中国工場での品質管理の進め方
~不良品を流出させない仕組みを作る~②
「整理・整頓・清掃」3Sしっかり
前回の記事で、不良を流出させないためには、下記項目を徹底してやることが重要と書きました。
1.検査を機能させる
①検査で不良品を検出する
2.工場基本管理の徹底
①5S
②識別管理
③不良品が発生したときの処置
④製品の扱い
今回は、これら項目の具体的な内容について説明します。
1.検査で不良品を検出
①検査を機能させる
自社工程または仕入先で実施している検査で不良品を確実に検出できるかを確かめないといけません。検査とは工程検査であり出荷検査です。
(1)検査方法
・実施している検査方法で不良品を捕まえることができるのか
・捕まえられないとすれば、検査方法を見直さなくてはなりません
(2)精度
・使用している検査機器は、顧客が求める精度を満足しているか
・精度が不足しているのであれば、求められる精度の測定ができる検査機器を導入することが必要です
(3)検査基準
・自社と顧客、または、自社と仕入先とで同じ検査基準となっているか
・特に外観検査に関しては、基準にずれがあることが少なくないので注意が必要です
これら内容を確かめるために、不良品を流して検出されることを確かめることも方法のひとつです。特に、絶対に流出してはいけないもの、流出されては困る不良項目の検出可否はチェックしておくべきです。
2.工場基本管理の徹底
①5S
毎日見ている自社工場で5Sを進めるのと、こちらが常駐していない仕入先に5S指導をするのとでは、そのやり方は大きく異なります。ここでは、こちらが常駐していない仕入先を指導する場合の方法事例を紹介します。
仕入先に5S指導をするのは容易ではありません。ですので、わたしは5Sではなく整理・整頓・清掃の3Sだけ、しかも内容も絞って指導するようにしています。
まずやることは、仕入先に「汚い工場でよい製品は作れない」という認識を持たせることです。工場の作業者は工場の環境に倣います。つまり、汚れている、現場にものが落ちているなどの工場では、作業者もこの工場はこんなものかと思い平気でものを捨てたりするようになります。作業も雑になる傾向があり品質に影響します。
一方、清掃が行き届いていて、現場にゴミひとつ落ちていない工場であれば、作業者もものをその辺に捨てることはしません。作業も丁寧になる傾向があります。
清掃をきちんとさせることが重要です。中国工場に見られる埃まみれ、油まみれなどは解消させます。
次にやるのは、整理・整頓です。難しいことはやりません。
整理:余計なものを現場に置かせない
整頓:置場を明確にして、その通りに置かせる
ということだけです。これだけでもできれば、効果は抜群です。
②識別管理
識別して表示する。基本中の基本管理です。
(1)識別
工場内にある製品、半製品、部品、材料など全てのもの区別やポジションを明確にすることです。例えば、工程にある半製品が加工前のものなのか加工後のものなのか、検査前のものなのか検査後のものなのかなど、そこにあるものが工程上のどのポジションにあるものかを識別できるようにします。
(2)表示
工場内にある製品、半製品、部品、材料などのポジションがわかるように表示をします。例えば、部品表、立札、置場表示、不良品表示などがありますね。検査で見つけた不良品を不良品と表示するなり不良品箱に入れるなどして識別管理をしないと、いつの間にか不良品が良品に混ざって出ていってしまうことになります。
識別管理で大事なのは、100%できていることです。1つ識別不備や表示漏れがあると、それが混入不良や工程飛ばし不良の発生、不良品の流出につながり顧客に迷惑をかけることになります。1つの漏れも許してはいけません。
また、工場監査をしたときなどによくあるのですが、例えば、工程に仕掛品置場があって、表示はしてあるものの非常にわかりづらいケースです。「表示がわかりづらい」と指摘をすると、「問題ありません。うちの工場の慣れた作業者はわかっています」という説明をされるときがあります。
しかし、その考え方は間違いです。中国工場は人の入れ替りが激しいのですから、工場には常に新人がいます。慣れた作業者だけでなく、新人作業者や外部の人など誰が見てもわかるように表示しなくてはいけないのです。
残りの③不良品が発生した時の処置、④製品の扱いは、次回お伝えします。
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◆根本 隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など。