産業用ロボットを巡る 光と影(17)

先端技術を交換し合う企業たち!
企業同士で先端の生産効率化を共有

中小企業の情報交換会

先日、とある工場にて中小企業が複数集まり、情報交換会が行われました。参加された会社は、弊社のソフトを使用して、ロボットでの生産効率アップに成功されているお客さまです。

「ものづくりの企業は他社に工場を見せたくないのでは?」と思われるかもしれませんが、弊社のお客さまから「他の会社がどのように効率化アップをしているか見てみたい。情報を出しても良いのでマッチングしてくれないか?」というご要望が複数寄せられたので、弊社が今回の情報交換会のマッチングをいたしました。結果、参加された企業さまから「とても勉強になった。またやってほしい」という好評をいただいたので、会社名や細かいノウハウは言えませんが、どのような効率化に成功されたか記載します。

一品一様の製品をプラズマ切断

1社目は、一品一様の金属製品をロボットでプラズマ切断し、加工している事を発表されました。

通常、一品一様の加工は人が行うのに、なぜロボットかと言うと、理由は加工製品の「品質アップ」とのことです。

ロボットではなく人が金属の加工を行うと、どうしても加工する人の能力が品質に反映されてしまいます。それにより、納品先からの「切断の質をもう少し均一にできないか?」とのクレームを受け、それに応えられないと信用問題になります。さらに、検収NGになってしまうと、その材料費と加工費は会社の損失になり、積み重なると相当な損失になるとの事です。よって、どうしてもロボットで加工を行いたかった、という訳です。

とはいえ通常は、一品一様の金属加工をロボットで行う会社を、見かける事はありません。なぜなら、通常の方法でロボットのティーチングを行うと多くの工数がかかるので、ロボットを使わずに人が加工する方が比べられないほど早いからです。その証拠に「一品一様の加工をロボットでできるか?」とどのロボットメーカーの方に聞いても、「100%不可能です!」と即答されてしまいます。

この会社も、一品一様のティーチング工数の問題があり、長年悩んでおられたそうです。その間、さまざまなティーチングのソフトを試しましたが、工数削減が望めず、購入しませんでした。また、この会社はプログラミングもできるので自作でソフトの作成を試みましたが、望む機能を持ったソフトは作れませんでした。そのような中、富士ロボットのソフトに出会い、一気に状況が一変したとの事でした。

このお客さまの発表は、誤差がほとんど許されない「切断」という用途、しかもロボットでの効率化が不可能と言われてきた「一品一様」での成功例なので、他社の方々も非常に勉強になったそうです。また、弊社にとっても、ロボットに精通している会社が、他のさまざまなソフトを試された上で弊社ソフトを重宝していただいている事は、自信にもなりました。

お茶くみしていた女性がロボットのティーチング

2社目は、ロボットを扱うのが初めての女性が、ロボットとポジショナーを連動させてアーク溶接をしている事を発表されました。なぜ、ポジショナーも連動させる必要があるのかと言うと、この会社のワークは板厚が厚いものがあるので、ワークの斜め横から溶接をするとビードが垂れてしいます。溶接を行う金属板を常に上からVの字にして、溶接を行う必要があるのです。

ところが、ロボットとポジショナーを連動させるティーチングは高い技術が要求されます。それを、ソフト上の溶接したいラインをクリックするだけで、ソフトがポジショナーの動きも自動で考えてくれるだけでなく、空間にトーチを逃がす動きも自動で作成できるため、まったくのロボット初めて女性社員が一週間の学習で作業ができるようになったそうです。

実はこの会社、つい1年前までロボットが1台もなく、溶接も熟練の溶接工が手で行っていました。「この人が居ないと作業が進まない」というのは会社にとって大きなリスクだそうです。そのリスクを回避したい、ロボットを購入したらすぐに稼働させたい、というご要望から弊社が手助けをさせて頂きました。

優秀な人材確保の工夫

ロボットの話からは離れてしまいますが、この会社は、「生産管理の方法」や「クリーンな工場」も披露してくださいました。生産状況を紙で管理する事を辞めてソフトに切り替えるのは、どの企業も苦労しますが、この会社は自作のソフトとさまざまな工夫で成功しています。それにより、遅れなどの問題に対してすぐに対応できる効率化ができています。

また、ものづくりの工場は汚い工場が当たり前というのが多い中、ここの工場は冷暖房も完備されているだけでなく深呼吸をしたいくらい非常にきれいな工場です。これは、良い人材が辞めるリスクを防ぐだけでなく、新しい人材を確保するにも重要との事です。

このお客さまの発表は、ロボットが初めてにも関わらず、生産効率アップだけでなくさまざまなリスクを回避するという成功例なので、他社の方々も非常に勉強になった事は申すまでもありません。

今までとは違う方法で良い情報の取得を!

ほとんどの会社は、「展示会」「商社」「ネット」などから情報を得ていますが、それでは「在り来たり」の情報しか得られません。他の会社と腹を割って情報交換をするのも、計算外の大きな利益を生むと思いますので、一歩外に出て冒険されるのも面白いと思います。

◆山下夏樹
やましたなつき。1973年生まれ。富士ロボット株式会社(http://www.fuji-robot.com)代表取締役。産業用ロボットコンサルタント。サーボモータ6つを使って1からロボットを作成した経歴を持つ。自社のオフラインティーチングソフトでさまざまな現場で産業用ロボットのティーチング工数を10分の1にするなど、生産効率UPを実現してきた。さまざまな現場での問題解決の方法を知る、産業用ロボットの導入のプロ。コンサルタントは「とりあえず無償相談から」の窓口を設けている。

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