2022年に100社超の連携目指す
インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(西岡靖之理事長、IVI)は、経済産業省の「コネクテッドインダストリーズ推進のための協調領域データ共有・AIシステム開発促進事業」の助成金交付を受け、製造業オープン連携フレームワークの開発をスタートする。デジタル時代を迎え、各工場が持っているデータを事業者の枠を超えてどう活用していくかが今後のポイントとなるなか、データに含まれる各社の知財を守った形での流通に向けた基盤構築を目指す。
これまで、製造業の工場内部のデータを利活用し、外部の企業と密な連携を行うためには、提供するデータのセキュリティーの問題に加え、知的財産としてのデータの権利の帰属等の問題がネックとなっていた。
また、異なる工場間でデータをつなげるには、作り方の手順や用語がすべて異なり、意味が伝わらないという課題があった。
それに対し同会は「製造業オープン連携フレームワーク(Connected Industries Open Framework=CIOF)を開発し、2020年3月のリリースを目指す。
最長で22年2月まで、製造業に特化したより機密性が高く価値あるディープデータを対象として、企業間でのデータ取引を促進するためのシステム開発およびビジネスエコシステムを構築する予定としている。プロジェクト終了の22年には、国内外で100社以上のFA企業、IoT企業のシステムが利用可能なオープンで中立的なしくみを提供し、この分野のデファクトスタンダードを目指す。
CIOFとは、製造現場を起点とするデータを、あらかじめ登録されたソフトウエアを介して、特定の取引先や、社外の業務プロセスとダイレクトにつなぎ、これまで以上に高付加価値な企業間取引を、信頼関係に基づくデータ取引により可能とするための仕組み。企業間データ取引に関する課題を「ゆるやかな標準辞書」で解決し、同時にAIやブロックチェーン技術なども活用することで、データ取引の新しいビジネスモデルを提供可能なプラットフォームとして、新たなエコシステムを形成していく予定としている。
工場側をジェイテクト、DMG森精機、三菱電機、安川電機の4社が担当し、IT側をSCSKとビジネスエンジニアリングが担当する。フレームワークの基盤となるシステム開発と保守は、スタートアップ企業であるアプストウェブが担う。
西岡理事長は「デジタルトランスフォーメーションが進むなかで、製造業の生産現場にあるデータを新たな知的財産としてとらえ、それをさらなる収益につなげる方法はたくさんある。ただし、それを実現可能とするには、製造業がおかれた事情を考慮したデータ流通の新たなしくみが必要。データの内部を秘匿し、さらにその権利を保持したままで、安心して社外にデータを提供するしくみができれば、製造業から見える現在の景色は激変するのではないかと予想している」としている。