「つながる・つなげる」情報化の加速
東京オリ・パラ、5G通信 小中学校へのエアコン設置 配線接続機器の需要急拡大
端子台への注目が集まっている。「つながる・つなげる」という情報化が加速する中で、人手不足や人件費上昇という社会的な背も加わり、「省工数化」が進められる要素の大きい端子台にスポットが当たっている。
端子台の市場は、製造業全般の活況に加え、、社会インフラ、ビル・工場、通信・サービス向けを中心にした需要が拡大している。このところ特に顕著なのが、東京オリンピック・パラリンピック開催を間近に控えて進む関連投資だ。オリンピック施設、交通網整備が佳境に入っていることに加え、東名阪を中心とした都市再開発、国土強靭化に向けた投資が継続して行われていることで、設備機器のひとつとしての端子台需要が急拡大している。
また、5G通信に対応した投資にも期待が集まっている。データセンター建設などに加え、通信中継基地局の増設なども進むことが見込まれている。
特需としては、熱中症と災害対策から全国の小中学校の教室・体育館などへのエアコン設置が進められており、幅広い領域に投資効果が及ぶものとみられる。
製造業では、米中の貿易摩擦の影響が景気に影を落としている。スマホ、半導体製造装置、工作機械などの出荷が減少しており、先行きへの警戒感が強まっているものの、一方で人手不足や働き方などから設備投資意欲は高く、ロボットをはじめとした生産自動化に向けた取り組みは意欲的に行われている。
端子台の今後の期待市場として、前述の5Gに加え、自動車のEV(電気自動車)化や自動運転、蓄電池なども今後の端子台市場として期待されている。EVでは電装市場、充電インフラ、自動運転では各種センサ、データセンター向けを中心に見込まれ、さらに蓄電池は自動車だけでなく、再生エネルギーとの一体活用、災害時の自家発電やバックアップ電源としての利用が期待されているが、いずれも端子台やコネクタといった配線接続機器が必須となってくる。
さらに、省エネという観点から、ビル制御のオートメーション化が今後ますます進むことが予想されている。照明、空調、エレベータ・エスカレータなどに加え、セキュリティも含めて省エネ・最適制御・安全・安心といった視点からも需要創出が期待できる。
人手不足、働きかた改革でプッシュイン接続が脚光
端子台はIoT化における機器や設備などを「つなぐ」という大きな役割を果たす点から注目されている。最近の端子台は、配線作業性、接続信頼性に加え、小型・省スペース化、DCの高耐圧化などを大きなポイントに開発が進んでいる。
中でも今一番ホットなのは、配線方式でのスプリング式(ねじレス式)の普及だ。今まで日本では、ねじを使った丸圧着端子台(丸端)が長年使用され、定着している。特に高圧・大電流用途や振動の多い用途ではねじ式が使用され、公共建築の配線規定でも明記されている。
しかし、このところの人手不足は製造から建設、保守の現場まで深刻化している。加えて働きかた改革もあり、作業時間の削減・短縮は喫緊の課題となっている。
従来は、ねじを外して圧着端子を通し、ねじをまた締めるという方法で、手間も時間もかかっているのが実状だ。これに対しねじを使わずに接続するスプリング式は、電線を挿し込み挟んで固定する方法で、いままでのようにねじを開けたり締めたりする必要がなくなり、作業時間が最大60%削減できるというデータもある。
それでもスプリング式は、接続信頼性に不安があるとして、電流容量が大きく、電圧も高い主回路用途では採用が遅れていたが、最近は端子部材料の改良や構造の工夫などで、信頼性が向上してきたことで採用が増えている。
日本配電制御システム工業会(JSIA)は、ねじ式とスプリング式の作業性などについて実機によって検証を行ったが、スプリング式はねじ式に比べ最大で工数が半減する効果が生まれるという結果も出ている。
通信機器用途が先行して普及してきたスプリング式端子台であったが、このところ動力用でも採用が増えている。配線用遮断器やサーキットプロテクタ、電磁開閉器、モータスタータといった機器の電力配線接続用途でプッシュインを採用した製品が日本メーカーを中心に相次いでいる。
配線作業の省力化を図りたいということに加え、振動や衝撃にも強いことから、増し締めが不要という接続信頼性が各方面で確立されたことが大きい。200サイズのCV電線の接続もできるプッシュイン端子台も登場しており、大電流用途での普及が加速しそうだ。
側面接続の新方式も登場
プッシュイン接続で最近発売されたのが側面から配線を接続するタイプだ。従来端子台上部からケーブル配線するのが一般的であったが、端子台上部にスペースが少ない場合、ケーブル挿入スペースが確保できないことも多い。側面接続はケーブルを端子台側面から挿入することで、端子台上部のスペースを気にすることなく配線が可能になる。
この配線方法はネジ接続の丸端配線の方向と同じであり、丸端に馴染んでいるユーザーも違和感なくプッシュイン接続を利用できる。ケーブルダクトまでの配線も曲げることなくまっすぐに導線ができる。
従来、国内向けと輸出向けで端子台を使い分けることが多かったが、国際標準化の流れもありプッシュイン接続に一本化する傾向が強まっている。生産コストの削減や在庫管理上からも効果的といえる。
こうした流れは端子台業界の新たな流れを生み出すきっかけにもなって端子台メーカー間の協業の動きも強まってきている。プッシュイン接続方法は、欧州では約5割、日本では約3割が採用しているとみられているが、省工数、信頼性などの点から今後この比率は急速に高まるものとみられる。ロボットなどを利用した配線自動化が進める上からも、プッシュイン接続の方が容易に行えることも追い風になる。
人手不足が端子台に大きな配線方法の転換を促し、ⅠoTの進展が市場拡大の起爆剤になりつつある。陰に隠れた端子台が主役となる動きが加速している。