品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか-(その2)
中国工場の問題点を生産の3要素で捉える②
重要な役割を担う「科長」
今回は、管理者の中の科長について見ていきます。
科長
作業者から班長・組長を経て科長になる人もいますが、多くは既に他社で管理職を経験した人や大学卒の新人を将来の候補として採用している企業が多いようです。
現場の科長には、班長・組長とはまた違った多くの重要な役割があります。現場の日常管理を任せることになるわけで、日々の生産が問題なく行われること、何か問題や異常が発生したときの対処など生産品の品質確保という重要な役目を持っています。
生産品の品質確保と言う面では、継続的な改善を進める担い手としての役割もあります。生産や工程の問題点は、常に現場にいるスタッフ、現場のことをよく理解しているスタッフが一番よくわかっているはずです。これらスタッフに改善を進める意識や力がないと改善はできません。
現場の管理の他にも作業者や班長への教育係としての役割も担ってもらいます。人に教えるためには、まず自分自身が理解していることが必要です。
現場の科長にこれら役割を担ってもらうことが工場のレベルアップにつながりますし、そうした科長の中から優秀な人がさらに上のポジションに就くことが現地化につながっていきます。
新卒で入社した管理職候補がすぐに戦力になるのは難しいでしょう。ですが、戦力になるまで会社にいてもらわなくてはなりませんし、一人前の管理者になった後にこそ定着させる必要があります。筆者がいろいろな工場を見てきた経験では、管理者の定着率がよくない工場で、管理レベルが高いということはありませんでした。
では、管理者を定着させるのに必要なことは何でしょうか?
給料でしょうか。残念ながら違います。もちろん給料もある程度の水準は必要です。必要なことは、会社にいることが自分にとってプラスになると思わせることです。
大学を出た中国の人たちは、自分の将来を考えています。「この会社にいると何を身に付けることができるか」「自分はこの会社で将来どのポジションまでいけるのか」を考えています。
ですので、どんなスキルを身に付けることができるのかを示すこと、そして彼ら彼女らにスキルを身に付けさせる仕組みを作っておくことが必要です。また、優秀であれば幹部として登用される可能性があることを実際に示して見せることが大事です。
この会社にいても何も身に付かない、これ以上の出世も望めないとなれば、他の会社を探し始めることになります。
この管理者(科長、班長・組長)の定着は、工場管理や品質確保のために作業者以上に重要なポイントです。
次回は、経営層について見ていきます。
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◆根本隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など。