ジマテック 大楽恒一郎 社長
ロボットの普及にともなって汎用のロボットハンド、エンドエフェクタが増えているが、ワークはそんな単純形状のものだけではない。相変わらず把持が難しく、専用設計が必要な場合も多々ある。
ジマテックはエンドエフェクタ専業メーカーだが、一方で案件に応じてハンドを設計して作り上げるハンド専門のシステムインテグレータ(SI)として世界で活躍中。日本でもハンドのお悩み相談窓口としてSIやユーザーのハンド設計を支援している。
解決策提案を最重点に
同社は1985年にエアグリッパーメーカーとして創業。イタリア北部のブレシアに拠点を構える。グリッパーや吸着パッドなどエンドエフェクタに特化した専業メーカーで、自社製品のほか、世界的な空圧機器メーカーへOEM提供もしている。射出成形機の取り出し用チャックでは業界トップシェアとなるなど、隠れた実力派メーカーだ。
同社がユニークなのが、自社で製品を製造販売しながら、同業他社の製品を躊躇なく使って最適なハンドを作り上げるハンド専門のシステムインテグレータとしての活動を並行して行っていること。世界にある現地法人はシステムインテグレータ色が強く、本社公認でロボットハンドのお悩み相談窓口としての活動を積極的に行っている。
大楽恒一郎代表取締役社長は「ハンドのシステムインテグレータになろうというのが会社の方向性。ユーザーや市場の課題に対しての解決策を提案していくことに重きを置いている。だから同業であってもパートナー企業として協業しているところは多い」という。
日本法人は16番目の支社として2016年から事業を始めているが、やはりSIとしての活動がメイン。ユーザーはもちろん、SIから相談を受けることも多く、彼らに代わって図面を作成してハンドを作り、テストして納品することもしばしば。SIからの信頼は厚い。
メーカーとSI両立させる戦略
メーカーとSIを両立する戦略は一見すると不可思議なようだが、実は根底ではつながっている。世界各国でSIとしてユーザーと直接つながり、案件をこなすことでニーズやノウハウを蓄積。そうして集まったユーザーや市場の声は本社の開発部門にフィードバックされ、次の新製品や製品改良に生かされている。
大楽氏は「現地法人が最も身近で厳しいユーザーとなり、本社の開発部門に意見を言う。アプリケーションに入り込み、製品をもっと高めるためにお互いに切磋琢磨している」という。ハンドやエンドエフェクタはロボットシステムの重要パーツであり、それ故にさまざまな課題がある。日本法人もロボットハンド専門のシステムインテグレータとして、それらに対応していきたいという。
大楽氏は「例えば自動車業界では早くからロボットシステムが普及しており、各工場で独自のハンドを設計して使っているケースがよくある。ある自動車メーカーではそれに目をつけ、標準化して他工場へも広げていきたいが、設備が古すぎてハンドの図面がなくて困っていたという。それに対し同社が現物から図面を起こし、横展開しやすいようにしたところ、とても喜ばれた。ハンドのシステムインテグレータとして当社なりのアプローチ方法があり、それを生かしてこれからも現場を支援していく」と話している。