設備管理-中国人が苦手な予防保全①
持ち込む技術レベルを決める
今回は、設備や作業に関するノウハウをどこまで中国工場に持ち込むのか、どこまで中国人スタッフに習得させるのかと言う問題について考えます。
1.設備や作業に関するノウハウをどこまで中国工場に持ち込むのか
中国で生産をするときに考えるべき問題として、機械のオペレーションノウハウに限らず技術や生産技術のノウハウをどのようにして中国人作業者やオペレーターに落とし込むかというのがあります。これらのノウハウは、日本で10年20年生産して培ったものです。簡単に短期間で落とし込めるものではないでしょう。
ということは、どのように中国人に落とし込むかと言う前に、技術ノウハウをどのレベルまで中国に持っていくかというのを会社として決める必要があるのです。
おおよそ次の3つの考え方となります。
①日本工場でいる職人や匠と言われる人たちと同じレベルまで中国人スタッフを育成する
②作業者のスキルに頼らない生産方法にする(作業者は最低限のスキルがあれば可)
③右記2つの中間で、ある程度のスキルを養成するのと難易度の高いスキルをカバーする生産方法を組み合わせた方法とする
どれがよいとか悪いとかの問題でなく、方針を決めたら今度はそれを実現させるためにどのように進めるかを考えることが大事なのです。
①を選択したのなら、どのようにして日本の職人や匠のレベルに中国工場、中国人スタッフを教育し育成するかを考え、実践していくことになります。これは会社の技術力・生産技術力が問われていると言えます。
②を選択した場合は、設備や機械にノウハウを組み込むことになります。これも実は言うほど簡単なものではありません。
こうしたスキルや技術の落とし込みをただ漠然と行って思うようにいかず、品質を落としている日系工場は少なくありません。
一方、中国企業はこのノウハウを持っていないので、設備を入れても日系工場と同じレベルのものが作れないという状態です。それを解消するために定年退職した日本人技術者を招き入れているのです。
事例:上記②を選択した日系中国工場
中国に工場を出して15年以上がたつある日系工場では、次のような理由から生産工程を作業者のスキルに頼らない方法に変更することを決めました。
・作業者の募集が思うようにいかない
・作業者の流動性がありスキルが定着しない
・工法を変えることで品質不良を減らす
・工法を変えることで生産リードタイムを短縮してフレキシブルな生産体制にする(多品種少量生産への対応を可能にし、受注の機会損失を極力減らしたい)
この工場の従来の工法は、各工程に設備があるものの作業の補助的な役割と言う側面が強かった。つまり、作業に力を必要としないようにしている一方で、作業の良し悪しは、作業者のスキルに頼っていた。
日本人総経理は、大胆にも発想を変え、設備を自動機化することで、作業に作業者のスキルが入る余地を消したのです。全工程の設備をその意図の元に自動化したのです。
ただし、自動機化することで作業自体にノウハウは不要になるのですが、今度は設備管理に高度化したノウハウが必要になりました。つまり、自動機化するということは、順調に生産されているときはいいですが、何か不具合があると大量に不良品を作ることにつながってしまいます。また、故障などがあってもすぐに対応できなれければ、生産計画が大幅に狂うことになります。
この工場の総経理は、設備管理を高度化する方を選択したのです。
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◆根本 隆吉
KPIマネジメント代表・チーフコンサルタント。電機系メーカーにて技術部門、資材部門を経て香港・中国に駐在。現地においては、購入部材の品質管理責任者として購入部材仕入先品質指導および品質改善指導。延べ100社に及ぶ仕入先工場の品質改善指導に奔走。著書に「こうすれば失敗しない!中国工場の品質改善〈虎の巻〉」(日刊工業新聞社)など。