FAセンサの市場は、停滞していた半導体製造装置関連に動きが出始めたことで先行きへの期待感が高まっている一方、コロナウイルス肺炎問題の景気に与える影響判断が難しいことから様子見の状況になりつつある。
特に影響力の大きい中国市場の動向が大きなポイントで、自動車、工作機械、ロボットといったFAセンサの主力市場は大きく左右される。一方、5GやIoTに絡む通信市場の先行きは依然期待が高く、堅調拡大が見込まれている。
こうした新しい市場が生まれていることもあり、FAセンサの開発は意欲的に進められており、今後の期待市場としての位置づけは依然大きい。
安定続く3品業界 伸長するAGV向け
日本電気制御機器工業会(NECA)の2018年度(18年4月~19年3月)の検出用スイッチ出荷額は1178億円で、17年度比96.9%と微減となった。19年度は1150億円(18年度比97.6%)と2年連続の減少を見込んでいる。19年4月~12月までの9カ月の出荷額766億円となっており、このペースの出荷から計算すると19年度は1030億円前後(18年度比88%)ぐらいと、2桁の減少になりそうだ。
減少の大きな要因は、半導体製造装置、工作機械、ロボットといった主力市場の停滞が大きい。いずれも19年の生産は前年割れしている。期待の自動車も海外市場、特にアジア市場が不振な状況が継続し、車載向け、製造装置向けの両方に大きな影響を与えている。コロナウイルスの問題で自動車の生産はさらに深刻な状況と言われており、しばらく厳しい状況が続きそうだ。
こうした中でFAセンサの市場として期待が高いのはロボット関連市場だ。人手不足やロボットでしかできない作業も増えており投資意欲は高い。ロボットの領域ともいえる物流関連業界への期待も大きい。AGV(無人搬送車)をはじめ、仕分け作業も含めた自律的な搬送システム実現に向けた取り組みが進んでいる。
AGVでは、搬送軌道をフレキシブル化した自動走行でのインテリジェントセンサの技術開発が著しい。2Dや3Dのレーザーセンサ技術の応用しながら、搬送、追跡や障害物を検知しながら実現している。今後はAI技術を活用して搬送履歴に基づいた最適な搬送経路策定や、搬送と作業を同時処理できるような開発も志向されている。
もうひとつの期待分野が、食品・医薬品・化粧品の3品業界である。大きな伸びはないものの、安定した市場を形成している。製造ラインにおける各種認識・識別、不良品検知などの用途で、重要性を増しており、「安全」「安心」といったキーワードに即している。製品トレーサビリティ用途に加え、このところは人手不足などに対応して、ロボットを活用に向けた投資も積極的に行われていることから、今後もさらに期待市場として注目されそうだ。
使いやすさ向上へ さらなる技術革新
FAセンサの中でも市場の大きい光電センサは、LEDや半導体レーザを光源にした非接触センサとして、主にワーク(製品・部品)の有無確認のために用いられている。
検出方式は透過型、回帰反射型、拡散反射型などがあり、年々性能が向上している。特に光ファイバー式は、先端のファイバー部のラインアップが多彩で、取り付けや用途に合わせて選定がしやすくニーズが高く、数百種もラインアップをそろえているところもあり、あらゆる用途に用いられる。
光電センサ技術を発展させた透過型デジタルセンサとしては変位センサも注目されている。帯状レーザ光で測定幅10ミリを繰り返し精度1mの精度で測定ができる。サイズも小型のため、取り付けスペースの制約も少ない。
FAセンサがロボット向けでの用途開拓が進むなかで、測域(レンジ)センサのアプリケーションも拡大している。測域センサは、周囲の障害物などの状況を把握する。レーザ光線で対象物までの距離を測定し、270度前後の視野に対して自分を中心に平面地図のような測域情報を得ることができる。誤動作が許されないことから検出スキャン時に発するパルスの計測方法に各社独自のアルゴリズム採用をして周囲環境に干渉されないようになっている。
こうした特性により、AGV(無人搬送車)や移動ロボットなどに搭載することで、安全防護を確保しながら高精度な誘導用位置測定を可能にする。光や埃、汚れなどの悪環境下でも高信頼の検出ができる。しかも、検出フィールドの設定が自在にできることで、用途ごとのパターンに応じた稼働も可能になっている。
長距離で高感度の検出が可能なため、最近では立体駐車場や、トンネル前での車両の高さ検出など、屋外や交通分野、さらに安全分野を中心に用途が拡大している。この領域では、画像データと組み合わせて精度を向上させる取り組みもなされており、活用の場が広がっている。
近接センサは、耐環境性に優れて、高温・多湿、水中などで使用できるという、他のセンサにはない大きな特徴がある。直径が3ミリの超小型タイプや、オールメタルタイプなどラインアップも増え、金属体、非金属体の混流ラインでも使用できる。検出距離は、数ミリ~数十ミリが一般的だが、最近は長距離タイプも発売されている。
このほど近接センサで、1台に2つの出力機能を内蔵した新製品が発売された。従来の一般的な近接センサは出力が1つで、検出領域内でON/OFF出力する動作点が固定あったが、1台に2つの出力機能を内蔵することでセンサ2台分の機能を内蔵。検出領域内への検出体の移動に合わせて動作点を2点設定可能で、それぞれの出力の動作ロジック(ON/OFF)を組み合わせることで、1台で最大4エリアの検出ができる。例えば工作機械の自動工具交換では、工具の有無、取り付け位置のずれなど、正常・異常の検出を2台の近接センサで行っていたが、これを1台で対応できることになり、設置作業を効率化できる。
IO-Linkで付加価値が向上
さらに、一般的な近接センサの検出距離は1~10ミリぐらいと短く、センサが安定して検出できるための位置設定の調整作業に非常に手間がかかり、作業者によって設置のバラつきが出るという課題もあった。この作業をパソコンの専用設定ツールを使用することで、最適な動作点をオートチューニングで簡単に設定できるようにした。近接センサ本体に搭載の動作表示灯を確認しなくても、パソコンから動作状態や動作点をモニタリングすることができ、より安定した検出が可能になる。
安全対策用センサもマットスイッチ、ライトカーテンなど、接触式、非接触式など多様で用途に応じ使い分けされている。中でもセーフティレーザスキャナは、ソフトウエアで危険領域を限定でき、ロボットが使用されている工程や、無人搬送車などにも搭載されている。セーフティライトカーテンも、設計や取り付け・調整などの手間を省く改良がされ使いやすさが増している。
光を用いた同期をすることで、省配線を実現、複数のセンサを使用しても干渉しない工夫がされているタイプもある。従来は誤作動による原因追求に工数がかかっていたが、LED表示や通信により、状況を知らせる機能も各社強化しており、導入後の工数も削減できる。
レベルセンサは、液面や粉体面が設定レベルになった時に信号を出力するセンサ。一般的なタンクや容器内の内容物のレベルを検出する用途が多いが、河川や湖沼の水位・水量測定、下水や排水の液面測定などにも利用されている。
最近では、災害防止の観点から設備を強化する取り組みが行われており、無線通信機能を持たせて遠隔地のデータを伝送できるタイプや、光ファイバーを用いた通信を採用し、強いノイズ環境でも使用できる製品も現れている。
さらに、自動車や二輪車などのエンジン周りや、外食産業の厨房にも採用されており、新規市場への浸透が進んでいる。レベルセンサに温度センサを内蔵し一体化することで、スペースの削減とトータルコストの低減も図られている。
超音波センサは、比較的超距離・広範囲の検出ができるのが特徴であるが、近距離での特性も向上している。また、超音波センサを複数同時使用時の音波のクロストーク対策として、自動同期機能を内蔵した製品も発売され、信頼性も高まっている。
FAセンサの通信方法としていま注目されているのがIO-Linkだ。ⅠO-Linkは拡張性に優れた通信で、いままで利用できなかったセンサ内部の情報をユーザーがアクセスでき、しかもリアルタイムでクラウドベースでも利用できることで、最適制御、予知保全などへ大きく利用領域が広がる。
センサのON-OFF情報だけでなく、状態管理、緊急判断といった場面でのAIと連携した活用も進む。IO-Link対応のセンサは各社から対応製品が発売されている。今後もセンサがものづくりを大きく左右するキーパーツとしての重要性を増しそうだ。
FAセンサの高い信頼性と高速センシング技術はFA領域を超えた活用が期待されている。自動車の自動運転やドローンはFAセンサの要素技術が凝縮されており、さらにIoT化のつながる分野でも下支えしており、市場は無限に拡大するだろう。