日本は世界有数のロボット大国を自負しているが、中国をはじめ多くの国でロボットや自動化技術の使いこなしが進み、さまざまなロボット産業が勃興している。日本の地位も盤石ではない。
「今後のロボット産業をどう成長させていくか」内閣府や経済産業省などがロボット社会変革推進会議を開催し、ロボット政策の方向性を報告書としてまとめた。
中小企業への導入も強化
ロボット社会変革推進会議は、内閣府と経済産業省、文部科学省、厚生労働省により、ロボットの社会実装の加速を目指し、導入や普及に関わる共通課題や人材育成、研究開発などロボット産業が解決すべき課題とその解決に必要な制度や施策の検討を目的として設置された。
佐藤知正東京大学名誉教授を座長として、ロボットメーカー、ロボットSI、ロボットユーザー、AIメーカー、大学研究者等の有識者を集めて今年5月から7月までに全6回まで行われ、このほど会議の報告書が公開された。
国外へ横展開しビジネスを拡大
報告書では日本のロボット政策の基本方針について、社会実装を進めていくことを最重要課題とし、特に中小企業の導入を抜本的に強化していくことを第一とした。さらに、その過程で得られた知見と技術をもとに国外へと横展開し、ロボットビジネスの拡大を目指すという。
そのための体制として、ロボットメーカーとロボットSI、ロボットユーザー、大学・高専等が英知を出し合う協調体制を構築。そこで①ロボットに求められる共通ファンクションを抽出し、共通ファンクションや協調領域に対する規格化や研究開発、②安全性の検討やユーザーリテラシーの向上、③中長期を見据えた研究開発や人材育成等を“スピード感”をもって行う。
海外でロボットシステムを構築して課題解決まで行える大規模なソリューションプロバイダー「メガインテグレーター」を育成し、日本国内は引き続き「世界の先端試作工場」の地位を確保していくとした。
具体的な施策
具体的な施策として、社会実装を加速するための産官学の協業体制の構築、ロボットビジネスのための人材育成、研究開発の方向性と体制整備を進める。
産官学の協業体制構築では、安価で普及しやすいロボットシステムを作るため、積極的にロボット活用を進めるユーザー企業を中核とした協業体制のほか、ユーザーや投資家、大学や高専等がよりロボットの理解を深める情報共有の集まり、中小企業の導入を促進するためのSIや自治体、金融機関との連携体制など、目的に応じたエコシステムをつくっていく。
人材育成について、経営と技術的視点を併せ持ち、ロボットを使った課題解決が提案できるプロデューサー的能力と役割が今後は重要になるとし、その育成のために産業界と教育界の連携を進める。例えば、企業の生産技術部門OB人材を活用し、教育現場への講師派遣や教材提供、さらに教員支援のための企業インターンシップ受け入れの実施などを行う。また日本のSIスキル標準を海外へ普及を進めるほか、ロボット利活用に関する国家資格の技能検定職種の創設、技能五輪全国大会への競技職種導入を検討する。
研究開発では、産学協調体制を構築し、基礎研究と応用研究をお互いが活用できる体制を整備する。またAI等の新技術を活用するため、今はバラバラになっているAI、機械、電機等のコミュニティ間の連携と橋渡しを行う。
さらに社会実装のためのチャレンジ・トライの機会を増やすため、World Robot Summitを一過性のものにせず、継続的な開催を検討する。