トヨタL&Fは7日、スマート物流に向けた取り組みとして自動運転機能付きフォークリフト「Rinova AGF」とモバイルロボット「AiR」のデモと活用事例を公開した。さらに、労働力不足と自動化が進むなか、安全への取り組みについて説明した。
物流業界は労働力不足、物流量の増大、配送の小口化・スピード化など環境変化が激しく、業界への負担が増大しており、次世代物流ソリューションが求められている。具体的には、Eコマースによる荷量が増加する一方で、荷姿もパレットからより小さなユニットが急増。さらに物流センターが大型化し、オペレーションも自動化やIT活用をベースとしたものに変わっている。いま物流の質的変化が起きており、Society5・0が実現する2030年には、技術革新に寄って誰でもどこでも必要な時に、必要な物とサービスが受け取れる世界が来るとしている。そこに向けて同社も、スマート物流の実現に対してハード面とソフト面の両面から取り組みを強化している。
ハード面では、CASE(Connected、Autonomous、Shared/Service、Electric)に則った各種物流機器の知能化・システム化といった高度化を進めている。フォークリフトのEV化に加え、作業支援や搬送荷役アシスト、自動運転機能を搭載したロボット化や、機器の予知保全や効率運転等のサービス提供、IoTやAI等を活用した物流のシステム化やコネクテッド化など。またM&Aでグループ傘下に入ったVANDERLANDE、Bastianなどの物流機器やモバイルロボットと組み合わせたソリューション開発等も行っている。
安全に関しても、労働力不足の影響で不慣れなオペレータや1人作業、作業スピードアップによってフォークリフトの誤操作や急加速・急停止、急旋回、高速運転などが起こりやすくなるとして、トヨタ独自の安全システム「SAS(System of Active Safety)を開発し、転倒や荷崩れ防止機能を98年から製品に搭載している。さらに今回、安全運転を支援する走行制御機能の一部を標準搭載とし安全性を高めている。
またソフト面についても、全国40販売店で安全講習を実施するほか、4月から安心・安全の向上をサポートするキャンペーンを実施予定を予定している。
今回公開したRinova AGFは、有人運転と無人運転を切り替えられる自動運転機能付きフォークリフト。無人運転では床に貼られた磁気テープに沿って移動し、棚やトラックからのパレットの受け渡し、棚への収納・引き出しも可能。定型作業をまかせることができるようになっている。
すでに日本通運の新札幌物流センター内の食品共配センターでは複数台が採用され、入出荷の一部作業の無人化を実現している。ある日は、仕分けフロアにいるAGFが出荷用に仕分けされたパレットを昇降機に乗せ、入出荷フロアで待つAGFがそれを受け取って出荷用の仮置場に搬送。別の日には、トラックから入荷して有人フォークリフトで昇降機に乗せられたパレットに対し、仕分けフロアでAGFがそれを受け取って仕分け用の仮置場に搬送。夜間や早朝作業、忙しい時間の定型作業を担い、省人化を通じて人手不足と荷量増加を補助しているという。
また「AiR」は、自律走行と人追尾機能を備えたベースユニットの上に、ピッキングや清掃、搬送など用途に合わせたユニットを取り付けることでマルチに使えるモバイルロボット。デモは物流倉庫のピッキング作業を取り上げ、自動追尾機能による作業中の台車を動かす手間の省略と、自律走行機能による作業完了後の受け渡し場所への移動のムダを削減し、効率的な作業への貢献を紹介した。