提に体制や仕組みをつくることが必要です。
今回まで作業者について考えてみました。次回からは、管理者や経営層について考えます。
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◆根本隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など