在宅勤務の若手技術者の進捗管理の方法
計画と実績 活字で報告を
加速する技術者の在宅勤務
現在の社会情勢を踏まえ、在宅勤務の技術者が増えているようです。現場で設備を稼働させる技術者などを除き、研究開発関係の技術者の出社頻度は週に1、2日という状況の企業が増えていると感じています。
出社をするのは実験や試験等、実際に手を動かす必要がある場合が多いようです。
マネジメントにとって最重要なのは若手技術者の業務に関する進捗管理
このような状況にあってマネジメントとして必要なのは、「技術者の業務進捗がどのような状態にあるか把握する」ということにあります。
上記の進捗把握の上、今後に向けてどのようなことを進めるか指示を出す、というマネジメントとしての次のアクションにつながっていきます。
適宜の報告ができる中堅以上の技術者ではなく、特に経験の浅い若手技術者に対しては、マネジメントから進捗管理を容易にするための情報を積極的に出してもらうよう、仕向ける必要があります。
若手技術者の業務進捗管理とその留意点
Zoom、Slack、Webex等のオンライン会議システムがあるといっても、本当の面と向かっての打ち合わせと違い、得られる情報、提供できる情報に制限が出てしまうのが現状だと思います。
このような状況であっても若手技術者から実績と状況の報告による情報入手による進捗管理と、推進してほしい業務内容に関する指示内容をきちんと伝えるということは、現在のような制限ある状況が長丁場になることが想定される昨今、必須の取り組みといえます。
ではどのように取り組めば若手技術者の進捗管理ができるようになるのでしょうか。具体的なアプローチとしては、「計画と実績を1:1となっている活字で報告させる」ということです。
例えば毎週の進捗報告会があるとします。その会においては、「前週の計画に対し、今週の実績は何かという計画と実績を活字で報告させる」ということが具体的なアクションとなります。
詳細のポイントは以下の通りです。
1.「情報の伝達は口頭ではなく必ず活字で」
若手技術者に対する指示は活字が基本です。若手技術者自身が業務経験が浅いため、業務背景を理解しにくく、それ故情報の伝達精度が低下しやすい、ということがその動機になります。活字であれば後から何度でも見直すことができるため、指示事項の復習に役立ちます。また、活字表現をすればマネジメントから見て誤解があるか否か、といった確認を行うことも可能です。
2.「活字化はマネジメントの見ている目の前で行わせる」
一番最初の指示事項はマネジメントが活字で伝えるとして、その後は指示を受けた若手技術者が指示事項を活字で表現し、内容をマネジメントがその場で確認することを徹底してください。Web会議システムであっても、デスクトップシェアを行えばリアルタイムで記載内容を共有できます。記載内容がマネジメントの理解や指示と齟齬がないかを確認の上、問題なければその内容を踏まえ、実務を推進させます。
3.「前週の計画と今週の実績が1:1になっているか確認」
若手技術者によくあることとして、計画と実績が合致していない、というものがあります。計画でやるといっていたことと、実際に出てくるアウトプットが違うのです。技術報告書の作成を通じた論理的思考力の鍛錬が不足していると、「目的と結論がずれる」ということが起こります。これと全く同じことが進捗報告でも起こるのです。計画と実績のずれは若手技術者に起こりやすいところですので、マネジメントとしてよく確認する必要があります。
上記は週報をベースに説明しましたが、月次報告なども同様です。一つひとつの情報伝達に誤解がないよう、丁寧にフォローするという基本姿勢が、着実な技術業務推進の基礎となるのです。
いかがでしたでしょうか。普段顔を合わせながら話をするという環境を基本としたマネジメントをしていると、今回のようなテレワークになった際に業務が滞る可能性もあります。
情報伝達精度という観点で環境変動に対する耐性が最も強いのはやはり活字です。そしてこの活字をベースにした技術者のマネジメント体制を構築するには、結局のところその基本となる技術報告書をきちんと書けるスキルを技術者が有する、というのが前提条件になるのです。
技術者育成の中で最も時間がかかる技術報告書を基本とした論理的思考力の向上。これに対して積極的に取り組んだか、または後回しにしてきたかという差が、現在のような状況下で底力を発揮できるか否かの分かれ道になっていると考えます。
取り組みの開始に遅いということはないので、まずは計画と実績という今回ご紹介したところからでもいいので、一刻も早く取り組みを始めていただければと思います。
◆吉田州一郎(よしだしゅういちろう)
FRP Consultant 株式会社 代表取締役社長、福井大学非常勤講師。FRP(繊維強化プラスチック)を用いた製品の技術的課題解決、該関連業界への参入を検討、ならびに該業界での事業拡大を検討する企業をサポートする技術コンサルティング企業代表。現在も国内外の研究開発最前線で先導、指示するなど、評論家ではない実践力を重視。複数の海外ジャーナルにFull paperを掲載させた高い専門性に裏付けられた技術サポートには定評がある。