三菱電機 FAシステム事業本部 機器事業部長 古谷友明氏に聞く
インダストリー4.0以前から「工場最適化」追求
三菱電機は、インダストリー4.0、第4次産業革命、製造業のデジタル化が叫ばれる以前からe-F@ctoryによって、つながる工場、データを活用する工場の最適化を進めてきた。
そんな現状の取り組みについて、2019年4月に就任したFAシステム事業本部 古谷友明機器事業部長に話を聞いた。
五輪の電源需要で受配電機器が好調
-FAシステム機器事業の現状は?
受配電機器はオリンピック需要による競技場の仮設電源や、学校のエアコン整備にともなう電源需要があって好調だ。特に盤関係は忙しく動いている。一方、半導体需要の減速感にともなってFA機器が苦戦している。それでも一部の半導体メーカーが動き出してきていることもあり、秋口に向けて回復してくると見ている。
2019年度は厳しいという論調が多いが、ここ2年が絶好調だったため、それと比べて低いという意味であって、19年度の市況は決して悪くない。
お客さまに聞くと、18年10~12月、今年1~3月が最悪で、4~6月に若干上向いて、7~9月に回復するだろうとの想定が多い。中国も10~12月に比べて確実に上向いてきている。米中関係の先行きは不透明だが、そんなに悲観はしていない。
5Gになれば使われる半導体の数が大きく変わってくる。データセンターについても、今は投資が止まっているが、世界中でデータセンターが必要となっていて、半導体の数が足りないと言われている。半導体の製造技術も変わっていて新たな制御方式が必要となっている。いま半導体需要は落ち着いているが、来年に向けて確実に市場は回復し、FA機器も上がってくるだろう。
19年度上期は、FA機器は厳しいが、受配電機器が好調なので前年度並みに落ち着きそうだ。下期にFA機器が復活すれば、過去最高だった昨年を上回ることができるだろう。
-ロボットはいかがですか?
19年下期に、人と一緒の作業スペースで使用できる協働ロボットの発売を考えている。その関係で、安全性を担保しながら障害物を避けるといったような安全制御に優れたソフトウエア会社に出資をした。
日本では業種によって、自動化が進んでいなかったり、人でしかできない作業が多く残っている。人とロボットが一緒に働くことで作業効率を上げることができる。
弊社のロボットは電気電子、半導体関連に強く、自動化が進んでいないと言われる食品、医薬品、化粧品の三品業界はこれから。これらの業界は人手不足が深刻化しており、積極的にアピールしていきたい。
例えば、ホタテの加工場は季節モノで、大量に揚がった時に大量に人を集めて人海戦術で殻をむくのだが、人手が集まらずに困っているという。それをロボット化したいという相談を受けている。地方ではそういう現場が多く、人手不足に関わるところで自動化のチャンスは出てくるだろう。
-18年7月、秋葉原に東日本ソリューションセンターを開設した
来場者数は非公表だが、非常に活況といえる。
お客さまが実際に作ったものを持ち込んでサンプリングテストができるようになっていて、毎日テストの予定が入っている。テストをすると購入にもつながり、営業的な武器になっている。
いままでお客さまには名古屋製作所を見てもらうことが多かったが、今は東日本地区では、ソリューションセンターへ積極的に招待するようにしている。
-CC-Link TSN、Edgecrossなど新たな取り組みの状況は?
CC-Link IE TSNは、CC-Linkにいろいろなプロトコルを流せるTSN(タイムセンシングネットワーク)を採用した。他のネットワークも流せるが、実際にはそうした使い方ではなく、何かトラブルが起きた時、画像データを瞬時に事務所や遠隔地に送って解析するといったような使い方になるのではないか。サーボやインバータ、ロボット、表示器などもつながり、e-F@ctoryを構成する上で欠かせないネットワークだと位置づけている。
CC-Link会員は世界に3600社以上あり、そうしたパートナーメーカーから多くの機器が出てくることでお客さまのメリットが上がる。そこに期待している。
Edgecrossも日本の製造業のお客さまに貢献したいという思いで作ったもの。オープンな仕組みがデファクトになっていけば、お客さまはどのメーカーの製品でも接続口を用意すれば使えるようになり、利便性が高まる。それでお客さまの競争力が上がることが最も大切だ。
日本が世界で勝つための提案が重要
-e-F@ctoryアライアンスが広がっている
e-F@ctoryアライアンスは、いま世界で700社以上。中国・台湾・韓国に加え、タイ・シンガポールでも作り、海外の加盟社も増えた。はじめは自動車関係が主だったが、電気電子に波及し、今では業界問わず広がっている。
3年前からe-F@ctoryを軸にした提案を開始し、センサやビジョンなどを組み合わせてソリューションを提案できる部隊を全国に作った。彼らがe-F@ctoryやロボットを軸に営業活動をし、そこで興味を持ってもらって商談につなげていくといった取り組みを進めている。
またe-F@ctoryを簡単に導入できるモジュールを作り、データを取るところからはじめることができ、お客さまから好評だ。まずそれで興味を持ってもらい、そこから困っていることや各種の相談に乗り、そこで出た課題や要望に合わせた提案をするようになっている。
e-F@ctoryは、日本をはじめ、現場の改善からはじまるボトムアップ型のアジアのものづくりに合っている。データを取ってもどう使ったらいいか分からないというお客さまに対し、当社が寄り添って提案することでお客さまの改善につながっている。特に品質関係には効果があり、お客さまからの評価も高い。
日本では現場のちょっとした改善、改造を提案し、データをとることで品質の安定につなげましょうという提案を進め、古い設備をちょっとだけ改善したような小さなe-F@ctoryが増えている。特に中小企業の場合、予知保全によって装置が壊れる前に部品を交換して長く使う地道な活動を日々続けている。
-今後について
18年は中国市場が沈んだが、そこが戻れば目標達成へのストーリーは描けている。国内でもほとんどの機種で高いシェアをいただいているが、PLC、表示器、インバータ・サーボをさらに拡大し、10年先20年先の事業規模も伸ばせるように頑張っていきたい。
日本の製造業は大手も中小企業も極めてレベルが高い。しかしそれに対して対応できる体力のある企業が少なくなっている。そこに対して当社が期待値を上回る提案をすることが重要だ。当社の役割は、日本の製造業が世界で勝てる黒子であり、お客さまが成果を出せるようにすること。その役目をと果たすべく、地道に努力を続けていく。