汎用性高いソフト開発へ
iPhoneは時代を変えた。プラットフォームとその上で動作する「アプリ」という名のソフトウエアをアプリストアで販売し、ユーザーはハードウエアにアプリを入れて自分なりにカスタムして楽しむ。プラットフォーム提供者とソフトハウス、ユーザーの間に新しいエコシステムを構築し、価値文化を創造した。
産業用IoTの分野でも同様の動きが発生し、IoTプラットフォームを提供する各社がアプリストアをスタート。産業用IoTの普及拡大に向けた新展開、新たな競争と共創がはじまった。
IoTプラットフォームのこれまでの動き
インダストリー4.0によって産業用IoTに注目が集まった当初、どこもかしこもIoTプラットフォームだらけだった。産業機器を製造・販売している各社をはじめ、ITや通信系企業が独自のIoT環境を構築して提供を開始。温湿度や圧力、電流などのセンサを外付けで取り付け、そこで集めたデータを見える化しようと称する、大小さまざまで海千山千のIoTプラットフォームが多数生まれた。
その後、より多くの場所から、精度良く、大量のデータを集めるため、PLCや各種機械や装置から生のデータを取る風潮が強まった。ITとOTの溝とそれをどうクリアするかがポイントとなり、そこで存在感を高めたのが製造現場の知見を持った各社だ。
特にPLCやHMIなど制御機器、工作機械や加工機械、ロボット、さらには直動部品やベアリングなど機械要素部品といったフィールドコンポーネンツ、いわゆるハードウエアメーカーが自社でIoTプラットフォーム、IoTサービスの提供を開始している。
産業IoTプラットフォーマーによるアプリストアの開始
そして今、産業用IoTの次の展開としてはじまったのが「アプリストア」だ。
IoTは課題を解決する、ある業務を効率化するためのツールでしかなく、それぞれのシーンに応じたアプリケーションが求められるようになっている。これまではユーザーの要求に応じてIoTサービス企業が独自に作り込んできたが、それを誰でも簡単に使えるように汎用的なアプリとして開発し、アプリストアで提供されはじめている。
アプリストアは、スマートフォンでいうAppStoreやGoogle Play Storeと同じで、ソフトハウスが作ったアプリをアプリストアに掲載し、ユーザーがそれをダウンロードして使うことができる。
いまあるアプリストアは、シーメンスの「MindsphreStore」、シュナイダーエレクトリックの「Schneider Exchange」、産業用PCのアドバンテックの「WISE-PaaS Store」、配線接続機器のフエニックス・コンタクトの「PLCnextStore」など。
日本でもファナックが「FIELD system Store」としてスタートしている。
とは言え、まだアプリ数は少なく、アプリストアを提供している各社が自身で作ったものがほとんどで、スマートフォンのアプリのように、サードパーティーのソフトハウスがオリジナルのアプリを開発して提供しているのはごく一部となっている。
今後は協力パートナーを増やし、アプリの数と種類を潤沢にすることが求められる。