ドイツ・フランクフルトで毎年開催されている3Dプリンタを使ったアディティブマニュファクチャリング(積層造形)関連の国際展示会「Formnext」(主催:メサゴ・メッセフランクフルト)。
先日、その関連セミナーとして「FormnextフォーラムTokyo」が行われ、積層造形の最新動向について学んできた。
その中で興味を引いたのが、パナソニックによる3Dプリンタでの金型製造に関する講演。手間も時間もかかりそうな3Dプリンタをなぜ使うのか? どんな効果があったのかという解説が目からウロコだった。
パナソニックは1990年ころから社内用に3Dプリンタの研究開発をし、多くの特許を取得しているとのこと。装置の外販は行っていないが、一部メーカーには関連特許をライセンス提供しているという。
金型製造は3Dプリンタと切削加工を組み合わせた専用機で行っている。パウダーベッドにレーザーを照射し、それを重ねていく方式で、何層か重ねたら切削して表面を整える。それを何度も繰り返すことで綺麗な仕上がりのものができあがり、金型としても使えるのだそうだ。
3Dプリンタで作るメリットは①複雑形状ができる ②内部構造を自由に設計できる ③焼結密度をコントロールできることの3つ。特に②内部構造の設計自由度は、ドリルや放電加工機の技術的制約を超えた設計ができ、冷却水の流し方の幅が広がった。金型の冷却効率が上がり、タクトタイムが短く、品質不良も減らせるようになったという。
これまで3Dプリンタの使い方は試作や一品物を作るものというイメージだった。しかし、もはやそのレベルではない。今までとは異なる新しい製造・加工方法であり、そのポテンシャルを認め、設計思想から変えると、これまでの常識を打ち破り、新しい価値を生み出すことができる。
これは大きなイノベーションであり、パナソニックの例はそれを証明している。私たちは現在の製造方法に思考が引きずられ、新しい製品開発の道を狭めてはいないか? 3Dプリンタも、IoTも、ロボットも、AIも、新しい技術はそれを使いこなすことで新たなイノベーション、価値を生み出すことができる。