人手不足→現場力低下→労災増
労働力人口の減少と自動化が普及すれば、現場での事故は少なくなるはずだが、製造業における労働災害は悪化傾向にある。
その原因は現場力の低下にあり、それを補うためには人材育成による安全意識の向上とともに、さまざまな安全技術を現場に導入していくことが重要だ。
増え続ける労働災害
厚生労働省の労働災害発生状況の統計によると、労働基準監督局に提出または同局の調査で判明した2018年の製造業における労働災害の発生件数は、死亡災害が183人(前年比23人増)、休業4日以上の死傷災害が2万7842人(1168人増)といずれも増加し、3年連続で悪化。
また厚生労働省が100人以上の事業所を対象に調査した「2018年労働災害調査」によると、18年の製造業における労働災害の度数率は1.20(0.18ポイント増)、強度率が0.10(0.02ポイント増)、死傷者1人平均労働損失日数が85.7日(5.6日増)となり、全項目で5年続けて悪化している。
原因は現場の人材・設備の変化
事故発生の主な原因は「現場環境の変化」。一言で言えば「現場力の低下」がもたらしている。
人材面では熟練技術者やベテラン社員が現場を離れ、トラブル経験が少ない若手社員の割合が増加。また非正規社員の増加や企業合併による配置転換など、工場内で働く人の属性が変化し、全体的に現場対応力が低下している。またアウトソーシングが進んだことにより新規の協力会社が増えている。
また設備面でも、自動化やシステム化が進み、設備の構造が複雑化して対応が難しくなっている。さらに、設備自体も老朽化し、特にプラント系では設備の腐食による墜落災害といった不可抗力による事故も発生している。
世界的に高まる自動化需要
人手不足の解決に向け、世界的に自動化需要が高まっている。自動化装置には人が立ち入らない、作業範囲に入らないようにするための安全対策や、万が一の際の非常停止や事故災害の軽減のための安全装置が必要となる。また近年は協働ロボットへの関心が高まっており、人と機械の協働という新しい現場のあり方もできつつあり、その需要も伸びている。
実際にそれは数値としても現れており、日本電気制御機器工業会(NECA)の統計でも安全制御機器の需要は年々拡大傾向。リーマンショック前の08年度の出荷額は136億円だったのに対し、10年後の18年度は297億円と倍以上に成長。今後も伸びる見通しだ。
また調査会社Markets and Marketsの25年までの機械安全の世界市場予測レポートによると、安全センサや非常停止装置、セーフティPLC、セーフティリレー、安全スイッチなどの安全コンポーネンツ市場は、17年が41億4000万ドル(約4400億円)で、25年には65億8000万ドル(約7000億円)まで拡大すると見込まれている。