今まで人類の歴史上、何度もあった技術による産業の革命。古代中国では、紙、印刷、方位磁針、火薬という四大発明が生まれ、後世の社会形成に大きな影響を与えた。
青銅器全盛の時代にヒッタイト人によって発明された鉄器は、西アジア征服の原動力となった。ほかにも発明が社会を変えた例は古代から中世、近世にかけて山ほどある。
近代以降、革新的な技術によって引き起こされた革命は「産業革命」という名称が付けられ、私たちはこれまでに3回経験した。蒸気機関、電気、コンピュータ。そして今4回目の真っただ中にある。
技術によって確かに社会は変わってきた。しかし、それを開発し、使い、変わったのは「人」であったことを見失ってはいけない。いつの時代も人が主役であり、今後も主役であり続ける。
どんなに新しく高度な技術でも、人を不幸せにするものであれば使わない。使うにしても制限や監視など管理、責任を明確にして初めて使うことが許される。生み出した側の視点や主張だけでなく、使う側、影響を受ける周囲の人々の意見も聞き、妥協点を見い出さなければ、人にとって有益な技術、変革にはつながらない。
古代から何度も繰り返されてきた産業の革命は、社会を進化させて多くの人を幸せにしたが、その一方で多くの人を犠牲にしてきた。社会が成熟し、人を尊重する社会になった今、第4次産業革命のあり方自体も変わらなければならない。
ハノーバーメッセ2019のジャパンパビリオンに、今回初めて金属労協という労働組合が参加することとなった。産官学に「民」が加わり、第4次産業革命、コネクテッドインダストリーズの本当の実現に向けて、不足していたピースが一つ埋まった。これはとても画期的なことであり、喜ばしいことだ。
さらに彼ら自身も、変化する時代に自分たちも変わらなければならないし、現場の立場からの意見を入れていきたいと意気込んでいる。これまでの第4次産業革命は産官学から見た技術や論理の上で進んできた。
今度は別の視点が入ることにより、新たな発見やより深い議論になることが予測される。人に優しい技術革新と産業革命、それが生まれ、浸透することに期待したい。