FA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)
久保田和雄会長インタビュー
人材育成、間口拡大に挑戦
ロボットや制御機器を駆使して最適な生産工程を企画し構築するロボットシステムインテグレーター(ロボットSIer)。人手不足や生産性向上が叫ばれるなか、彼らの働きが日本の製造業の未来に向けて大きなカギを握る。
FA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)は、2018年7月にロボットSIerの業界団体として昨年発足し、約1年で220社を超え非常に順調な運営を進めている。久保田和雄会長に、これまでとこれからについて話を聞いた。
いまも参加希望が増加中
—— 発足時144社ではじまり、現時点で220社を超えました
発足前、会員が集まるか疑問視する声もあったが、私は当初から100社以上は集まると思っていて、蓋を開けてみれば144社が参加してくれた。そこから参加を希望する企業が後を絶たず、7月末時点で220社を超え、まだ増えていくだろう。
いまロボットSIerは全国に約1000社あると言われている。彼らとロボット関連企業を母数とし、最終的な会員数は正会員・協力会員の合計で300社~400社ほどになると見込んでいる。
—— 会員にはセンサなどロボット周辺機器やサービス企業の姿もあり、多種多様です
協会加入時には審査があり、システムインテグレータの要素を持つ企業は正会員、ロボット関連機器メーカーやサービス事業者などは協力企業という分け方をしている。
これからロボットSIerになりたいという企業は、まず協力企業として参加し、そこから正会員になる仕組みだ。
関連機器メーカーやサービス事業者が積極的に参加しているのも特長のひとつだ。6月には新たな試みとして、協力会員が正会員のロボットSIer向けに自社製品を紹介する「新商品発表会」を行った。12社が20分ほどの短いプレゼンをして新製品を紹介したのだが、会場は満席。じっくりと話を聞いた後に実機を前に商談ができ、参加者の満足度がとても高かった。秋にも開催を予定している。
会員同士の連携も密に
—— 発足から一年が経ち、活動に対する手応えは?
発足にあたって「ネットワークの構築」「事業基盤の強化」「専門性の高度化」をキーワードに掲げた。
このうちネットワークの構築については、全国にあるロボットSIer同士が協力できる環境づくりを進めた。ロボットSIerの多くは各地域で仕事をし、営業社員がいない企業もあり、バッティングは少ない。それぞれに得意領域も異なる。
建築業界で言えば地域の工務店のようなもので、お互いがコミュニケーションを取り、協力し合う環境ができればもっと仕事はやりやすくなる。この一年でその基盤はだいぶでき、手応えを感じている。
活動の周知徹底が必要
—— 2019年度の活動の状況について
引き続き3つの目的に向けて取り組みを行っているが、大きなチャレンジとして独自の統計調査をまとめている。
日本ロボット工業会によるロボットメーカーのロボット製造台数の統計はあるが、ロボットSIerがどれだけ関与し、取り扱ったのかというのは分からなかった。これを明らかにする統計を年内には取りまとめようとしている。
教育と研修を通じて人材育成にも取り組んでいる。ロボットSIerが重要だといっても若い人たちはこの仕事を知らない。人を増やそうと思ったら彼らにロボットSIerの活動を知ってもらうことが重要だ。そこで今、工業高校や高専生を対象としたロボットコンテストの全国大会の開催を進めている。
実際にロボットの実機を見てもらい、その場でロボットを使えばこんなことやあんなことができるというアイデアを出してもらう。その内容によって競うもので、12月の国際ロボット展で各地域予選を勝ち抜いた人たちを集めて決勝戦を行う予定だ。
またロボットSIerのスキル認定制度を来年度から始める予定だ。はじめは初級者向けのオペレーションを中心とした3級からはじめ、実務経験も求められる2級、1級も順次用意していく。それにともなって教科書の発行も予定している。
将来的にこの検定は国家検定制度を目指している。スキルを明確化し、ユーザー企業がロボットSIerを選ぶ時に「◯級取得者が何人在籍している」という判断基準にも使ってもらえるようにしたい。
社会実装へ仕組み作り
—— 今後に向けて
長年、ロボット業界はテクニカルな話ばかりしていたが、13年ころから社会実装に目が向き、ロボットSIerがいないと何もできないという声が出始めた。その頃から流れが変わり、今に至っている。
生産性を上げて日本のGDPを伸ばしていくためにはロボットがもっと自由に社会実装されている状態を作らなければならず、ロボットSIerの役割がますます重要になっている。
どんなにソフトウエアやコントローラが進化し、かんたんにロボット制御ができるようになっても、ロボットSIerの重要性は変わらない。それどころか、ロボットSIerの数を増やさなければ社会実装のトータルな仕組みは作れないだろう。だから若い人にロボットSIerを職業として認知してもらい、選択肢のひとつとしてもらわなければならない。
そうなれば、ロボットの社会実装の仕組み、ロボットシステムを日本から海外に輸出することも可能になる。新しいビジネスの一つになるかもしれず、夢が広がるだろう。