研究開発・製品設計・情報技術…
攻めの営業でニーズを把握
オートメーションと言えば、自動制御技術を用いて自動化することである。一般的に人が操作しなくても、機械が自動的に動いて作業することを指して言う。
工場の機械や生産工程が高度で複雑でなかった時代には、オートメーションという言葉が頻繁に使われた。当初は工場内で使われる設備の自動化をオートメーションと言っていた。
経済が発展し社会が豊かになると、オフィスの自動化や住居の自動化が進められた。それぞれオフィスオートメーション、ホームオートメーションと言う語句が使われだしたために、工場の生産設備の自動化はファクトリーオートメーションと言われるようになった。ファクトリーオートメーションを通称FAと言って以降、オートメーションとは言わず、FAと言うのが定着した。それ以後、いわゆるオートメーション関係を取り扱う営業では、FA市場と、それ以外のオートメーション市場をノンFA市場と言っていたが、現在はFAという言葉だけが残っている。
オートメーションという表現がまだ新鮮であった頃に、営業マンはオートメーションは入力・制御・出力の三部から成り立つと教えられていた。だから入力部の商品の商談が発生しても、コントロール部はどうするのか、どうなっているのかを自然に質問していたし、制御部の商品が売れれば入力は何か、出力はどんな負荷をつなぐのかなどと気軽に聞いていた。常に聞くということを通して、自然に顧客が使う機械や機器を知り、顧客の製造工程や生産現場の理解を深めていた。
現在の営業でも、案件が発生し商談が進んでいくその過程で、顧客の製品や装置、製造工程などを理解する機会はあるのだが、顧客の質問に答えて課題を解決することを第一とするあまり、営業は守りの営業になってしまっている。守りがよくできると次の案件も舞い込むから、攻めの営業とも言える。確かに、案件や物件の多かった日本産業の成長期には有効な攻めの営業だった。
現状では新設備や増設備が成長期のように次々と出てくることはない。そのため販売店は、売り上げ拡大を図るために攻めの一手を試みているようだ。その意気込みが、IoTソリューション提案への取り組み、システム提案を扱うソリューション部隊の強化、顧客と協同してこれからの生産ソリューションを目指すなどのスローガンや方針に表れている。
このような意気込みが、顧客の質問に答える側に回ってしまえば、いくらソリューションという響きの良い言葉を使ってもそれは守りの営業なのだ。高度成長が続いたこの業界でも、他業界と同様、低成長になって二十数年たった。拡大しないが安定的に発注してくれる顧客を一つでも逃せば痛い。万全の守りの営業は必須だ。しかし、情報化の進展がようやく製造業のオートメーションにも影響を及ぼし始めたことを販売店は肌で感じ始めたから、ソリューションという言葉を強調して使うようになったはずである。
それなら攻めと守りの違いを理解して攻めの営業に転じなければならない。守りと攻めの違いは、顧客の質問に答えるのか、それとも顧客へ質問をするのかの違いである。
答える側に比重を置くと、どうしても扱う商品の技術的説明や使い方に眼がいってしまう。そうすると商品中心の研修に終始してしまいがちだ。
顧客へ質問する側に回る営業はソリューションから離れているように感じられるが、実は顧客の製品構造や役割・製造現場・技術動向などを把握できる。営業マンは多くの顧客に会える。顧客とは、研究開発・製品設計・情報技術や管理技術の各人である。この顧客に攻めの営業をすれば、販売店が本当に望んでいるソリューション営業に大きく近づくことになるのである。