購買業務について回る不正行為①
〜中国工場の不正行為事例〜
決済者としての意識を忘れずに
今回からは、購買業務がテーマですが、購買業務の内容ではなく、中国工場の購買業務に必ずついてくる不正行為について書きたいと思います。
こうした不正行為は工場経営に大きな影響を及ぼすことにもなりますので、どのような不正が、どのような時に起きるのか、そして、どのように対応したらよいのかを事例を紹介することで考えてみます。
購買業務
工場で購買と言えば、生産するための部品や材料を購入、また、生産に使用する金型・治工具、設備・機械、副資材などを購入することです。部品や材料の購入と設備の購入を別の部門が行うようにしている工場もあれば、同じ部門の中で違う係として行っている工場もあります。
部品や材料、そして設備を購入するための購買業務には、次のものがあります。
①購入価格の決定
②発注先の決定
③発注数量の決定
④買掛金残高管理
⑤納期管理
⑥購入品の品質管理
今回のシリーズでは、①〜④に関わる事例を紹介します。⑤の納期管理と⑥の購入品の品質管理については、次のシリーズで記すことにします。
購買部門は、会社の中で利益センターと呼ばれるくらい、その業務内容は会社の利益に大きな影響を与えます。とても重要な業務である一方、お金が絡む仕事ですので、不正行為が発生しやすい部門でもあります。
購買担当者が行う不正の主なものは、発注先業者からのキックバックやリベートを要求する、受取ることです。これらは中国では悪しき習慣となっていて、担当者はそれを要求する、受取るのはあたり前と考えているところがあり、罪悪感など持っていないことを日本人は理解する必要があります。
日系中国工場の場合、日本人が購買部門の責任者であれば、大きな問題は起こりにくいと考えられますが、それでも価格や発注先選定のチェックを怠ると不正は起こります。まして、日本人が総経理や工場長だけと言う場合、決裁者としての承認を通してチェックする意識を持たないと不正の温床となり得ますので、十分注意が必要です。
事例1
わたしが中国駐在員だったころ、工場の購買部門が購買担当者を中途で採用しました。話しぶりなどからとても優秀で期待が持てそうな人でした。ところがその人、2カ月ほどで会社を辞めました。その理由を聞いて当時のわたしは愕然としました。
辞めた理由は、「この会社は購買部門にいても少しもおいしいところがない」というものでした。わたしのいた会社は、本社の方針で業者との癒着は一切許さないようにしていました。購買部門には、日本人の責任者がいて、責任者の承認がなくては価格や発注数量、発注先を決めることはできない仕組みとしていたことで、購買担当者と業者との癒着をさせないようにしていました。
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◆根本 隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など。