明治~大正~昭和~平成~令和 工業統計から振り返る、日本製造業の変遷

新年号とともに…本格的デジタル時代へ

2019年4月31日をもって30年超続いた「平成」が終わり、5月1日から「令和」が始まった。

いまはちょうど第4次産業革命のスタート地点にあり、日本の製造業は新しい元号の開始とともにデジタル化の本格時代へ加速していく。新しい時代を迎えるにあたり、これまでの日本の製造業の変遷を工業統計から振り返る。

 

今年で100回目の記念統計

経済産業省が毎年行っている工業統計は、国内の工業実態を明らかにし、行政施策のベースとするほか、国全体の産業構造を調査する経済センサス活動調査の経済構造統計を作ることを目的としている。

現在の調査は、全国の4人以上の事業所に対して全数調査で行われ、その結果は事業所数と従業者数、製造品出荷額などが公表されている。

明治42年(1909年)に始まり、平成30年(2018年)までに99回行われた。19年は6月1日時点での調査を行う予定で、令和元年に記念すべき100回目の工業統計となる。

明治42年の工業統計

 

明治42(1909)年
繊維など小規模工場が多数

第1回の工業統計調査は、明治42(1909)年に行われた。明治時代も末期になると、国会の開設や憲法の制定など政治も安定し、日清戦争や日露戦争にも勝利するなど、国としての形と力が整った時期である。産業も殖産興業から戦後賠償金による軽工業の充実、八幡製鉄所の開業による重工業の勃興など、近代的になってきた。

調査では5人以上の職工(生産を担う人)を使う工場の生産額を調査。全体として、工業化は進んできたが、まだ繊維など軽い産業が中心で、小規模工場がたくさんある状況だった。

国内の工場総数は3万2282カ所。産業別では、製糸業や紡績業などを含む「染織」が最も多く、1万4753カ所(45%)。次いで醸造や製茶など「飲食物」が6202カ所(19%)、印刷・製本や紙製品、木材製品、皮革などを含む「雑工場」が5114カ所(15%)、窯業や製紙業、製薬業など「化学」が3485カ所(10%)、船舶・車両や機械、金属製品など「機械及器具」が2526カ所(7%)、電気瓦斯など特別工場が148カ所。

工場で働く人について、合計で85万2160人。生産に携わる職工が80万637人、それ以外の作業に携わる労働人夫が4万1523人。産業別の職工は、染織48万6508人が圧倒的に多く、全職工の57%を占めていた。

 

大正3(1914)年
工場従事者が100万人突破

大正時代は1912年から1926年の15年間。ちょうど今から100年前にあたる。世界的には第1次世界大戦があり、日本は戦場となったヨーロッパに代わる生産拠点として好景気となり、繊維産業など軽工業をはじめ、造船、製鉄等の重工業も発展。これに乗じて庶民から富裕層になる「成金」も多く生まれた。一方で戦後の反動不況による米騒動や、関東大震災(1923年)などもあった時代だ。

大正3年(1914年)の工業統計では、国内の工場総数は3万1717カ所。事業別では「染織」が最も多く、1万3249カ所で全体の41%を占めたが、明治末期からは減少。同様に「飲食物」と「化学」は数を減らした。一方で、「雑工物」は約1000カ所増の6130カ所、「機械及器具」も500カ所増の3134カ所、特別工場も2倍となる291カ所と拡大した。

工場で働く人について、合計で101万7619人。生産に携わる職工が94万8265人、それ以外の作業に携わる労働人夫が6万9354人となり、100万人を突破した。

産業別の職工は、染織56万7587人(明治42年比+8万1079人)、雑工場10万1479人(+2万1706人)、機械器具が9万8619人(+3万4798人)、化学9万3423人(+1万5540人)、特別工場9552人(+5640人)とほとんどの産業で増加。製造業に従事する人が急激に増え、機械など新しい産業の勢いが始まった時期にあたる。

産業分類別職工数(大正3年)

 

昭和20(1945)年
戦災で工場・従事者半減

昭和初期はちょうど第2次産業革命にあたり、軍需産業の隆盛にともなって軽工業から重工業へ、機械や金属産業、化学産業が発達した。しかし敗戦によって産業は大ダメージを受けた。

昭和20(1945)年の工業統計によると、1945年末の工場数は5万8561カ所。3年前の昭和17年には12万6392カ所あったが、その後の戦争激化による空襲、従業員の離散によって多くの工場が閉鎖され、6万7831カ所、53%も減少した。東京は2万1534カ所あったものが5442カ所と4分の1に、大阪も1万5867カ所が5374カ所で3分の1、愛知も1万131カ所が3799カ所と大幅に減った。

事業別では、機械器具が1万3339カ所(22%)とトップ。次いで製材及木製品が8887カ所(15%)、紡績が8775カ所(15%)、食料品が8326カ所(14%)と続く。昭和17年にトップだった紡績が戦時中の企業整備で大幅に減少し、戦争の影響が少なかった製材及木製品が上昇した。

従業員数について、職員数は42万5348人、製造作業に携わる職工は173万587人。それぞれ昭和17年から17万9316人、219万3870人減少した。

事業別では機械器具が59万4494人(34.4%)を筆頭に、紡績28万2280人(16%)、化学20万6490人(11%)、金属19万7075人(11%)となっている。

 

昭和39(1964)年
高度成長期、製造業が拡大

昭和39(1964)年は東京オリンピックが開催された年。1956年の経済白書の「もはや戦後ではない」に代表されるように戦後復興にも区切りがつき、1960年の池田勇人内閣による「所得倍増計画」など、高度経済成長の真っただ中の時代だ。

この頃には、それまでの「工場」だったものが「事業所」に、「職員と職工」だったものが「従業者」に表記が変更されている。事業所は、工場や製作所、製造所、加工所と呼ばれている場所について一区画を占めて製造や加工を行っている場所、従業者は、常用労働者と個人事業主、家族従業者として定義された。

当時の事業所数は、55万4375カ所。従業者数は990万764人。製造品出荷額等は27兆6828億円となった。過去10年の趨勢を見ても、事業所数は1.29倍、従業者数も1.87倍、製造品出荷額等は4.43倍へと大きく拡大した。

産業別では、事業所数は食料品が9万7161カ所、繊維が9万6567カ所、木材木製品が5万2763カ所、金属製品が4万6601カ所、機械が3万2550カ所。従業員数では繊維が133万3311人、食料品が107万3231人、機械が92万4655人、電気機械が89万3189人となった。

 

平成元(1989)年
エレクトロニクス最盛期に

平成元(1989)年の日本はバブル景気の最盛期。この年の12月には日経平均株価が3万8957円の史上最高値を記録するなど、この世の春を謳歌する時代だった。この頃には国内生産工場の海外移転が盛んに行われた。

調査によると、従業者数4人以上の事業所数は42万1757カ所、従業者数は1096万人。従業者数は1000万人超で横ばいだが、事業所数は過去10年で減少が続くなど、この当時でピークに達していた様子。

産業別の事業所数は、金属製品の4万8918カ所を筆頭に、食料品4万4204カ所、一般機械器具4万3659カ所、電気機械器具3万4800カ所と続く。従業員数は最も多かったのが電気機械器具の192万人にはじまり、一般機械器具115万人、食料品108万人、輸送用機械器具91万人となった。

製造品出荷額等は300兆円にせまる298兆8931億円。すべての産業で増加となっており、最も多かったのが電気機械器具の50兆8755億円、輸送用機械器具42兆1073億円、一般機械器具29兆7687億円、化学工業22兆1468億円、食料品21兆9403億円の順だった。家電をはじめ、エレクトロニクス業界の最盛期で、自動車産業とともに産業の中心を担った。

 

平成18(2018)年
「失われた20年」を超えて新時代へ

バブル崩壊による経済低迷に端を発した「失われた20年」。経済成長率が低迷し、2008年にはリーマンショックが発生し、製造業企業は軒並み苦戦。特に半導体や家電製品はこの時期に競争力を失い、現在に至っている。それでも近年は回復基調にあり、新しい時代へのビジネス転換も進んでいる。

2018年の調査によると、4人以上の従業員がいる事業所は18万7000カ所で、前年よりも4339カ所減少。従業者数は763万5444人で、前年よりも6万4075人の増加。15年から4年連続の増加となった。17年の製造品出荷額は317兆2473億円で、リーマンショック前の335兆円までは届かないが、年々右肩上がりで進んでいる。付加価値額は102兆9012億円となった。

産業別の事業所数は、最も数が多いのは金属製品製造業(構成比13.5%)で、食料品製造業(13.2%)、生産用機械器具製造業(9.8%)、プラスチック製品製造業(6.5%)、繊維工業(6.2%)と続く。東南アジア等へ生産拠点を移してきた繊維工業は減少数・減少率ともに高く、反対に産業用ロボットや半導体製造装置といった世界的にもシェアが高く、世界的な自動化需要を背景に堅調さが目立つ生産用機械器具製造業は事業所数の減少が抑えられている。

 

従業者数は、112万人の食料品製造業(14.8%)、107万人の輸送用機械器具製造業(14.1%)が100万人を超え、生産用機械器具製造業(7.9%)、金属製品製造業(7.8%)、電気機械器具製造業(6.3%)が50万人前後で従業者数が多い産業となっている。前年と比べて増加率が高いのが生産用機械器具製造業の2.8%で、堅調な市場背景を反映している。

製造品出荷額は、輸送用機械器具製造業(21.4%)が最も多い67兆8716億円で、以下は食料品製造業(9.1%)の28兆82339億円、化学工業(9%)の28兆6435億円、生産用機械器具製造業(6.4%)の20兆3686億円、鉄鋼業(同5.5%)の17兆5208億円と続く。これら上位5産業で全体の51.5%を占める。うち生産用機械器具製造業は前年から12.5%、電子部品・デバイス・電子回路製造業が9.3%と大きく伸長した。

付加価値額は、輸送用機械器具製造業(18%)が18兆5535億円、化学工業(11.1%)が11兆4526億円、食料品製造業(9.7%)が9兆9521億円、生産用機械器具製造業(7.4%)が7兆6352億円、と続いた。

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