2012年に出版された「MAKERS(メイカーズ)」(クリス・アンダーソン著)から始まった3Dプリンタブーム。当時は「何でも作れる夢のような機械」と喧伝され、もてはやされた。
それから7年がたち、いまは3Dプリンタが話題となることは少なくなった。
ブームが一段落する一方で、産業界ではジワジワと導入が進み、活用例も出てきているようだ。
先日、在日ドイツ商工会議所主催の積層造形や3Dプリンティングに関するセミナーに参加した。日独両国から主要な3Dプリンターメーカーや素材メーカーが講演者となり、最新の技術動向や実際の活用事例を紹介してくれた。
日本のある大手自動車メーカーがシリンダーブロックを積層造形で作るために技術者をドイツに派遣し、3年間かけて製造技術を評価したプロジェクトや、PRプランナーやデザイナーが仕掛けた企業のブランディング活動での活用事例、例えばちょっとした便利グッズやアイデア商品を3Dプリンターで作って限定的に売り出してSNSの話題にして知名度をアップさせているなどの具体的な話も出て、とても参考になった。
工作機械による切削や穿孔、切断は、素材を減らして形を作る「引き算」の製造技術。一方、3Dプリンターによる積層造形は、素材を足していく「足し算」の製造方法だ。
工作機械に比べると新しい技術だが、両者の間に優劣はない。それぞれに得意な領域があり、例えば工作機械は加工速度が速く大量生産に向き、3Dプリンタは複雑形状の一品モノに優れている。
製造業者が考えなければならないのは、最短で正しい答えに到達すること。足し算と引き算の両方の特性を把握し、うまく使い分けることでもうワンランク上の製造が可能になる。