先日、プリント基板の設計製造、実装を事業とするキョウデン(長野県箕輪町)にお邪魔した。訪問の事前準備として同社について調べていたら、とてもユニークな歴史を持つ会社であることが分かった。
事業のスタートは1983年、地域の家電販売店から。機械や工具系の販売店や電気工事業からメーカーになるケースはよく聞くが、家電販売店から始まってメーカーになって今も活躍しているという例は非常に珍しい。これだけで興味を引かれるが、その後の歩みもユニークだ。
パソコンメーカーのソーテック、パソコンショップのフリーウェイ、家電量販店のナカヌキヤなどの子会社化(現在は売却済み)や、スーパーマーケットの長崎屋の再建支援を行った後、株式をドン・キホーテに売却していたりと、電気業界の節目のところどころに登場する。
その一方で、経営の柱となるプリント基板事業でもいくつかの事業買収を行って、試作設計から実装、量産へと事業基盤を拡大し、年々売上高を伸ばしている。直近では5G時代の到来を見据え、5G向けの基板設計製造に注力しようとしている。新しい分野に踏み込む、とてもチャレンジングな社風で今後も目が離せない。
すべての人とモノ、企業は過去の積み重ねの上に成り立っている。いまを理解するためには、その歴史を見ることが大切である。現在地だけ見ても理解は深まらない。これが私の持論だ。
人や企業が積み重ねてきた歴史はそれだけで強みになる。先行き不透明と言われる時代、もう一度自社の歴史を振り返り、強みを生かせる分野への集中が重要だ。