総合電機メーカーが産業用ロボット事業の強化に向けて、海外のロボット関連企業との提携を意欲的に進めている。
背景には製造業をはじめとした熟練社員の減少や人手不足などが顕著になってきていることがあり、早期にロボットを活用した自動化を進める点からも、すぐに効果が見込める提携戦略を強化する方向を強めている。
生産技術に強み 専業と差別化
日立製作所は、米のロボットSI(システムインテグレーション)、JRオートメーション・テクノロジーズ社を約1582億円で2019年中に買収する。
JRオートメーションは1980年創業で、売上高は約670億円。北米を中心にロボットを活用した組み立て・溶接などの生産全体の設計・構築・調整などに強みを有し、自動車、航空機、eコマース(ピッキング・パレタイジング)、医療機器など、幅広い業界で実績がある。
日立は、JRオートメーションの高度なロボットSI技術・ノウハウ・リソースと北米を中心とした顧客基盤を活かしながら、日立のIT・AI技術と融合していく。
三菱電機は、米のスタートアップ企業、リアルタイム・ロボティックス(RTR)社に出資する。
RTRは、ロボット周辺の作業環境をセンサーで認識した3Dモデルから、リアルタイムに動作経路上の障害物を回避するモーションプランニング技術を得意としている。
これに三菱の産業用ロボットが有するビジョンセンサー、力覚センサーとAI技術「Maisart」を融合することで、産業用ロボットの作業環境変化のリアルタイム認識を目指す。特に、障害物の高速、かつ滑らかな回避は、産業用ロボットの安全性と生産性の両立につながる。
人手不足と働き方改革などへの対応からロボットの活用が各方面で進んでいるが、ロボットだけを導入しても効果が薄く、ロボットSIの果たす役割が大きい。総合電機メーカーは、自社製品としてのコンポーネンツ技術と生産技術を有していることから、ロボット専業メーカー以上に生産ライン構築に精通している。
今までの人の作業を前提とした生産ラインから、ロボットの活用・自動化を前提とした生産ライン構築に進めるうえで、生産現場と経営をシームレスに連携できるノウハウをどれだけ提供できるかがポイントになってきそうだ。