購買業務について回る不正行為② ~中国工場の不正行為事例~
必要悪と割り切りキックバック
①購入価格の決定
部品や材料の価格決裁者は、原則として経営トップである総経理または工場長とすること。これらは、製品原価と直接関わるだけに厳格な運用が求められます。部材以外についてですが、生産設備や金型などでも一定金額以上は同じように経営トップが決裁者となるべきです。
問題は、副資材や治工具などです。これらはどうしても部品や材料に比べ担当者任せになることが多く、担当者と業者との間で癒着・不正が生まれやすくなります。こうした癒着を防ぐ手段のひとつとして、担当者を定期的に交代するという方法があります。どうしても長く同じもの同じ業者を担当していると外から見えないことが増え、不正が起こるとともにその発見がしにくくなります。
事例2
不正行為への臨み方は、本社や工場トップの方針や考え方で決まります。
多くの日系中国工場では、日本国内と同じスタンスでキックバックやリベートの要求・受取りは不正行為であり会社として禁止事項であるとともに、処罰の対象としています。絶対に認めないというスタンスです。
一方で、キックバックやリベートなどは中国の悪しき習慣ではあるが、工場をうまく回すための必要悪として目をつぶっている日系工場もあります。
東莞にある日系工場では、後者の考え方で工場を運営しています。その工場に日本人の駐在員はいません。頻繁に日本から出張者が工場を訪問し、品質や納期などの調整・確認を行いますが、基本的に工場の運営管理は中国人に任せています。当然、部材その他の購入に関しても中国人が行っています。
この日系工場本社の社長の考え方はこうです。
「購買関係でリベートなどを要求し自分の懐に入れるのは、確かによくないことではあるが、中国ではそれがひとつのモチベーションとなっている事実もある。それを大目に見ることで工場をうまく回すことができるのであれば、ある程度は許容する。ただし、購入価格が世間一般よりも高くなることは絶対に認めない。つまり、他よりも安く買う範囲の中で目をつぶるということ」
実際に購入価格には目を光らせているとのことですし、中国人幹部もそのあたりはわかってやっているとのことでした。注意すべきは、不正に歯止めがかからなくなることでしょう。
この考え方は、賛否が分かれるところだと思います。しかし、ここまで割り切っているのは、すごいことだと思います。
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◆根本 隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など。