【インタビュー】リネオ 小林代表取締役に聞く「Linuxでエッジコンピューティングを加速」

リネオソリューションズ 小林明 代表取締役

「近い将来、コンピュータという言葉はなくなり、コンピューティングという言葉だけになる」と、マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの創設者であるニコラス・ネグロポンテはかつて語った。

そして今、IoTやエッジコンピューティングというトレンドが象徴するようにこの「予言」は現実となりつつある。センサーから大型機器まで、多種多様な機器間で膨大な情報が飛び交う時代を目前に、これらの機器の基本部分となるオペレーションシステムとしてLinuxの採用が進んでいる。

小林代表取締役に聞いた。

 

1991年、当時フィンランド大学の学生だったリーナス・トーバルズがインターネット上にはじめて公開したLinuxカーネルのソースコードの行数は約1万。それが現在は2100万行を超えるシステムへと成長しました。当初デスクトップ用のOSであったLinuxが、サーバーさらにはメインフレームに、家電、業務用機器や各種アミューズメント用機器、スマートフォンへと広がり、最近では自動車での利用の実証が進んでいます。

このようなフレキシビリティとスケーラビリティを備えるOSはLinux以外にありません。Linuxシステムは、その核となるLinuxカーネルだけでなくOSS(オープンソースソフトウェア)との組み合わせで使われるため、これまで開発コミュニティがOSSとして蓄積してきた膨大な、そして優秀なソフトウェアを自由に選択して利用できるというメリットがあります。しかしその膨大さに起因する情報の整理、取捨選択の困難さもまた明らかであることから、解決策、対策が必要となっています。

リネオソリューションズは、その前身も含めて35年にわたり組み込みソフトウェア開発に携わってきました。1999年からは組み込みLinuxにフォーカスし、シャープ製PDA Zaurus向けLinuxシステム開発をはじめ製品にLinuxを組み込むために必要とされる製品/ツールや高度なサービスを提供してきた実績があります。また技術提携する米国Timesys社と密接に連係し製品/サービスの開発を進めており、日本国内はもとより海外のお客様にも広く採用いただいています。

 

もっとも関心が高いのがテスト環境とセキュリティ対策

Linuxだからというわけではなく、どのOSを選んでも変わりません。しかしOSSの優秀なソフトウェアを組み合わせることでより柔軟な対応ができます。

継続的なテストを可能にするTAS

製品開発プロセスにおいて「テスト」の重要性は高まっています。一方でテストに使える時間とリソースは限られており、その効率化は喫緊の課題です。ハードウェアは試作を繰り返すこともあり、その動作や性能の確認、評価、さらに並行して別チームで進められるシステムやアプリケーション開発部署との円滑な連携が欠かせません。

実際の開発シーンにおいては、ハードウェア開発とソフトウェア開発が同じ会社内の異なるフロアで、あるいは別の事業拠点で、さらには国を越えて進められるということも起きます。しかし、試作機を複数用意し各拠点に配置することはもはや不可能に近く、開発の進捗に大きな影響を及ぼしかねません。

このような状況を一新するだけでなく、テスト工数の大幅な削減を可能にするTAS(Test Automation Service)は、併せて提供されるハードウェアZombieを中心に構成するBoard Farm Cloudと共に利用いただくサービスです。開発拠点に設置されている試作機にリモートアクセスし、電源ON/OFFをはじめドライバ、パッケージ、パフォーマンス、ストレステストなどハード、ソフトの両面にわたるテストの自動化を実現します。2017年秋の提供開始以来、複数の大手業務機器メーカー様に採用いただいています。

 

SVPNセキュリティ脆弱性&パッチ通知サービス

今年2月20日から総務省とNICTによるプロジェクト「NOTICE」が開始されたように、ソフトウェアのセキュリティへの関心がより高まっています。サーバー、デスクトップ機器、スマートフォンだけに留まらず、様々なデバイスに搭載されているソフトウェアの脆弱性をついた侵入、改竄などが報告されており、今後は脆弱性の対策を施しシステムの信頼性を確保することがさらに重要な課題となります。

SVPN(Security Vulnerability and Patch Notification Service)は、製品にLinuxを搭載する際、その脆弱性に関するレポートをCVEから「製品に関係する項目」を選択した上で開発者に通知するサービスです。CVEには様々なOSやアプリケーションの多岐にわたる脆弱性データが蓄積されていますが、その膨大な情報を常時トレースし、見つけた情報からその深刻度を評価するのに要する時間を削減するだけでなく、脆弱性を解消するパッチ情報も通知してくれるので、開発者はこれらの情報を総合し独自の判断で対策ができます。

※CVE (Common Vulnerabilities and ExpOSures) さまざまなソフトウェアのセキュリティ上の問題点 (脆弱性) を一意に識別するための共通のしくみで、情報はデータベース化されている。

 

FA・産業機器でのLinux採用も

以前のLinuxではクリアできなかったリアルタイム性も著しく向上しています。最近のCPU・SoCは複数コアを持つことも多く、それぞれのコアで複数のLinuxを同時に動作、あるいはこれまで使われていたRTOSをLinuxと並行して動作させ、相互に通信をさせることも可能になっています。

さらに従来では得られなかったユーザーエクスペリエンスを実現できるようになりました。FAや製造機器でLinuxをお使いいただくためのソリューションもリネオは用意しています。

 

「組込みシステム開発技術展 春(ESEC)」出展

リネオは4月10日(水)から東京ビッグサイトで開催される「第22回 組込みシステム開発技術展 春(ESEC)」に出展し、TAS、SVPNの他にLinux/Androidシステムを電源OFFから高速に起動させる”LINEOWarp!!”、高い関心を集める開発環境Yocto Projectに関するデモ展示を行う予定だ。

参考:リネオソリューションズ
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