グローバルに展開へ
操作パネルとして多くの製造装置や設備、機械に採用され、稼働データを集めて見える化するIoT機器としても重宝されるHMI。いまや装置に欠かせないキーデバイスとなっており、安定稼働が強く求められている。
そこでHMIの世界トップメーカーのシュナイダーエレクトリックは、「点検士」と呼ばれるHMIサポートに力を入れており、装置の故障やトラブル、稼働停止を未然に防ぐ取り組みを進めている。
「計画的保全を提案」
整備・メンテが後回しにされがちなHMI
HMIは、制御信号の入出力インターフェースとしてのスイッチと、装置内部の情報の見える化としての表示器という2つの機能を兼ね備える重要なキーデバイスだ。いまIoTで装置の稼働状況の見える化とその最適制御が必要とされるなか、これまで以上にHMIの重要性は高まっている。
産業機械や生産設備の使用期間は10年以上がザラで、20年、30年もの長期間使い倒すことも珍しくない。モータやアクチュエーター、ベアリングなど駆動部は最も負荷がかかる部分で、故障の原因になりやすい。そのためメンテナンス意識は高く、ユーザー自らの手で定期的な点検と整備が行われる。
一方のHMIは、操作パネルとして重要な役割を果たす部品にも関わらず、メンテナンス意識は低く、ほとんどケアされていないのが実態だ。
HMIの稼働環境はとても過酷だ。作業員が操作のために押す部分は決まっており、特定箇所に負荷が集中するのに加え、水や油、塵などが舞う悪環境のなかを何年も動き続けなければならない。時にはワークや工具のような硬いものが画面にぶつかったりもする。もともとこれらを想定して頑丈に作られているが限度はある。10年も使ったら壊れることもある。
HMIは普段からケアする箇所ではなく、壊れることを想定していないため、いったん故障すると修理や機械の復旧までに時間がかかることが多い。それを防ぎ、稼働停止を最小限に抑えようというのが「点検士」のサービスだ。
設備を長寿命化に導く点検士
点検士は、機械や装置を安心安全に、長く使い続けることを支援するサービス。同社のHMIユーザーと、同社製HMIが搭載されている装置のユーザーに対して提供している。
シュナイダーエレクトリック フィールドサービスの西村和也部長は点検士について「当社のHMIは装置に組み込まれて提供されるケースが多く、そうした場合は装置メーカーがサポートを担当する。HMIの普及台数の増加に伴い、ケアしきれない場合もあるためユーザーから直接の問い合わせが増えている。点検士はそのために始めたサービスだ」と説明する。
具体的には、問い合わせや修理依頼を受けた時、お客さま情報と製品情報を登録してリスト化。生産中止やメンテナンス終了などが起きる前にお客さまに告知し、新たな設備計画を提案することで機械の停止リスクを減らしている。
西村氏は「HMIはPLCと違ってメインの制御機器ではない。故障も少ないのでメンテナンス意識は低い。しかし壊れると生産がストップしてしまう。それを防ぐために計画的な保全やリプレース交換を提案している」という。
一方で、HMIが付いていない古い機械や、海外製の機械を長く使い続けたいというユーザーに対しても、相談や機器のレトロフィット等を通じて長寿命化サービスを提供している。特に近年、多くの分野で輸入機械が使われる機械が増えており、輸入商社ではサポートが不足し、メンテナンスが十分でないというケースが多く、そうしたケースで喜ばれているという。
「当社はグローバルで制御機器を展開し、機械の中を見たら当社製の機器が使われていたというケースは多い。また他社の機器だった場合も置き換えが可能な場合もある。海外製品で困ったら一緒に解決策を考えられるのが当社の強みでもある。どこで買っても世界中でサポートを受けられる」(西村氏)
海外機器の使いやすさ向上IoT化も
また近年のIoT化の流れに関して、古い機械であってもHMIや制御機器の入れ替えによってIoT化は可能だ。特にHMIは操作パネルとしてデータの出入り口となり、データが集まっている。同社はHMIのレトロフィットからIoT化のスタートを支援する。
西村氏は「HMIはデータを扱うのが得意だ。単に長寿命化だけでなく、新機種に入れ替えることで装置データの収集ができ、それをきっかけに稼働監視も整備することができる。IoT化やスマートファクトリーの第一歩はデータを取ることからはじまる。
HMIの更新はIoTという付加価値を加え、そこから止まらない装置づくりにつなげることができる。点検士というサービスを通じてそれを提供していく」としている。