ここ数年、オープンイノベーションや企業同士のコラボレーションが賑わい、「共創」がトレンドとなっている。
自らのできない部分、苦手な部分を、それを得意とし、専門にやっている企業と一緒にやることで、より早く、スピーディーにアウトプットを出していこうというもので、それ自体はとても素晴らしく、有効だと思うが、ここでは敢えて逆張りの「自ら何でもやる」ことを礼賛してみる。
先日、ある製品についてメーカーで話を聞き、そのこだわりに感心した。ハードウエアはもちろんのこと、OSやアプリケーションといったソフトウエア領域まで自社開発。もちろんOSS(オープンソースソフトウエア)を使い、まったくのイチからの開発ではないが、業界にはすでに有名なソフトウエアがあるにも関わらず、そこには目もくれずに自分たちで開発することにこだわった。
「なぜ?」との疑問に対してそのメーカーは「万が一、問題が発生したら、素早く原因究明して再発防止を施すのがメーカーとしての責務。さまざまなメーカーから寄せ集めて作った場合、発生原因が彼らの製品によるものであったら、その究明は彼らに依頼して待つしかなくなる。当社が提供しているのは、あくまで産業向けの製品。工場はもちろん社会インフラにも使われている。お客様に説明責任を果たし、製品を磨き上げるためにも、製品の開発にはできるだけ自社で関わる必要がある」という。
コンシューマ製品のように大量生産で製品単価が安く、製品寿命が短いものは、既存にあるものを組み合わせて安く、早く作ることが有効だ。しかし産業向けで、装置や設備の構成部品となれば話は別。長い期間、故障せずに動き続けることが大前提であり、納品後の方が大事だったりする。
両者を同じ土俵で、同じ目線で語るのは危険だ。自社開発で垂直統合型の作り方は、短期的に考えれば非効率化でムダが多く見えるもしれないが、長い目で見て顧客が一番必要とする要素を考えれば、実は効果的でもある。世間や時代の流れは、短いサイクルのなかで早く動くことが礼賛されているが、それがすべてではない。
製造業企業、特に産業用に軸足を置く企業は自社のビジネス領域や顧客の求めるものをキチンと把握し、軸をブラさないことが重要だ。