人材不足、投資余力の解決を
日本の製造業におけるIoT活用は着実に進んでいる。取り組みのレベル感はさまざまだが、中小企業から大企業までIoT技術の活用はこれからの経営に必須であり、時代の流れであることは共通認識として定着していることが、日本能率コンサルティングの調査から分かった。あとは実行レベルにどれだけ速く移行できるかが課題となる。
JMACが実態調査 246社が回答
日本能率協会コンサルティング(東京都港区、JMAC)は、4回目となる「ものづくりIoT実態調査」の報告書をまとめた。
製造業メーカー1万2025件に対し、製造業におけるIoTの具体的な取り組み実態に関するWebアンケートを行い、246社から回答を得た。
回答した企業のうちBtoBが82%で、製造形態は加工組立中心が54%、プロセス中心が36%。業種は製造業全般だが、多かったのは電気機器(19%)と機械(17%)、輸送用機器(11.8%)、化学(11%)など。年間売上規模は1兆円以上の超大企業が19%、1000億円以上の大企業が26%、100億円以上の中堅企業が40%、100億円未満の中小企業が13%だった。
現場の課題解決を中心にIoTは着実に進行中
同社ではIoTの活用度合いを、現場改善や業務改善のレベルを「①課題解決」、工場全体の最適化やサプライチェーン改革まで行っているレベルを「②最適化」、事業創造や事業戦略など新しいビジネスにつなげているものを「③価値創造」と区分。
それに基づいてIoTの取り組み状況を聞いたところ、①課題解決の取り組みの実行中と計画中の合計が64%に達し、②最適化の41%、価値創造の22%に比べて突出して高かった。
3年間の動向で見ると、②最適化と③価値創造の合計値はほぼ横ばいか微増だが、①の課題解決だけは16年43%、17年55%、18年64%と10%近い伸びで増加しており、多くの企業が現場での課題解決に焦点を当てている。
企業規模別では、1000億円以上の大企業では実行中・計画中が80%に到達。100億円以上の中堅企業は16年の27%から倍増の55%となった。100億円以下の中小企業は16年の33%からほぼ横ばいの34%にとどまり、この原因について同社は、中小企業は検討人材が不足しており、推進組織もなく、検討手段が分からず、加えて開発投資余力もないことを挙げている。
データ取得は製造設備 AIへの関心が急拡大
課題解決のためのIoTに取り組んでいる企業に対し、どこから情報を取得しようとしているか聞いたところ、「製造設備」からのデータ取得が80%と圧倒的。何を解決しようとしているかについては、「設備や人の稼働率改善」が73%、「作業の効率改善」が69%、「品質改善」と「不良トラブルの原因追究」が53%となり、稼働率と効率、品質面を重視している。
またIoT活用で導入している、検討している技術に関しては「各種センシング技術」61%、「ロボット活用」53%、「3Dプリンター」40%が高い。最近話題のAIに関しては17年の33%から18年は62%と急増し、関心の高さがうかがえる。