電池未使用 現場改善で活用
カシオ計算機は、イメージング技術を活かしたBtoB、産業や社会向け新規事業に取り組んでいる。その先がけとして期待されているのが、光の3原色とカメラを使って測位や情報送受信ができる可視光通信技術「picalico(ピカリコ)」。
近年、IoTやビーコンを使って工場内のものの動きを把握したいという屋内測位ニーズがトレンドになるなか、電波とは違った特長を持つ技術として注目を集めている。
従来のRFIDやビーコンと異なる
最近、製造業や物流業では屋内測位技術の活用が注目を集め、ものの位置情報が搬送装置の稼働状況や滞留の早期解消、動線分析を通じた現場改善やレイアウト変更などに活用されはじめている。
屋内測位では、棚やパレット、フォークリフト、AGVなど現場で動き回るものにQRコードやRFID、ビーコンなどを取り付けてよく使われているが、QRコードやRFIDは読み取り地点のスポット単位での測位になり、常時監視は不可能。ビーコンは電波を使っているので電波干渉に弱く、金属や人に遮られただけでもノイズで測位のズレが発生してしまいがち。電波環境に左右される弱点がある。技術によって一長一短があるなかで、それらをうまく解消した技術がカシオ計算機の「ピカリコ」だ。
ピカリコは、LEDを送信機、カメラを受信機として使い、LEDのRGBの色の変化パターンをカメラが捉え、50m四方の1エリアで、誤差±60センチの高精度でリアルタイム測位が可能。カメラで撮影して常に位置を追い、電波を使っていないのでノイズによる悪影響もない。また光の変化パターンに情報を乗せれば、位置情報に加えてものの状態情報を送ることもできる。1台のカメラで最大100信号を受信でき、高精細カメラを使えば離れた距離からでも認識可能。応用可能性は多岐にわたる。
デジタルデータとリアル画像収集可
またカメラで状態を撮影しているという点も大きな特長。ピカリコではカメラは受信機として機能を果たし、軌跡や時間といった測位データを収集している。
その一方でカメラとして現実のものの動きをデータとして残している。リアルな画像とデータをひも付けた形で収集できており、より詳細な動線解析やトラブル発生時のドライブレコーダのようなアプリケーションなど、そのデータは貴重で、使い道は豊富にある。
測位×画像処理で新たな付加価値を
ピカリコはLEDとカメラ、アプリの基本システムで190万円~で提供中。ただし現段階ではあくまで技術基盤としての提供であり、実際にユーザーが使うためには見える化システムやBIツールと組み合わせる必要がある。今後は同社が得意とするイメージング、画像処理技術と組み合わせてソリューションとして展開したいとする。
事業開発センター イメージング企画推進部 飯塚宣男アドバイザリーエンジニアは「いま工場内の測位と画像ソリューションはそれぞれ陣取り合戦になっている。当社は測位と画像処理の両方を提供でき、ハードウェアの技術もある。それを生かした形で事業化を進めていきたい。また今はフォークリフトやAGVといったものの動きの管理だが、製造現場では多くの人が動いている。人の動きに対してのソリューションも今後開発していきたい」としている。