物流 自立的な搬送システム実現へ
ロボット 働き方改革、人手不足で
FAセンサの市場は、需要を牽引してきた半導体製造装置、工作機械の受注が一服する中で、物流やロボット、さらには、自動運転などインフラ分野での需要拡大への期待が高まっている。
IoT化の新たな流れのなかでFAセンサは「つなぐ」ための中核製品としての役割がますます高まり、使いやすさをめざした開発も依然活発だ。
3品分野も安定推移
日本電気制御機器工業会(NECA)の2017年度(17年4月~18年3月)の検出用スイッチ出荷額は1215億円で、16年度比111.8%と2桁の伸長となった。18年度も上期は618億円で前年同期比101.1%の微増となっている。国内が359億円で104.9%であるのに対し、輸出は259億円で99.3%と国内市場が堅調で推移している。
下期以降、半導体製造、工作機械の受注に陰りが見られ始めたことから、FAセンサへの影響が懸念されている。ただ、産業界全体に人手不足、賃金の上昇などが顕著なことから、センサを活用した自動化・省力化への意欲は増しつつある。
FAセンサを取り巻く市場は、ロボットをはじめ、半導体製造関連、工作機械、自動車関連、インフラ関連で旺盛な需要となっている。
FAセンサの大きな市場である半導体・FPD製造装置は、日本半導体製造装置協会(SEAJ)の出荷統計では、17年度は2兆5352億円であったが、18年度は前年度11.1%増の2兆2696円が見込まれており、2兆円市場が継続する。
19年度は0.5%増の2兆2810億円と微増を見込んでいるが、スマホ市場や自動運転、IoTの動向に対する見方は強弱があり、今年後半以降への期待感が広がっている。
過去最高の受注額を更新してきた工作機械も、18年は前年比110.3%の1兆8158億円と過去最高になったが、18年後半は前年割れが続いており、最近は内需も前年割れになるなど、停滞している。19年の受注は1兆6000億円と一服するものと予想されている。
人手不足や働き方改革、人件費の上昇、製品の高精度化などからロボットの市場も拡大している。18年の受注額は前年比7%増の1兆100億円と初めて1兆円を突破し、19年も続伸して同4%増の1兆500億円が見込まれている。
ロボットの需要は他の機器と違い、システムインテグレータ(SI)の対応力により制約される側面も大きい。ロボット導入にはSIによるコンサルティングが必要で、SIの不足によって計画通りに採用が進んでいないことも多く、需要とのギャップを生じさせている。協働ロボットなど、人と同じ場所で共同作業できるロボットの開発も著しく、また、食品製造など従来はロボットが活用されていなかった分野でも採用が進むなど、用途が拡大している。
海外の新興国でも賃金の上昇からロボットを採用する機運が年々高まっており、まだまだ市場拡大が見込める。同時にロボットはある意味でセンサの集合体的な側面も強く、FAセンサ市場拡大の大きなカギを握っている。
FAセンサの安定した市場となっているのが、食品・医薬品・化粧品の3品業界である。製造ラインにおける各種認識・識別、不良品検知などの用途で、重要性を増しており、「安全」「安心」といったキーワードに即している。製品トレーサビリティ用途に加え、このところは人手不足などに対応して、ロボットを活用に向けた投資も積極的に行われていることから、今後もさらに期待市場として注目されそうだ。
そして、いま最も注目されているのは、物流関連業界でのセンサ需要である。AGV(無人搬送車)をはじめ、仕分け作業も含めた自律的な搬送システム実現に向けた取り組みが進んでいる。AGVでは、搬送軌道をフレキシブル化した自動走行でのインテリジェントセンサの技術開発が著しい。2Dや3Dのレーザセンサ技術の応用をしながら、搬送、追跡や障害物を検知して実現している。
今後はAI技術を活用して搬送履歴に基づいた最適な搬送経路策定や、搬送と作業を同時処理できるような開発も志向されている。
「光」応用センサ伸長
FAセンサの中でも市場の大きい光電センサは、LEDや半導体レーザを光源にした非接触センサとして、主にワーク(製品・部品)の有無確認のために用いられている。
検出方式は透過型、回帰反射型、拡散反射型などがあり、年々性能が向上している。長距離検出には透過型が最適である。回帰反射型は、透過型で必要だった投光部と受光部の配線が不要で、その代わりにセンサの対向側に反射板を配置し、配線工数や設置工数を半減できる。
特に反射型の性能向上、コストダウンが最近顕著で、従来苦手であったワークの色変化や傾きに強いタイプや、水や油などの環境に強いタイプなども存在感を増してきている。
そのほか、超小型ヘッドで取り付けスペースが小さいアンプ分離型、非FA分野で多く使われる、AC電源で使用でき取り扱いが容易な電源内蔵型、取り付け場所を選ばず微小物体も検出できる光ファイバー式などがある。
特に光ファイバー式は、先端のファイバー部のラインアップが多彩で、取り付けや用途に合わせて選定がしやすくニーズが高く、数百種もラインアップをそろえているところもあり、あらゆる用途に用いられる。アンプ部も数値管理できるタイプが主流になってきており、パワーや精度、コストといった基本性能もさることながら、制御機器との通信機能、他センサとの互換性など各社さまざまな機能で差別化を図っている。
半導体や液晶製造装置では、微小物体検出用として、高精度、ローコスト、取り扱いやすいことから光電センサの需要が多く、大きな市場を形成している。最近は、小型化と長距離検出、高い保護特性など進化し、検出距離50メートル、保護特性IP69Kなどの製品も伸長している。特に耐環境性が高い製品は、従来接触式センサが用いられてきた工作機械などの分野でも採用が進み、装置設計の自由度を高めることに貢献している。
食品機械などの光沢検出、包装機械などでのマーク検出の分野では、従来色判別用光電センサが主力であったが、画像センサのローコスト化により、求められる速度や、検出内容により使い分けられるケースが増えている。カメラ、照明、カラーモニタを一体化したローエンドセンサの導入も増加傾向である。
同センサは、色面積や印字有無判別、シール有無判別、シール異種混入判別、文字認識などが容易に行える。3品業界では、このようにユーザーのニーズに合わせた用途限定センサや提案解決型センサなど専用センサの需要が高まっており、余分な機能を省くことでローコスト化が図られている。
用途別に使い分け進展
光電センサは、オートチューニング機能など使いやすさを追求した機能が一般化している。また、多点制御や差動検出など入光量をアナログ的に制御できるアナログ出力の光ファイバー式光電スイッチもある。
最近では通信機能も備え、PLCと通信して、設定値を集中管理できるタイプも普及してきている。自動感度補正機能も各社搭載しており、ファイバー先端に汚れによる光量低減が生じても自動的に感度を補正するだけでなく、先端部の清掃を行った後も自動で元の感度に復帰するもので、再ティーチングの必要がない。また、光源に用いられているLEDの経年劣化による光量低下にも追従するタイプもある。
さまざまな対象物のインライン形状計測を実現した2次元形状計測センサは、帯状に広げたレーザ光を対象物に照射し、その反射光をCCDで撮像し、断面形状を計測する非接触型センサで、撮像情報から形状のプロファイルを生成し、対象物の断面形状(2次元形状)から、高さ・段差・幅・位置・交点・傾きなどの寸法形状を瞬時に計測。
光電センサ技術を発展させた透過型デジタルセンサとしては変位センサも注目されている。帯状レーザ光で測定幅10ミリを繰り返し精度1mの精度で測定ができる。サイズも小型のため、取り付けスペースの制約も少ない。
近接センサは、耐環境性に優れて、高温・多湿、水中などで使用できるという、他のセンサにはない大きな特徴がある。直径が3ミリの超小型タイプや、オールメタルタイプなどラインアップも増え、金属体、非金属体の混流ラインでも使用できる。検出距離は、数ミリ~数十ミリが一般的だが、最近は長距離タイプも発売されている。
安全対策用センサもマットスイッチ、ライトカーテンなど、接触式、非接触式など多様で用途に応じ使い分けされている。中でもセーフティレーザスキャナは、ソフトウエアで危険領域を限定でき、ロボットが使用されている工程や、無人搬送車などにも搭載されている。セーフティライトカーテンも、設計や取り付け・調整などの手間を省く改良がされ使いやすさが増している。光を用いた同期をすることで、省配線を実現、複数のセンサを使用しても干渉しない工夫がされているタイプもある。従来は誤作動による原因追求に工数がかかっていたが、LED表示や通信により、状況を知らせる機能も各社強化しており、導入後の工数も削減できる。
レベルセンサは、液面や粉体面が設定レベルになった時に信号を出力するセンサ。一般的なタンクや容器内の内容物のレベルを検出する用途が多いが、河川や湖沼の水位・水量測定、下水や排水の液面測定などにも利用されている。
最近では、災害防止の観点から設備を強化する取り組みが行われており、無線通信機能を持たせて遠隔地のデータを伝送できるタイプや、光ファイバーを用いた通信を採用し、強いノイズ環境でも使用できる製品も現れている。
さらに、自動車や二輪車などのエンジン周りや、外食産業の厨房にも採用されており、新規市場への浸透が進んでいる。レベルセンサに温度センサを内蔵し一体化することで、スペースの削減とトータルコストの低減も図られている。
超音波センサは、比較的超距離・広範囲の検出ができるのが特徴であるが、近距離での特性も向上している。また、超音波センサを複数同時使用時の音波のクロストーク対策として、自動同期機能を内蔵した製品も発売され、信頼性も高まっている。
ロボットの用途開拓が進むなかで、測域(レンジ)センサのアプリケーションも拡大している。測域センサは、周囲の障害物などの状況を把握する。レーザ光線で対象物までの距離を測定し、270度の視野に対して自分を中心に平面地図のような測域情報を得ることができる。
長距離で高感度の検出が可能なため、最近では立体駐車場や、トンネル前での車両の高さ検出など、屋外や交通分野、さらに安全分野を中心に用途が拡大している。この領域では、画像データと組み合わせて精度を向上させる取り組みもなされており、活用の場が広がっている。
ロータリエンコーダーは、検出方式で光学式と磁気式に分かれ、光学式はノイズなどに強く、磁気式は油・水など耐環境性に強い。回転角度をアブソリュートコードで出力し、絶対位置を直接検出できるアブソリュートタイプと、パルス数をカウントして絶対位置を算出するインクリメンタル式がある。
最近は小型・薄型と高分解能化が著しく、防爆タイプ、機械安全にも使えるタイプも開発されている。用途も、無人搬送車やウエア検出、食品製造など広がっている。特にロボット向けは大きな需要で、今後も使用個数が増えそうだ。
今後、加速度センサがロボット制御などで利用が広がりそうだ。また、自動車向けで市場が見込まれており、ADAS(自動運転)関連やEV(電気自動車)関連での用途が出てくる。
対応増加のIO-Link
センサの周辺を支える機器も充実してきている。コネクタ、配線システムなどは接続性やインテリジェント化が進んでおり、センサの機能をさらに引き出す役割を果たしている。そのひとつとして注目されているのが、センサデータの活用領域を広げるIO-Linkだ。
ⅠO-Linkは拡張性に優れた通信で、いままで利用できなかったセンサ内部の情報をユーザーがアクセスでき、しかもリアルタイムでクラウドベースでも利用できることで、最適制御、予知保全などへ大きく利用領域が広がる。
センサのON-OFF情報だけでなく、状態管理、緊急判断といった場面でのAIと連携した活用も進む。IO-Link対応のセンサは各社から対応製品が発売されている。今後もセンサがものづくりを大きく左右するキーパーツとしての重要性をますます増しそうだ。