基礎から学ぶ中国工場管理〜実例で学ぶ管理のポイント〜 (21)

品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか-(その3)
中国工場の問題点を生産の3要素で捉える②

目指す「技術レベル」を明確に

 

設備・機械のオペレーションノウハウの続きです。

②消耗品や摩耗品の管理

消耗品や磨耗品の管理も重要です。特に摩耗品の管理が不十分で不良になったという事例を中国で数多く経験しました。

日本の工場では問題なくできていた摩耗品の管理が、中国工場ではできていませんでした。この管理ノウハウも落とし込まれていないのです。今一度自社工場でのこの管理体制をチェックしてみてください。

 

③メンテナンス管理

機械の可動率を上げる、品質不良を発生させないためには、メンテナンスがとても重要な要素になります。特に最近は日系中国工場でもコストの関係で中国製の設備や機械を導入するケースが多くなっています。

日本製の設備や機械を入れることができれば問題の発生は少ないのですが、中国製機械の信頼性は日本製のそれと比べるとまだまだ劣っていると言わざるを得ません。こうした中国製の機械を使いこなすには、日頃のメンテナンスが余計に重要になります。

ところが、中国工場では、日常点検や定期点検を含むメンテナンスをやっていない、その重要性を理解していないために省略してしまうこともあります。

 

これは中国企業に多く見られますが、日系企業でも起きています。日本人駐在員は日常点検やメンテナンスの重要性を認識していたとしても、実際の作業は中国人が行いますので、日本人はそれがちゃんと行われているかまでチェックしていないし、できないのが実態です。

ある日系中国工場で実際にあった話ですが、油圧機械のオイル定期交換を、会社全体の経費削減を担当していた総務部の中国人経理の指示で実施していないことがわかりました。その総務部の中国人経理は、油圧機械に特に問題が起きていなかったので、コストのかかるオイル交換を見送らせていたのです。日本人駐在員はそんな細かいことまでは見ていないので、その事実に気が付いていませんでした。

メンテナンスは故障を予防するために行うもので、この中国人経理はその意味を理解できていなかったわけです。問題が起きたら何らかの対処をする、これは中国の人でもやりますが、問題を未然に防ぐ未然防止は、中国の人は苦手と言えるでしょう。

 

中国工場にノウハウをどこまで持っていくか?

中国に生産を移管するときに先ず考えなければならないことのひとつが、機械のオペレーションノウハウに限らず、技術的・生産技術的なノウハウをどこまで中国に持っていくかということです。こうしたノウハウは、日本で生産していた時には10年20年かけて培ったもので容易に伝えられるものではないでしょう。

極論してしまうと、日本で育った職人や匠と言われる人たちと同じレベルの中国人を育成するのは、難しいと言わざるを得ません。

 

中国の人にどこまでスキルを身に付けさせるか?

前述のように日本で育った職人や匠のレベルを目指すのか、逆にスキルに頼らない生産方法を取り入れることで、最低限のスキルが身に付けばよいようにするのか。これを決めることが必要です。そのレベルを決めたら、どのようにして求めるレベルのスキルを中国工場、中国人スタッフに落とし込んでいくのかを考え、実践していくことになります。ここに会社の技術力・生産技術力が問われているわけです。

こうしたスキルや技術の落し込みをただ漠然と行って思うようにいかず、品質を落としている日系工場は少なくありません。

 

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◆根本隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など。

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