パレタイジング倉庫内作業など 現場ニーズに対応
人手不足に悩む日本の製造業。その解決策としてロボット活用への関心は高く、なかでも人と同じ作業領域で働ける協働ロボットに期待する声は大きい。
真空機器と搬送機器を専門とし、協働ロボット向けのハンドやグリッパが好評なシュマルツに、協働ロボットの最新事情について話を聞いた。
協働ロボットの最新事情とこれから
製品開発力に定評 日本でも事業拡大
シュマルツは、1910年創業のドイツの真空機器の専門メーカー。グローバルで約1500人の従業員が在籍し、日本を含めて80カ国で展開している。
社内には自動車や鋼板、包装、電子半導体など業界特化型の開発チームを設け、真空発生器やパッド、搬送用グリッパやロボットハンド、クランプなど豊富なポートフォリオをそろえている。売り上げの8.5%を研究開発に充て、製品開発力に定評がある。
日本法人は2002年から活動を開始し、17年には横浜市都筑区に製品デモ・テストルーム「バキュラボ」を備えた本社ビルを建設。今秋には福岡と仙台に新たに営業拠点を開設するなど、順調に事業を拡大している。
小型真空ポンプの大ヒットで存在感
真空搬送で最も大きな市場は電子・半導体分野だが、同社は近年急激に注目を集めているロボティクス、特に協働ロボット向けに専用機器を発売し、この分野でも存在感を示している。その代表的な製品が17年に発売した「コボットポンプECBPi」だ。
コボットポンプは、協働ロボットのハンドの付け根部分に取り付け、電気配線だけで本体自身で真空を発生できる小型真空ポンプ。エアレス・配管レスで真空吸着ができ、卓上やキャスター付き架台、AGVと連携させてモバイルロボットなど、柔軟に取り回して運用される協働ロボット向けに開発された。
同製品は簡単に取り付けて利用でき、「協働ロボットのメリットは利便性の高さと、安全柵がいらないなどの導入障壁が低いところ。エンドエフェクタも、使いこなすのが大変であってはナンセンス」(VA〔オートメーション〕営業部望月宣孝部長)とし、エアと接続して使う真空グリッパ「FXCB/FMCB」も含めて、協働ロボットにすぐ接続して、すぐ吸着搬送を運用できるキットも提供している。発売以来、評価も上々だという。
ISO準拠新グリッパー開発 可能性広げる
助力・手動搬送の取り扱いも強化へ
協働ロボットは当初は5~10キログラム可搬の製品が中心で、最近は1~3キログラム可搬など小型化がトレンドとなっているが、今後は重量物の可搬のニーズが高まると言われている。同社もそれに合わせ、安全規格ISO TS15066に準拠した真空グリッパーを開発している。
望月氏は「一部のメーカーを除き、いま協働ロボットのほとんどは10キログラム可搬以下だ。しかしパレタイジングや倉庫内作業では10キログラムの重量物を扱う作業も多い。協働ロボットでも重量物を持ち上げたいという声は多い。真空機器メーカーとして重量物可搬ができるグリッパによって可搬重量を上げていく流れに対しても、協働ロボットの可能性を広げていきたい」としている。
また重量物搬送の省力化・省人化ニーズに対し、同社は協働ロボットの可搬重量のアップに加え、今秋から真空を使った助力装置、手動搬送装置の取り扱いも強化する。
「この分野においては協働ロボットと手動搬送のニーズは似ている。現時点では産業用ロボットや協働ロボットは導入できない、不要だという現場に対しての別の切り口として提案を進めていきたい」(望月氏)。
真空吸着は5年後 400億円市場と推測
製造業や物流業界では人手不足が深刻化し、ロボットの導入検討が進む。特に協働ロボットに対する関心は高く、同社にとっても追い風だ。
望月氏は「国内の協働ロボットのエンドエフェクタ市場は、5年後には2000億円になるとされ、うち真空吸着が20%の400億円市場になると推測している。アプリケーションや求められる要素は業界やお客さまによってさまざま。当社は直接販売が中心で、多くお客さまの声を集め、サポートできるという利点がある。それを生かして、今後も製品開発に力を入れていきたい」としている。