日本機械工業連合会 大宮英明 会長
皆様、新年明けましておめでとうございます。年頭に当たり、平素より日本機械工業連合会にお寄せ頂いております皆様方の温かいご支援とご協力に対し、改めて深く御礼申し上げます。本年は、いよいよ東京でオリンピック・パラリンピックが開催されますが、日本にとって大きな節目となる明るい年となることを祈念したいと思います。
また、本年は「子年(ねどし)」にあたり、再び新しい十二支のサイクルがスタートする年でもあります。「子年(ねどし)」はネズミ年に当たるわけですが、十干十二支(じっかんじゅうにし)の組み合わせでは、「庚子(かのえ・ね)」となります。「庚子(かのえ・ね)」は、相手を強める影響をもたらすという意味合いを持ちます。事業や環境、そして健康など、それぞれが相互に影響をもたらし合うなかで、予測できないものから活路を見いだせることもある年とされています。本年は変化の年、新たな生命が芽吹く年でもあるとのことで、全く新しいことにチャレンジするのに適した年とも言えるそうです。機械産業にとって、また皆様にとって本年が変化と進展の年となることを期待したいと思います。
機械工業生産は、概ね底堅い回復を続けているものの、景気全般に先行き不透明感があり、輸出を中心にやや弱含んでおります。国内では、省力化・自動化ニーズが設備投資を下支えし、交通・物流等の社会インフラ整備、五輪関連工事等の投資が拡大しております。他方、海外情勢不安に伴う調達コストが増加しており、また、人件費の上昇や人手不足も依然深刻であるなど、多くの課題を抱えております。
一方、海外では米国の景気が着実に回復しているものの、欧州ユーロ圏では景気の回復は弱く、中国は緩やかな減速が続いております。今後、国内では、消費税増税の影響、海外では、米中の貿易問題の行方や中国経済の動向、イラン等を巡る中東情勢の緊迫化、Brexitの動向等の下振れリスクを注視していく必要があります。
こうした経済環境下、日機連が昨年12月にとりまとめた2019年度の機械工業生産額は、全体では前年度比0.7%減の75兆9150億円と、残念ながら、2018年度の数字を越えることができない模様です。他方で、昨年の初めから日EU FTA、TPP11が発効し、また日米貿易協定、日米デジタル合意が今年1月から発効するなど明るい環境変化も生まれています。政府のイノベーション促進や5G普及のための政策措置も明るい材料です。変化の年にあたり、本年の機械産業の躍進を期待したいと思います。このような状況のなか、昨年からの日機連の活動についてご紹介いたします。
我が国製造業成長の基礎には、自由貿易と開かれたグローバル・バリューチェーンがありますが、昨今、米中対立や日韓関係、英国のEU離脱など、企業経営に直結する多くの難題が顕在化しています。グローバルなバリューチェーンの変化について、より一層アンテナを高くし、機械工業界としての対応、対策をとるべく、日機連は、昨年、製造業グローバル・バリューチェーン検討部会を立ち上げました。
この検討部会では、製造業を取り巻く環境変化に即した旬なテーマについて、適切な講師と意見交換を行い、機微な内容にも対応すべく、議論を開始しているところです。昨年は付加価値貿易、輸出管理の最新動向・運用の見直しなどを議論し、会員企業にとって事業運営に重要な情報の入手に努めているところであり、今後も活動を強化してまいります。
次に税制改正についての取組みについてご紹介いたします。税制に関しては、機械業界の要望内容の策定とその実現に向けた要望を中心に活動を行っております。令和2年度の税制改正については、設備投資の促進に向けた税制の創設・整備、連結納税制度改正等、事業環境の変化に対応した納税制度の見直し、新たな国際課税制度への対応、研究開発税制の拡充等の重点要望をとりまとめ、経済産業省、関係機関等に提出、要望いたしました。
また、製造業関連8団体連名にて「更なる成長のための基盤整備に向けた令和2年度税制改正共同要望」を策定し、要望項目の実現に向けて、共同で陳情活動を展開しました。その結果として、令和2年度の税制改正においては、連結納税制度の改正、イノベーション促進税制、消費税の納税手続期間延長等意味のある成果を実現することができました。次に表彰関連について紹介いたします。
日機連は2つの表彰事業を行っております。一つが「ロボット大賞」です。次回は9回目となり、今年の10月に表彰式を予定しています。もう一つが「優秀省エネ機器等表彰」です。我が国唯一の産業機械の省エネ表彰であり、我が国の省エネの推進に貢献して参りました。昨年は制度見直しのため募集を一時中断しておりましたが、本年度は新たにCO2の排出抑制という表彰分野を加えて、再スタートを切ります。是非両表彰事業に興味を持っていただき、応募いただければと存じます。
RRIの活動支援も日機連の重要な業務です。成長戦略の一環として政府が策定した「ロボット新戦略」に基づき、「ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)」が2015年に発足しましたが、その後順調に活動を展開しており、現在、会員数は約520となり、発足時の226から倍増しております。日機連は、インダストリアルIoT及びロボティクス関連の取組みが機械産業全体にとっても重要な課題であるとの認識のもとで、これまでRRIを全面的に協力支援してきました。
今年はRRIが発足して5年を迎える節目の年となっており、2020年度以降のRRIのアクションプランの検討、およびその実施体制等の準備も行っている最中であります。ロボット分野におきましては、経済産業省において「ロボットによる社会変革推進会議」が設立され、社会課題の解決につなげるために必要な今後の施策の方向性が示され、引き続きRRIが中心的な役割を担うことが明記されました。これを受けRRIとしては、ロボット分野では、施設管理、小売・飲食店、食品加工などの領域におけるロボット実証事業、また学校教育への産業界からの支援事業などに、新たに取り組んで行くことを検討しているところであります。特に、学校教育への支援事業については、昨年12月にRRIが事務局となることが決まりました。
IoT関連では、一昨年、IECに新設されたスマートマニュファクチャリング分野のシステム委員会における日本の幹事団体として、ドイツをはじめとした諸外国と連携して積極的に活動を行っているところです。また、ハノーヴァーメッセでは、昨年、一昨年とJapan Pavilion for Connected Industriesを出展し、昨年は新たに、5つの講演枠を確保し、標準化やセキュリティなど各テーマに関する講演や今後の情報共有や連携活動に向けたMoUを締結するなど精力的に活動しております。今年も同様に参加の予定です。
昨年12月には、東京で5回目の国際シンポジウムを開催し、ドイツ工学アカデミー(アカテック)のカガーマン会長をはじめとした内外の識者との連携を深めましたが、今年は10月開催の予定で準備を進めております。引き続き日機連はIoTの普及と我が国機械産業の競争力向上に向け、RRIを支援していく考えです。
日機連の最近の事業の一部を紹介いたしましたが、日機連は、引き続きRRIと一体となり、新しいデジタル社会の構築に日本の機械産業が貢献し、また更なる発展を実現できるよう努めて参る所存でございます。日機連、RRI共々、我が国機械産業発展のため、今後とも誠心誠意努力を続けて参りたく、本日ご参集の関係各位の引き続きの御指導、御鞭撻をお願い申し上げる次第でございます。最後になりましたが、皆様の一層のご健勝とご活躍を心から祈念申し上げ、年頭のご挨拶とさせていただきます。