産業用ロボットを巡る 光と影(23)

先端技術を交換し合う企業たち!②

技術だけでなく、情報交換の場
条件良い仕事のパイプを増やす

中小企業の情報交換会

1年ほど前に、企業同士で情報交換を行う記事を掲載しました。その記事で、複数の企業が最先端の技術を交換し合った事、その内容は『展示会』『商社』『ネット』では到底得られないハイレベルなものだったので、参加企業からとても好評だった事を記載しました。

そして今回も富士ロボットの主催で、『簡単ティーチングソフトRobotWorks』を重宝されている企業の工場にて、情報交換会を行いました。今回参加されたのは、RobotWorksのユーザー様、販売協力会社、導入予定の企業様でしたが、人数が多かったため、1回ではなく3回に分けて行いました。

今回もとても好評でしたので、その内容を記載します。

相見積もりなどで苦しめられる中小企業

そもそも今回、情報交換会を行う発端は、お客様の悩みをお聞きした事です。その悩みとは「最近は、仕事が減ってきただけでなく、長年付き合ってきた発注元からも、値下げ交渉や相見積もりでかなり厳しい経営状況です」という内容でした。

富士ロボットのおせっかい

富士ロボットとしては、RobotWorksの販売・サポートだけでなく、お客様をハッピーにする『おせっかい』も得意としているので、今回の情報交換会を提案しました。

その目的は、この企業にとって条件の良い仕事のパイプを増やす事、そして招待した企業様もこの企業を見学して、会社の発展につながる事です。

結果は大成功で、招待した企業様から「現場の方の話が聞けて良かった」「ロボット実機の動きを見て、非常に優れたソフトだとわかった」、また「この企業の高い技術力を理解できたので、良い仕事を紹介したい」とのお言葉を頂きました。

他では真似できない板金加工

では、その内容をもう少し詳しく説明します。

まず、この会のプログラムは順番に『工場見学』『RobotWorksでティーチング』『ロボット実機で溶接』でした。

工場見学では、この工場の社長と専務が、自社の溶接技術の高さなどを、板金加工の技術力を実際に加工された製品を見せながら話をされました。例えば、ステンレスやアルミ、そしてチタンの溶接は、鉄のように簡単ではない事。また、板厚がコンマ3ミリでも溶接が出来ている事。

さらに、開先(溶接をする箇所に切り込みを入れて、溶接をしやすくする)をなしで、しかもワンパス(溶接を同じ場所に繰り返さないで、一発で成功させる)で行っている事を説明されました。溶接をご存じの企業様からは「おおー!」「これは凄い」「しかも綺麗だ」と歓声があがりました。

ロボット初心者が簡単にティーチング
「ソフトでティーチングしたのに、ロボットの動きが滑らかだ」との感嘆の声が上がる

ロボット初心者が溶接ロボットを簡単に操作

次に招待された企業様が最も楽しみにしていたRobotWorksでのティーチングと溶接ロボットでの実演です。ロボットの初心者が、ティーチングをどのように行っているかを実演されました。

どれくらい初心者かと言いますと、ロボットメーカーにおける2日間の講習で簡単なティーチング方法を学び、次にRobotWorksのトレーニングを富士ロボットから(本来は2日間のところ、このユーザー様の都合で)1日学んだだけの方です。その方が、ほとんどの作業をマウスだけでティーチングし、そのティーチングのプログラムを使ってロボットの溶接を実演されました。

よって、このソフトを初めて見た方々は「思った以上に簡単ですね。もっとロボットの知識が必要だと思いました」「ソフトでティーチングしたのに、ロボットの動きが滑らかだ」との感嘆の声が上がりました。

次の質疑応答もかなり盛り上がったので、たくさんの質問の中から特に好評だった内容を記載します。

Q:製品全体を溶接するロボットの動きは、どれくらい時間がかかりました?

A:百ポイント以上のティーチングで、20分くらいです。しかも、移動命令だけでなく溶接の開始/停止も簡単にセットできるので、それも込みです。

Q:シミュレーション上ではうまくいっても、現場でずれるのでは?

A:キャリブレーション(現場でのズレを補正する)機能があるので、現場での微調整はほとんど行っていません。やり方はペンダントで現場の3カ所だけをティーチングするだけです。

Q:エアカット(溶接以外の空間移動)のポイントはどのように作りました?

A:逃げの距離をあらかじめ決めておけば、RobotWorksが自動でエアカットを作ってくれます。

Q:干渉物を避けるのは、全自動か? 全自動だと思った避け方でないリスクがありますが。

A:半自動で避けるポイントに修正してくれます。つまり作業者が避けたい方法を選択すれば、複数のポイントを一括で修正してくれるのでとても楽ですし、リスクもないです。

Q:不要なポイント(直線上の途中のポイント)を判断して自動で削減したり、逆に1部のカーブだけピッチを短くできるか?

A:簡単に出来ます。

Q:バリ取りなどで使用するためにはツールの半径の距離を逃がす必要があるが、できるか?

A:半径を入力すれば、全体的に修正してくれます。

Q:私の会社では、ロボットメーカーのシミュレーションソフトだけでなく、高額なティーチングソフトも持っているが、操作が大変なので実際はほとんど使えていない。RobotWorksはどうなのか?

A:操作が簡単なので、月日がたつほど短時間で出来るようになります。さらに現場向きの機能もあるので、使用頻度が増しています。

Q:優れたソフトだとわかったが、スペックの高いPCが必要なのでは?

A:ソフト自体は非常に軽く、製品のCADデータが重い、などの他の問題がなければ、15万円くらいのノートPCで十分です。

進んできた道は間違いではなかった

最後に弊社の事で恐縮ですが、主催者であるわれわれ富士ロボットとして、とても有り難かったのは、RobotWorksのユーザー様が『富士ロボットさんへの恩返し』とばかりに、導入予定の企業様に富士ロボットの良さをいろいろとアピールしてくださった事です。しかも、会場を提供してくださった企業様の用途は溶接でしたが、切断、バリ取り、肉盛り、穴あけ、シーリング等で、RobotWorksを愛用されている他の企業様たちもアピールして下さいました。

富士ロボットは創業から現在まで、ソフトの販売やサポートというソフトのお世話だけでなく、現場の効率アップや省人化を実現するための知識の展開、仕事の斡旋など、お客様が喜ばれる『おせっかい(コンサルタント)』を行ってきました。ソフトの代金だけで、これらコンサルタントを行う事は、会社として非常に厳しい事でありますが、皆様の満面の笑顔を見た時に「間違いではなかった!」と涙をこらえるので大変でした。

今後もこの道を邁進していきたいと思います。

◆山下夏樹(やましたなつき)
富士ロボット株式会社(http://www.fuji-robot.com/)代表取締役。福井県のロボット導入促進や生産効率化を図る「ふくいロボットテクニカルセンター」顧問。1973年生まれ。サーボモータ6つを使って1からロボットを作成した経歴を持つ。多くの企業にて、自社のソフトで産業用ロボットのティーチング工数を1/10にするなどの生産効率UPや、コンサルタントでも現場の問題を解決してきた実績を持つ、産業用ロボットの導入のプロ。コンサルタントは「無償相談から」の窓口を設けている。

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