FA市場 回復の兆し
「モノ売り」から「コト売り」へ
2019年のFA制御市場は厳しい状況が続き、流通各社にとっても我慢の一年となったが、ここに来て回復の兆しが見えてきている。
東京オリンピック・パラリンピック開催や継続する人手不足・自動化需要、自動運転や5Gのインフラ整備など好材料もそろい、FA流通各社の反転攻勢からの躍進に期待がかかる。
20年市況上向き
19年度は米中貿易摩擦や中国の景気減速、半導体投資抑制などを背景に、工作機械や半導体製造装置、産業用ロボット、食品製造機械などの出荷額が2桁減となるなど、厳しい1年が続いた。
一方で20年度以降の見通しは明るい。半導体製造装置は半導体メーカーの設備投資の開始を受けて回復基調に戻り、20年以降は拡大が予測されているほか、自動車はEV(電気自動車)シフトによる生産設備への投資増加、社会インフラ関連は5Gを中心とするスマートシティ化の整備、食品製造業界はHACCP衛生管理の義務化など、新時代に対応するための設備投資が待ち受けている。
人手不足対策としての自動化・IoT化の需要の熱気は続く見込みで、プラントやインフラ老朽化対策も好材料だ。
営業の果たす役割が変化
流通各社に求められる役割も変わり、近年力を入れているのが技術力を生かしたソリューションや新商材、新サービスの提供。コンポーネンツの単品販売・もの売りから、システム化・パッケージ化したソリューション提案へと舵を切っている。特にロボットとIoT関連は実績も上がっており、将来に向けた中核商材への成長に期待も高まる。また設計や組み立て等の生産支援を請け負うサービスも目立ち始めた。
ここ数年、製造業では「ITとOT(FA)の融合」「エッジ」「ロボットシステムインテグレーター」の重要性が認識され、そこに向けた製品・サービス、ビジネスが活況だ。これらに共通するのは、異なる2つの間をつなげる、埋める、緩衝する、潤滑する機能や役割。製造業の流通における商社の機能・役割も、メーカー・製品とユーザーの間、エッジに立つ存在としては同義。顧客(ユーザー)が抱える課題に対して、システムインテグレーターやEMS等の専業ビジネスとは一線を画す、「便利屋」的なポジションからソリューションを提案し実現できる機能が、今後のカギを握る。
こうした市場トレンドの中で、営業スタイルも試行錯誤が続いている。ソリューション営業は顧客との打ち合わせは必須となるが、そのための移動時間削減へデジタルツールを活用したWeb商談システムの利用も増えている。2者、3者が顔と資料を見ながら同時に話せるのが大きな利点だ。
一方、BtoBの商材は「顔と顔」を見ながらコミュニケーションをとる打ち合わせが重要とする商社も多い。背景には働きかた改革、社員の採用難なども一因としてある。この傾向は商社の基本である物流機能でも判断が分かれる。ここ数年、営業と配送を分離するところが多い。営業は売ることに専念し、訪問件数と密度を上げるためだ。しかし、納品が次の商談につながるとして、この姿勢を評価し維持するところもまだまだ残っている。価格競争を回避する効果につながっている面も否定できない。急速に利用が増えているネット販売(Eコマース)の動向とも絡み、各社の戦略が注目される。
海外市場開拓へ工夫を凝らす
好材料があるとは言え、中長期的に見れば国内市場の成熟化が予想されることから、その対応策として海外市場に活路を見いだそうとしている。距離的に近い中国やASEAN市場を視野に入れているが、米中問題、中国市場の変調、為替の安定、人手(人材)不足などを背景に、一時に比べると進出は大きくペースダウンしている。
海外の主要市場ではローカルの販売店網が整備されつつあることで、以前に比べ日本製品への供給がスムーズになっていることも背景にある。しかし、日本製FA機器へのニーズや競争力は依然高く、市場開拓の余地は大きい。まだ、海外での販売実績が少ない日本の中小メーカーの製品販売や、エンドユーザーの現地生産をサポートするためにグローバルな供給支援で活路を見いだすところ、ターゲット顧客を現地のローカル企業に変更など、戦略も変化し始めている。
「事業承継」が大きな課題に
戦後創業した企業が多いFA制御・電子部品商社では、経営が創業者から2代目、3代目に承継されつつあるところが多い。これまでGDPの2~3倍で成長してきたFA制御・電子部品市場であるが、今後成熟化が予想される中で事業を承継していくことは課題のひとつだ。
特に人材が不足しがちな中小商社にとってはスムーズに承継していけるかは大きな問題になる。雇用や顧客を守っていくためにもM&Aや経営と資本の分離といった再編が浮上してくることは確実だ。