インクジェット印刷による電子回路製造技術の商用化を手がけるエレファンテックは、18億円の資金調達を実施した。
リードであるセイコーエプソンに加え、三井化学、住友商事、タカハタプレシジョン、JA三井リース、CBC、結VC1投資事業有限責任組合、MMCイノベーション投資事業有限責任組合、O2の計9社からの資金調達となる。
調達した資金のうち約8億円を投資して大型の量産実証拠点(兼、研究開発拠点)を新設し、インクジェット印刷による電子回路の大型量産を実現する。
エレファンテックの事業について
エレファンテックは、「新しいものづくりの力で、持続可能な世界を作る」をミッションとし、桁違いの低コスト・低環境負荷での電子回路製造を可能にする、インクジェット印刷による電子回路製造技術の実用化・普及に向け、2014年の創業以来開発に取り組んでいる。
今回の資金調達の前にも合計10億円を調達、2018年には小規模な量産ラインの稼働に成功し、既存のFPC(フレキシブルプリント基板)の置き換えとして製造販売し、顧客から高評価を得ている。半分のコスト、10分の1以下の水使用量、廃棄量での製造が可能であり、コストだけでなく、サプライチェーン全体での環境負荷も大きく下げることができる点が評価されている。
今回の資金調達で目指すこと
今回の資金調達により、以下の2つを目指すとしている。
①大型量産実証拠点の稼働
②3D配線印刷などの応用技術の開発
①は、同社で持つ小規模量産ラインで培った技術を元に、本格的なFPCの量産実証拠点を稼働させるもの。三井化学名古屋工場の建屋を賃借し、研究開発装置も含めて約8億円を投資し、2020年中に出荷開始を予定。
製造キャパシティは最大5万平米/月、当初1万平米/月と、現在の小規模量産ライン1000平米/月に比べて10倍から50倍の生産量となり、40億円程度の売上規模を見込んでいる。稼働に当たっては、セイコーエプソンによるインクジェット技術の提供、三井化学による場所と量産ノウハウの供与により、スタートアップの「量産の壁」を大企業の力を活用して突破することを目指す。
②は、同社技術をベースにした応用開発を、主に顧客とともに行っていく。同社は印刷技術の最初の応用例としてFPCを量産化しているが、応用範囲はそれに限らず、例えば3D配線印刷については、複数の自動車/車載部品メーカーから、同社の配線印刷技術とフィルムインサート成形技術を組み合わせ、樹脂と配線が一体になった部品(In-Mold Printed Circuit, 立体配線部品)を開発したいという要望があり、共同開発等の枠組みで開発を進めている。
大型量産工場は、こういった応用技術の研究開発の拠点としても活用できる施設と見込んでいる。2022年にはFPCに続く量産製品の第一弾として立体配線部品をリリース予定。