新型コロナウイルスの感染拡大が製造業に大きなダメージを与えている。
中国工場の稼働再開などの話題も聞こえてきており、サプライチェーンへの影響は少ないという意見も出てきている。それでも先行き不透明で、20年の国内FA業界は回復が期待されていたが、それも半年から1年後ろ倒しになるのではという見方も出てきている。
回復遅れの懸念も
東京商工リサーチが1万2348社にアンケートを行ったところ、「新型コロナウイルスの影響が出ている/今後出る可能性がある」とした企業は66.4%に達し、すでに出ている企業のうち4割が中国現地サプライヤーからの仕入れが困難になったという。
また中国市場の消費減速や経済の低迷を心配する声も強い。特にグローバル展開をし、世界的なサプライチェーンを構築している大企業ほど影響が色濃く出ている。すでに影響が出ている企業は大企業では31.5%だったのに対し、中小企業は20.6%ほどと大きな差が出ている。
製造業はとりわけ影響を強く受けており、影響の具体的な内容について最も多かったのが「現地への出張の中止、延期」39.3%で、「現地サプライヤーからの仕入が困難となった」が35.9%、「売上が減少」が32.7%と続く。「現地取引先の事業停止や倒産の発生」は4.9%の135社あったという。その他「M&Aの中止検討」や「展示会、イベントの中止・延期」などが挙がっている。
対応について、「対応を取っている/取る可能性がある」は23.9%。「取っていない」76.1%にとどまっている。企業規模別では大企業は39.5%が取る可能性があるとしたのに対し、中小企業は20.2%にとどまっている。
対応策については、「中国以外に所在する企業からの調達強化」が36.9%、「中国への新規進出計画の凍結・見直し」が7.5%、「中国拠点の撤退・縮小」は3.9%とサプライチェーンの再構築の動きも出てきている。
大規模展示会、各社イベントは中止・延期も
3月以降も製造業関連の展示会が数多く予定されているが、中止や延期、通常開催も対策強化など対応に追われている。東京ビッグサイト、幕張メッセで予定されている展示会も開催中止が出ている。開催予定するものも来場者への注意喚起と、マスク着用推奨、手洗い消毒液の設置、サーモグラフィによる体温計測と医療関係者の診察体制の強化など細心の注意を払っている。
一方で個社が行っているイベントやセミナー、見学会などは中止の動きが目立つ。一部ではウェビナーと呼ばれるWEBを使った形に変更するケースもあるが、全体としては中止・延期の方向。これにより営業戦略・活動の見直しも強いられている。
中小企業の事業支援に対する国の補助も
新型コロナウイルスによって影響を受ける事業者に対し、経済産業省では5000億円規模の支援策を予定している。
資金繰りに関しては、徹底的な資繰り援として、売上高が前年同期比で減少した事業者に対してセーフティネット保証4号・5号として別枠で最大2.8億円保証。今後の影響が見込まれる場合に関しても、セーフティネット貸付として中企業で最大7.2億円貸付などを用意。
サプライチェーンの毀損に対応するための設備投資や販路開拓に取り組む事業者に対しても、国内生産強化等の設備投資として補助上限1000万円、販路開拓支援として補助上限50万円、IT導入による効率化支援として補助額30~450万円の補助金制度を整備している。
また経営相談窓口の設置や下請け配慮要請、雇用調整助成金などの支援を行っていくとしている。