需要拡大 ホームドア市場

JR東日本 首都圏330駅に導入計画
私鉄各社 設備投資の優先事項に

設置が進むホームドア

日本の鉄道は、運行時刻の正確さはもちろんのこと、駅構内の利便性や娯楽性、清潔さも含めて、世界一と高く評価されている。さらに近年はバリアフリーや安全強化の取り組みが進んでいる。なかでもホームドアの設置はJR・私鉄ともに設備投資の目玉となっており、1日10万人以上の昇降客がある主要駅で設置が行われている。

設置ブームは一過性のものでなく、ここ数年は続く有望市場だ。

 

鉄道各社の設備投資状況

JR東日本の18年度の設備投資額は6450億円(連結)。安全設備の拡充に力を入れ、ホームドア設置をはじめ、大規模地震対策、踏切事故防止、車内防犯カメラ、線路の監視カメラなどへの投資を行っている。JR東海は東海道新幹線の強靭化と快適性に向けた投資など。

主要私鉄の設備投資は、駅のバリアフリー化やホームドア設置を含めたサービス改善工事の割合が年々増加している。日本民営鉄道協会によると、17年度の大手私鉄16社(東武・西武・京成・京王・小田急・東急・京急・東京メトロ・相鉄・名鉄・近鉄・南海・京阪・阪急・阪神・西鉄)の総設備投資額は4568億円。このうち「サービス改善工事」が1540億円(32.9%)だったが、18年度になると、設備投資総額5069億円のうち「サービス改善工事」は1860億円(36.7%)と増額。

駅施設のリニューアル、エスカレータ、エレベータ設置を含めたバリアフリー化、運行情報案内表示器の整備など、安全性や駅利用の利便性向上に投資の舵を切り、電気制御業界に関連が深い分野での設備投資が増えている。

 

設置数と各社の計画

国土交通省によると、17年度末時点のホームドア設置駅は725駅。前年から約40駅増加し、着実に導入が進んでいる。

JR東日本は、32年度末をメドに東京圏在来線の主要路線のすべての駅330駅にホームドアを設置すべく進めている。18年3月時点での設置済み駅は山手線と京浜東北線の主要32駅。20年度第1四半期までにさらに30駅の整備を目指している。25年度末までには京浜東北線、根岸線、常磐緩行線、中央・総武緩行線(中野・西船橋間)、中央快速線(東京・立川間)、青梅線(立川・拝島間)、横浜線(東神奈川・橋本間)、南武線、埼京・川越線(池袋・川越間)の120駅に設置するとしている。

JR東海では、新幹線では新大阪駅の20~26番線への設置、在来線で金山駅で仕様検討を開始している。JR西日本は22年度までに山陽新幹線、大阪環状線、JR京都線、JR神戸線など35駅への設置を進めている。

 

主要私鉄では、東急は安全対策として18年度に310億円の設備投資を行い、ホームドアは東横線と田園都市線、大井町線全64駅の整備を進めており、19年度までに完了させる計画。

小田急は、22年度までに16駅への設置を予定。下北沢や代々木上原など新宿近郊からはじめ、登戸や新百合ヶ丘、町田、相模大野、海老名、本厚木、大和など主要駅を中心に行う計画となっている。京王は新線新宿駅、渋谷駅で設置完了するほか、飛田給、下北沢、明大前で進めていく。

京成は日暮里駅、空港第2ビル駅へのホームドア設置を計画している。西武鉄道は20年度をメドに1日乗降人員10万人以上の駅への設置を進める。対象は池袋、練馬、西武新宿駅、高田馬場、所沢、国分寺としている。

東武は、20年度末までに押上、北千住、新越谷、池袋、志木、川越と、東京オリンピック・パラリンピックの競技会場最寄りの北越谷と朝霞への整備を予定している、21年度以降は北千住と北越谷間、池袋から志木間など23駅に整備する予定。

名鉄は名古屋本線金山駅でホームドア設置を検討。

 

▼ホームドア設置駅数の推移

出典:国土交通省

 

課題解消へ新型開発

1駅(上下2線分)あたり数億円から十数億円と言われ、その価格と重量、施工の難しさが普及の課題とされている。また相互乗り入れの増加により車両の停止位置とドアの位置が異なるケースが多く、それもホームドア導入のハードルとされる。そのため、それらを解消するための新型ホームドアが各社から開発されている。

ドア部分がロープやバーとなっており、それが上下に移動することで開閉を制御するタイプや、停止する車両のドア位置に合わせて戸袋とドアユニットが動いて調整する可変型タイプ、戸袋サイズを最小限としドアの開閉動作の大きさで車両の違いを吸収するマルチタイプなど。これら新型のホームドアでは、居残り検知や挟み込み、近接防止に対して光電センサや3Dセンサ等が搭載されている。またモータのトルク検知もセーフティ機能として採用されている。

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