【トップインタビュー】日本ワイドミュラー中村社長、自動化で「盤内革命」へ

IDECと協業を推進 プッシュイン市場構築

端子台の世界3大メーカーの1つであり、再生可能エネルギー向け機器でも世界的に高いシェアを持つドイツ・ワイドミュラー。2019年3月にIDECとの戦略的パートナーシップ締結を発表し、業界を驚かせた。

IDECとの協業と同社の今後の取り組みについて、日本ワイドミュラー中村淳代表取締役社長に聞いた。

日本ワイドミュラー 中村 淳 代表取締役社長

 

–IDECとの協業の経緯について教えてください

世界的に競争力があるプッシュイン端子台を持ち、グローバルで事業を展開しているが、日本市場では商流が弱い当社と、丸端子では世界トップメーカーだがプッシュイン式の製品は持っておらず、海外事業をもっと強化したいIDECともに共通の課題を持ち、お互いに補完できる関係にあったことから協業にいたった。

 

–協業の範囲は?

当社の製品全般ではなく、あくまでDINレール端子台についてのみIDECが独占的に取り扱うことになる。それ以外の盤用機器は、他の代理店と同様の形での販売となる。

世界的にプッシュイン端子台の評価が上がっており、日本国内でもだいぶ浸透してきている。ライバル会社に比べて当社は日本市場で遅れており、ドイツ本社もテコ入れしたいという意向がある。そこで盤関係に強い商流を持っているIDECと協力していくことになった。

 

–協業における今後の計画は?

7月からIDECが当社のプッシュイン端子台Klipponの国内独占販売を開始し、同時に当社のプッシュイン技術を使った両社の共同開発品を発売していく。

7月のPLC、押しボタンスイッチ、リレーを皮切りに、10月に安全リレーモジュール、11月にも押しボタンスイッチの発売を予定している。

 

–盤業界はいまとても忙しく、人手不足です

4月のハノーバーメッセでは端子台の設計から製造まで一気通貫で行い、自動化できるソリューションを出品し、とても評判が良かった。盤の設計者がECADやEPLAN上で端子台設計をし、そのまま自動で端子台を組み立てられる自動機と、そこにマーキングするレーザーマーキング装置、設計データに連動して必要な長さのケーブルとフェルール加工が自動でできるケーブリングシステムで構成されている。

日本は作業者のレベルが高く、なかなか盤製造の自動化が進まない。一方、海外では自動化によって解決したいというニーズが高く、その技術も進んでいる。日本でもベテラン技術者が少なくなり、現場力が下がっている。その解決には自動化しかなく、IDECと一緒に自動化の提案を進め、盤内革命を進めたい。

 

–PV(ソーラー発電)事業はどうですか?

日本での接続箱の受注・導入実績は、累計で4GW/6万箱の実績がある。大型案件でのシェアは25%を超え、新しい案件では50%を超えている。2014年から15年のピーク時に比べると市場は半分くらいまで縮小したが、日本の接続箱メーカーが撤退したこともあって、相対的に当社のシェアが高まっている。またメガソーラーで分散型からセントラル型に戻す動きがあり、当社にとっても追い風になっている。

メンテナンス需要とPV発電所の売買が盛んになっているのも良い感じだ。当社は接続箱とともにモニタリングシステムを提供しており、発電所内の細かな部分まで監視できる。PVパネルやインバータメーカーのモニタリングと違い、当社の場合は各モジュールのパフォーマンスや状態までデータを集め、可視化できる。PV発電所は売買に際し、その健全性を示すためにデータを出す必要があり、そのニーズは高い。

日本の事業者は発電所の運用に不慣れで、トラブルに対応できていない事業者が多い。当社はヨーロッパでの実績をもとに、モニタリングや予知保全を提供可能だ。

 

–今後について

これから端子台や盤製造はロボットや自動化で担う時代になる。それに向けて当社ではロボットが端子台を持ちやすいように突起を付け、お客さまには製品と一緒に形状と電気特性、接続性などのデジタルデータも提供するなどの準備を進めている。当社は多くの部分で他社に遅れていることを自覚している。逆に、いろいろと積極的に取り組み、進めていかなければいけない。

端子台市場は、いまだねじ式が50%、ばね式が50%。まずはばね市場に対し、現場の人不足と技術力の低下が進む中、誰でも効率的に作業ができるプッシュイン式をIDECと協力して提案していく。

さらに、将来的には必ず盤製造の自動化が求められるようになる。盤設計から製造まで自動化できるというブランドをIDECと一緒に作っていきたい。まずは第一歩となる端子台をしっかりやることが大事だ。

 

日本ワイドミュラー

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